1,総合診療医の本領発揮 〜「親切なやぶ医者」をめざして!?〜
2005年,若手家庭医部会(現・日本プライマリ・ケア連合学会若手医師部会)が正式に発足し,家庭医をめざす若手がどんどん増えていた頃,若手のなかではある合い言葉がささやかれていました.それは「親切なやぶ医者にはならないようにしよう」というものでした.
家庭医は患者さんの年齢・性別・健康問題にかかわらず対応をします.ときにはよく話も聞き,やさしい言葉をかけることもあるでしょう.しかし,せっかく優しく親切に対応していても,診断もできず治療もできない,担当した患者さんはどんどん病状が悪化していくということであれば,それは「親切なやぶ医者」だから,そうはならないように勉強していこう,という意味でした.
その後,2009年には学会認定の家庭医療専門医も誕生し,2017年からスタートする新しい専門医制度でも「総合診療医」として基本領域に加わることになりました.
そのような時代のなか,あえて訴えたいと思うのです.「親切なやぶ医者をめざそう」と.
「やぶ医者」の語源にはいくつかの説がありまして… (中略)
今回の特集は「普通のかぜ」です.かぜのような症状で受診される重大疾患はもちろん見逃したくありません.しかしながら,総合診療医がかぜをかぜとしてしっかり診ることは他科ご専門の先生方の負担を減らし,日頃の恩返しともなると思うのです.かぜの患者さんが受診されたら,「親切なやぶ医者」として遠慮なく本領発揮といきましょう.
なお,今回執筆していただいた先生方は決して「やぶ医者」とは呼ばれておられないことを名誉のために付け加えておきます.
2.本特集のねらい・構成
春夏秋冬朝昼晩.毎日毎日,咳,鼻水,咽頭痛などを主訴に患者さんが来院されます.そして,その多くが本当に「普通のかぜ」なのです.米国の統計では,成人では年に2~4回,学童では年に6~10回もかぜに罹患するそうです.
かぜは主にウイルスに起因する疾患で,特に治療をせずともこじらせなければ数日で自然軽快することが知られています.そのような「かぜ」で来られた患者さんは,「かぜじゃないかもしれない.肺炎かも」などのように心配で来院されていることもありますが,「この症状を早く取り除いてもらいたい」と願っていることが少なくありません.鎮咳薬,去痰薬,解熱鎮痛薬,抗アレルギー薬,うがい薬やトローチといった殺菌消毒薬など,さまざまな薬が試みられ,効いているのか効いてないのかわからないうちに治癒してしまうこともあるでしょう.「かぜ」はやはり総合診療医がうまくマネジメントしたい疾患の1つです. (中略)
診療現場で日々「かぜ」に出会っておられる先生方の経験をふんだんにおりまぜていただきました.どうぞご期待ください.
その対症療法、効いていますか?かぜ症状への対応を気になるエビデンスに基づいて解説.「子ども・妊婦さんの場合は?」「オススメできない治療法って?」「予防は?」など,本当に知りたかったかぜ診療がわかります!
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