特集にあたって
特集にあたって
峯 眞人
(医療法人自然堂 峯小児科)
近年日本と諸外国とのワクチンギャップはかなり解消されてきました.それに伴って日本における予防接種環境も大きく変化してきています.
新ワクチン,改良型ワクチン,同一効能・効果の異なるワクチン,いったん製造されなくなったワクチンの再製造が行われるなど,変化が激しくなっています.ここ5〜6年の間に,毎年のように新しい複数のワクチンが導入されています.
また,予防接種法を含めた予防接種制度もくり返し変更されており,定期接種ワクチン,任意接種ワクチン,公費負担のある任意接種ワクチンなど,国だけでなく地方自治体における制度変更などを含めると,毎年のように決まりごとへの変更や追加などが行われています.
接種手技についても同時接種が一般化する一方,諸外国と異なり日本でスタンダードとされている皮下注射のみが適応のワクチンや皮下・筋肉注射双方が可能なワクチン,さらには筋肉注射のみが適応のワクチンなどが登場し,接種手技一つにおいても接種担当者を惑わす状況が多々みられます.
このような急激な環境の変化のなか,残念ながら予防接種の間違いが毎年数多く報告されています.同じ間違いでも,ほぼ健康被害を起こす可能性がない間違いと健康被害が起こっても不思議ではない重大な間違いがあります.しかし,間違いの内容が重大であるか・ないかの問題ではなく,予防接種という安全に行われなければならない医療行為において間違いが起こっているということが,予防接種だけでなく医療に対する信頼感をも落とす結果になってしまうことを忘れてはいけません.
医療現場におけるリスク管理対策は,日々の医療を行ううえで基本中の基本です.ましてや予防医療の現場においては最重要課題といってもよいかと思います.
本特集では,毎日のように日本中の多くの医療現場でくり返し行われているおびただしい数の予防接種において,いろいろな場面で間違いを防ぐための細かな注意点などについてとりあげました.私が代表を務める「彩の国予防接種推進協議会」で役員として安全で安心で効果のある予防接種を推進してくれているメンバーに,接種現場の問題を最重要視する立場から解説してもらっています.執筆者は開業小児科医,病院小児科医,埼玉県予防接種センター責任者をはじめ,妊娠期からのワクチン教育にかかわる助産師,当協議会ホームページの作成・管理を担当するシステムエンジニアなどです.
ぜひ内容を確認していただき,健康を守るために必要な予防接種を安心して受けていただける環境づくりの参考にしていただきたいと思います.
著者プロフィール
峯 眞人 Mahito Mine
医療法人自然堂 峯小児科
専門:小児科
日本小児科医会,日本小児科学会などで予防接種や感染症対策担当の仕事を務める一方,発達障害児対応,虐待対応,心のケア,小児在宅医療,学校安全対策,子どものメディア対策など,子どもたちを守り育てる医療なら何でもやることをモットーに日々過ごしています.