Gノート:もしかしてパーキンソン病!?〜地域で見つけ支える神経難病
Gノート 2019年8月号 Vol.6 No.5

もしかしてパーキンソン病!?

地域で見つけ支える神経難病

  • 加茂 力,大橋博樹/編
  • 2019年08月01日発行
  • B5判
  • 150ページ
  • ISBN 978-4-7581-2339-6
  • 2,750(本体2,500円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

大橋博樹
(多摩ファミリークリニック)

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ある日の昼休みのことです.当院の近所にある,登戸内科・脳神経クリニックの加茂先生から電話がありました.

加茂先生「うちに定期的に通院していたAさんなんだけど,急に通院しなくなってどうしたのかと思っていたら,今度大橋先生のクリニックで訪問診療することになったと聞いたんだよね,どうして訪問診療になったのかな?」

私「もともとパーキンソン病で先生のところに通院していた方ですよね,あの方でしたら3カ月前に自宅で転倒して,右大腿骨頸部骨折になって〇〇病院の整形外科に運ばれました.手術したのですが,リハビリはパーキンソン病のためか上手く進まなくて,結局寝たきりのままになり,自宅退院だけど訪問診療が妥当ということで,当院に紹介になりました.昨日,初めて訪問したのですが,かなりADLは落ちているみたいですね,主介護者の奥さんも落ち込んでました」

加茂先生「そりゃ,パーキンソン病が進行しているだけだよ! 処方調整とリハビリでかなり回復は見込めるよ」

私「えっ,そうなんですか? 私はもうベッド上の生活は避けられないのでは,と判断していました」

パーキンソン病としてはすでにヤール5でしたが,加茂先生からは,処方の増量や内服回数の調整,そしてパーキンソン病に特化した訪問リハビリテーション導入の提案がありました.その後も継続的に加茂先生と相談しながら,積極的なパーキンソン病への介入を行ったところ,この患者さんは,現在自宅内歩行可能な状態まで回復できました.もし,加茂先生に相談せず,このまま私だけがAさんの診療を行っていたら,まだ彼は寝たきりのままだったことでしょう.

また,今回の骨折はたまたまだったのか? もしかして,パーキンソン病の進行が招いた骨折だとしたら,整形外科入院時にパーキンソン病の処方調整などを脳神経内科医が介入していれば…など,まだまだこの地域のパーキンソン病診療には問題が多いのではないかと感じました(詳しくは,ぜひ特集座談会記事をお読みください)

本特集では,総合診療医の苦手意識の高いパーキンソン病について,その基本から地域の治癒力を高める多職種での取り組み方法まで網羅した実践的な内容で構成しました.実際に困難に直面し,数年の歳月をかけて「地域の治癒力」の向上に取り組んできた川崎市多摩区の実例も取り入れ,あえて失敗の事例も示しながら解説しています.

今回の特集では脳神経内科専門医の加茂力先生・白石眞先生をはじめ,多くのご協力をいただきました.本当にありがとうございます.この特集を読んで,皆さんの地域でも,地域の治癒力を高める取り組みが始まれば嬉しいです.

著者プロフィール

大橋博樹 Hiroki Ohashi
多摩ファミリークリニック
常勤医4名すべてが総合診療医のクリニックの院長です.Gノートでは子どもの診療から高齢者のケアまで,幅広い内容の特集を編集する機会をいただきました.その度に私の総合診療力もupしています! まだまだ成長し続ける総合診療医でありたいです.

〈共同編集〉
加茂 力 Tsutomu Kamo
医療法人社団神天会 登戸内科・脳神経クリニック 院長
プロフィールはp.695参照.

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