Gノート:チーム適々斎塾!ベテラン達が教える外来診療の知恵袋
Gノート 2019年10月号 Vol.6 No.7

チーム適々斎塾!ベテラン達が教える外来診療の知恵袋

  • 板金 広,中西重清/編
  • 2019年10月01日発行
  • B5判
  • 156ページ
  • ISBN 978-4-7581-2341-9
  • 2,750(本体2,500円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

診断エラーに興味をもち,そして経験を共有しよう

板金 広,中西重清
(いたがねファミリークリニック/21世紀 適々斎塾,中西内科/21世紀 適々斎塾 塾長)

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生活習慣病の治療を中心とした予防医療,比較的軽症の急性感染症治療,ワクチンやがん検診などのヘルスメンテナンス,在宅診療など,プライマリ・ケア医の外来診療の仕事は多岐にわたり,多忙をきわめる外来診療のなかで適切な外来マネジメントをする難しさを日々感じておられると思います.

プライマリ・ケア外来診療では,生命にかかわるような重症患者は稀です.しかしながら,時には,疾患自体は重篤で適切な救急対応が必要な患者が,歩いてあなたの外来にやってくるのです.しかも,この患者は他の軽症の外来患者に紛れて受診し,重症感はなく,正しい診断を想起できるような所見が揃っていないことが多いのです.

また,ありふれた疾患の診断時にも,思いがけない診断エラーをしてしまった経験をおもちの先生もたくさんおられるでしょう.診断エラーにはアンカリングや早期閉鎖などの多様な認知バイアスがかかわることが指摘されており,これらが複数重なるときに診断エラーが起こりやすいとされています.診断エラーは知識の不足より,誤った推論が原因であることが多く,その疾患をよく理解していることと,実際の現場で正しく診断できることは別であると認識すべきでしょう.


診断にいたる思考プロセスに,直観的思考と分析的思考があることは広く知られるようになりました.臨床医はこれらを相補的,協働的に作動させて診断しています.診察時間がきわめて短時間である外来診察では,時間のかかる分析的思考で診断することはほとんどなく,多くの臨床医は自分のなかに蓄積された“illness script”(病気のシナリオ)と瞬時に照らし合わせ直観的診断を行っています.

直観的診断は迅速かつ効率的ですが,認知バイアスの影響を受けやすく,診断エラーをしやすいことが知られています.ベテラン医は直観的診断の素晴らしさと怖さを数多く経験してきた存在です.きっと独自の外来診療のピットフォール回避術をもっているはずです.

そこでこの特集ではベテラン医の先生方がピットフォール回避術を披露しました.まず,宮田靖志先生に,プライマリ・ケア医が直観的診断を多用している現状,有用性,そのピットフォールや「プライマリ・ケア診療は難しい」という事実を紹介していただきました.続いて,編者らが展開している【21世紀 適々斎塾】の講師や塾生に,症例を通じておのおのの外来診療ピットフォール回避術を教えていただきました.各稿には,ベテラン医ならではの戦術,日常臨床で活用できるパールやキーワードが満載です.最後に,診断エラー学の若手リーダーの矢吹 拓先生に日常臨床で診断エラーを回避するための戦術をまとめていただきました.

珍しい疾患の診断ではなく,よくある疾患の正しい診断をすることは【21世紀 適々斎塾】の目標の1つです.この目標の達成には,診断エラー学の理解が不可欠であることを塾生はよく理解しており,この特集のきっかけとなった診断エラーセミナーは大盛況でした(写真).今後も診断エラーに特化した継続性のある研究会の企画を予定しています.

この雑誌を読まれた先生方から,ご自身の経験やピットフォール回避術を教えていただいて,お互いに共有できる日を楽しみにしています.

著者プロフィール

板金 広 Hiroshi Itagane
いたがねファミリークリニック/21世紀 適々斎塾
プロフィールはp.1114参照

〈共同編集〉
中西重清 Shigekiyo Nakanishi
中西内科/21世紀 適々斎塾 塾長
この本を手にとっていただき,ありがとうございます.開業医のための学びをスローガンに,4年前に始めた適々斎塾です.学習成果を共有するために,初めて出版いたします.

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