遺伝子ドライブはメンデルの法則を無視して生物集団内に特定の遺伝子型を急速に浸透させる,超メンデル遺伝とよばれる手法である.標的遺伝子のヘテロ変異が,CRISPRによる個体内での相同染色体間組換えによりホモ変異に自己変換される.この結果,次世代は100%変異個体となり,同様に次々世代も100%変異個体となり,変異が指数関数的に集団内に浸透する.不妊や発生不全,雌雄選別などの特定形質を標的集団内に急速に伝播させ,媒介生物種を駆逐することで,感染症の撲滅が試みられている(例:蚊の撲滅によるマラリア制圧).標的生物種を越えて変異が生態系に流出・伝播する可能性や,CRISPR標的配列部位での突然変異発生による耐性獲得,テロリストや国家による軍事転用が危惧されている.その巨大なインパクトとリスクからバイオの核兵器ともよばれる.(実験医学2021年5月号より)
ゲノム編集“プライム”タイムへようこそ実験医学2021年5月号解説は発行当時の掲載内容に基づくものです
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