小噺その10:科研費に採択されるための最良の方法

 この本には科研費獲得のための申請書の作成方法を長々と書いてきたが,この本はあくまでも申請書作成のための参考書でしかないことを忘れずにいてほしい.そして,これまでの経験から,科研費に採択されるための最良の方法は,「書き上げた申請書を誰かに見せて添削してもらうこと」だと思う.見てもらう人が採択経験豊富な人ならなおよい.そういった人に申請書を見てもらって何度も何度も直すのが一番よい方法だ.適当な経験豊富な人がいないときには,親しい友人でも結構,隣のラボの先輩でもよい.とにかく他の人に見てもらって意見を聞いて,書き直す.その繰り返しが最も有効な方法だと思う.

 さらに,科研費に採択されるためには申請への心構えが重要だと強調しておきたい.「心構え」とは大げさなと思うかもしれない.しかし,科研費によく採択されている研究者ほど,しっかりしたポリシーをもって応募している.科研費を申請するときに,なぜ科研費申請を出すのか,何のためにこの研究を行うのか,なぜ今自分がやっている研究が重要なのか,などを考えてみるのは非常に重要だ.科研費を絶対に取るという強いモチベーションがあってこそ,初めていい申請書ができるのだ.

 ここで私が考える科研費申請のための心構えをあげておこう.

①科研費は応募する人の研究に対する夢を語るものである.張り切って大きな夢を語ろう!

とにかく申請書を出すこと.まず出さないことには,なにもはじまらない.科研費を確実に獲得できる方法はない.逆に,科研費に絶対採択されない方法がある.申請しないことだ.だから,いつか(まぐれでも)採択されるときまで,必ず出し続けよう.採択されなくても次の年にもまた出す.だめでも次の次の年にも出す.出し続けていると,いつか必ず採択される.「科研費は通ることにこそ意義がある.金額はいくらでもいい」と私はラボメンバーによく言う.「科研費は研究者のプライドを懸けた戦いだ」とも言う.ともかく科研費を獲得して晴れて一人前の研究者になれる.だから,何度不採択になろうが強い意志をもって,科研費に応募し続けることが大切だ.

③そして科研費に採択されたら,今度は積極的に他の人の申請書を手伝ってあげよう.そうするとその人は,次の自分の申請のときに申請書をチェックして意見を述べてくれる頼もしい仲間になる.

 こういった心構えをもって,わかりやすく読みやすい申請書を作成し,業績(論文発表)をあげることで,必ず科研費に採択されることと思う.皆さんの喜びの報告を期待している.

科研費小噺 〜十人十色の体験記〜:目次

児島 将康

(久留米大学客員教授,ジーラント株式会社代表取締役)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の科研費公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演し,理系・文系を問わず申請書の添削指導を行っている.令和6年4月より研究者を支援するジーラント株式会社(https://g-rant.org/)を立ち上げ,活動している.

科研費に関する書籍・ウェビナーや制度の変更点など,科研費申請に役立つ情報を発信しております.
研究生活の役に立つ書籍なども少しご紹介しています.