ひつじの書棚
羊土社編集部
このコーナーについて
人はなぜ本を読むのでしょうか? 物語の世界で冒険をしたいから,困ったときに解決法を見つけるため,疲れた時に元気をもらいたくて….皆さまもそんな色々な想いで本を手に取られているのではないでしょうか.
私たち羊土社の編集部員もまた,本に対して様々な夢や想いを寄せています.そこで本コーナーでは,私たちが自身で制作した本や,一読者として感動した本について語りたいと思います.
第3回 これからも「エコ」の話をしよう、研究室で『時間と研究費(さいふ)にやさしいエコ実験』のご案内
エコ.やさしさを感じるいい響きです.『広辞苑 第七版』(岩波書店,2018年)をひいてみると,ありました.
エコ【eco】(エコロジーの略)環境に配慮すること.「生態」「環境」「環境保護」を意味する接頭辞.
今回ご紹介する“エコ×実験=エコ実験”は,研究費や時間に配慮し,研究者にやさしさをもたらす節約術です.
本書は『実験医学』誌で連載された「教えて!エコ実験」(2013年9月号〜2014年4月号)「教えて!エコ実験RETURNS」(2015年4月号〜2016年1月号)に皆さまから大きな反響をよせていただいたことを受け,書籍化したものです.連載時はいわばパッチワークのように散りばめられていた内容を大胆に切り貼りし,単行本では
- エコ1(1章) ケチらずエコする考え方を会得しよう
- エコ2(2章) なんでも自作しよう
- エコ3(3章) 当たり前を見直そう
- エコ4(4章) MOTTAINAIを極めよう
- エコ5(5章) インターネットを活用しよう
と使い勝手よく整理し,収載しています.
単行本の制作開始時,この楽しそうな目次を見て興奮,チームを組んだ編集部員と“エコをテーマに楽しくつくろう!”と盛り上がったすえ,なぜか四コマまんがを入れることに.ご編集の村田茂穂先生におそるおそるご提案すると,にこやかに快諾してくださいました.勢いで“「エコ研究者」検定(略して「エコ検」)”もつくってしまいましたが,まったく苦言を呈されることなく,こちらもご承諾くださいました.編集部の暴走をお許しくださった先生に,この場を借りて御礼申し上げます.用紙は本文も表紙も再生紙,インクは環境に配慮した植物油インキを使用,エコにこだわりました(印刷所の方によると,再生紙はパンフレットなどによく使用されるもので,単行本の本文用紙として使うことはあまりないのだとか.少し誇らしげな気持ちになりました).
気になるエコ実験の内容ですが,
- 「キムタオルの値段は牛丼並である」という衝撃的な例を引き合いに適切な投資を心がけることに気付かされ,
- 抗体や酵素,ELISAなど思いもよらないものが自分たちでもつくれることに驚き,
- 慣習化しているプロトコールを見直せば時間を短縮できることに目からウロコが落ち,
- 一次抗体やプラスチックチューブが再利用できることを知ってこれまで捨ててきたものに罪悪感を抱き,
- インターネットのデータベースやウェブツールを活用することで膨大な情報を効率よく入手できることに科学の進展を思い…
などなど,研究に役立つ工夫がたくさん詰まっています.紹介されているアイデアはすべてベテラン研究者が現場で生み出してきたものですので,どうぞ参考になさってください.また,一つひとつのアイデアはもちろんですが,本書の根底にある“当たり前と思っていたものを見直し,自分で調べて考えることでよりよいものへと工夫していこう”という姿勢は,ずっと活きていくに違いありません.本書を片手に,これからも「エコ」の話をしていきませんか.
(羊土社編集部 N)
ひつじの書棚 目次
- 第1回 10年後のラボ、自分は何をしているか知りたい方へ― 『あなたのラボにAI(人工知能)×ロボットがやってくる』のご案内 (2018/02/23公開)
- 第2回 研究の世界を広げる 書評『バッタを倒しにアフリカへ』 (2018/03/23公開)
- 第3回 これからも「エコ」の話をしよう、研究室で『時間と研究費(さいふ)にやさしいエコ実験』のご案内 (2018/04/20公開)