劇的に診断力が上がる!
診断推論×ロジックツリー
第6回
発熱編 ❸
苦手克服!膠原病による不明熱
2022年11月25日 公開
はじめに
膠原病は感染症や悪性腫瘍などと比較して症例を経験する機会が少ないことや症状が複雑で多岐にわたることなどから,どこか苦手意識を抱えている方が多いのではないでしょうか.今回は発熱編の締めくくりとして膠原病を効率よく診断していくためのロジックツリーの作り方について学びましょう.
発熱と関節痛のある患者さんの紹介状が届いた
(医局にて)
研修医:専攻医先生,こんにちは~!……って,それ何の本持ってるんですか?
専攻医:ふふ,私の好きな小説家の新刊が昨日発売されたのよ.この前からずっと読むのを楽しみにしていたの.
研修医:へえ~,専攻医先生は読書家ですねえ.いつも医学書もたくさん読んでるし.僕なんて活字を見ていたら数分で眠くなりますよ!
専攻医:ああそう……,よく国家試験の勉強ができたわね.
指導医:おや,2人ともいたね!総合内科外来を今日これから受診する予定の患者さんの紹介状が,今,近医から届いたんだけれど,君たちに診察をお願いしてもいいかな?
研修医&専攻医:わかりました!
【紹介状】
××病院 総合内科外来担当医先生御机下
平素より大変お世話になっております.貴院にご紹介させていただきますのは20代女性の発熱が続く方です.1か月ほど前に発熱と軽度の咽頭痛があり当院受診されたためペニシリン系抗菌薬の内服を処方しましたが,その後に薬疹と思われる発疹が出現したためウイルス感染の可能性を考え抗菌薬を中止して経過をみておりました.
しかし以後も発熱が続いており節々の痛みもあり歩行ができず,総合病院での精査が望ましいと思われご紹介させていただきました.ご高診ご高配のほどよろしくお願いいたします.
〇〇医院 △△□□
研修医:前回(第5回)は高齢の方でしたが今回は若年の不明熱の患者さんですね.
専攻医:既往歴や内服薬の記載がありませんが,紹介状に記載されている情報からは伝染性単核球症に抗菌薬を処方したことで薬疹が出現しており,発熱自体は原因となったウイルス感染が遷延しているのかなといった印象です.年齢や頻度からはEBウイルスの可能性が高そうなのでパートナーの有無や性交渉歴,咽頭所見やリンパ節腫脹の有無などは確認しておきたいですね.
指導医:うん,ペニシリン系の抗菌薬で発疹が出現したという情報からは伝染性単核球症の可能性は十分考えられるね.ただ,歩行できないほどの節々の痛みという記述はどうもひっかかる.せっかく患者さんが受診するまでに時間があるから,まずは紹介状の情報を参考にロジックツリーを作って鑑別疾患を考えてみようか.
研修医:いよっ,待ってました!今回もロジシンの出番ですね!
専攻医:いきなりテンション高いわね.で,なによ,“ロジシン”って.
研修医:いやだなあ,もう.“ロジ”ックツリー“診”断推論の略に決まっているじゃないですか.略して“ロジ診”.何か響き的にイケてる感じがしませんか?
専攻医:なんでもかんでも略せばいいってもんじゃないわよ.
研修医:よーし!燃えてきたぞー!
専攻医:…全然聞いていないわね.