分子から紐解く生物多様性への讃歌.地球誕生からヒトが生まれるまで,生物の試行錯誤が面白くってたまらない!豊富なイラストと親しみやすい解説で,生き物の歴史が楽しく身に付く!生物が大好きな人にお勧めです.
本書の元になった実験医学onlineのWEB連載「生物の多様性と進化の驚異」
第1回 生物界全体をグループに分ける(2010年6月22日更新)より抜粋
全生物の系統を調べる際には,一部の生物ではなく,すべての生物がもっている共通の遺伝子を対象にする必要があります.タンパク質合成という機能はすべての生き物に必要で,それにかかわる遺伝子はすべての生き物がもっています.こういう遺伝子は生物間で塩基配列が保存されているはずです.保存されているけれども生物管で少しずつ構造に差がある.
塩基配列のデータから系統樹を描くには,実はいくつもの仮定と技術が必要なのですが,細部はとばして1つの結論をいえば,1986年にカール・ウーズによって示された3超界(3ドメイン)分類があります(図2A).すべての生物がもっているタンパク質合成系の共通要素の1つである,リボソームRNA遺伝子の解析から得られたものです.これはゲノムプロジェクトが開始する前のことですが,リボソームRNA遺伝子の解析については以前から進んでいたために比較が可能になりました.この成果が,リボソーム遺伝子だけでなく,他の多くの遺伝子についても解析を進めて,系統関係をより詳細に見極めようとする機運を一気に加速しました.
・図2:『理系総合のための生命科学 第2版』(東京大学生命化学教科書編集委員会/編、羊土社、東京、2007)図1-4を参考に制作
この図では,各枝の先端に現在生きている生物がいます.生物同士の近縁関係は,1つの生物の枝から分岐点までたどって別の生物の枝に移動して先端までたどって,全部の長さを合計したものによって示されます.そういう意味で,定量的に描かれたはじめての系統樹というわけです.実は,図2Aに示したのは最初の報告ではなく,さらに研究が進んでからの結果をまとめたものですが,3超界に分けるという基本は最初の報告と違いはありません.
第一に重要なことと思うのは,地球上のすべての生物が遺伝子DNAという共通の物質を継承していて,生物間で一定の関係をもって定量的な違いが存在することを示したことです.すべての生き物が共通の先祖から進化し多様化したものである,という仮定が具体的に支持あるいは保証されたことは重要です.これを進化の証明といってよいかどうかは,証明という言葉をどうとらえるかによって,異論があるかもしれませんが,従来に例をみないほどの強力な,地球上生命の一元性と,生物進化に対する証拠の提示であることは疑いないでしょう.
古細菌は,地球上で最初に誕生したバクテリアの性質を残しているものと考えられます.深海だけでなく,温泉とか,地下深くとか,無酸素である上に,とんでもなく超高温,超高圧,高塩濃度,高い酸性など,極限的環境で生息するものが多いのも特徴です.嫌気的細菌に属しますが,酸素が要らないのではなく,酸素があると有害である(嫌気的)という意味では,原始の地球環境にいた生き物としてもっともらしいものです.細菌のグループのなかでもマイナー中のマイナーに思われていた古細菌は生物界全体のなかで,本来の生き物ではない「その他」的な扱いを受けてきたわけですが,真核生物と対等に,3超界の一角を占めていることは,思いもよらぬ結論でした.
古細菌は核をもたない原核生物で,細胞壁をもち,顕微鏡でなければ見えないなど,通常のバクテリア(細菌)と似ているようではあります.しかし,古細菌は細菌の仲間であると考えてはいけない,古細菌というのは誤解を招く誤った命名である,といわれます.ちょっと乱暴な言い方をすれば,真正細菌と古細菌は非常に異なる生き物で,両者の違いは大腸菌(真正細菌)とヒト(真核生物)の違いほど大きい,ともいえるわけです.3超界に分けられるとはそういうことを意味します.
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