僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。〜論文をどう読んでどう考えるか
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僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。

論文をどう読んでどう考えるか

  • 後藤匡啓/著,長谷川耕平/監
  • 2021年04月20日発行
  • A5判
  • 310ページ
  • ISBN 978-4-7581-2373-0
  • 3,960(本体3,600円+税)
  • 在庫:あり
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論文を読むというとついつい研究デザインや生物統計学の話に走りがちですが、一番大事なのは臨床経験と研究分野の背景知識です。臨床研究は文字通り臨床をベースにした研究ですから、研究分野の臨床知識が十分にあることが前提です。レジデントの間はそのベースとなる知識が不足しているため、どの論文を見ても「何が大事なのかわからない」となってしまうわけですね(僕も詳しくない領域の研究論文を読めと言われても困ります)。この土台となる基本的な知識がないと、有名な医学誌に掲載されたというだけで論文の結果に自分の診療が振り回される、なんてことも起こりえます。…

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目次

監修のことば【長谷川耕平】

はじめに

第1章 論文を読む前に知っておきたいこと

01 論文を1本全部読む必要はあるの?
02 なぜ論文が読めないのか
03 そもそも臨床研究ってなに?
04 論文が世の中に出てくるまで
05 論文が掲載される医学誌を知る
06 どの医学誌から論文を選べばいいの?
07 論文の質はどうやって担保されているのか
08 医学誌には原著論文以外も載っている
09 論文を探してみよう!:Googleは便利
10 論文を探してみよう!:PubMedの使い方
11 論文を手に入れるにはどうしたらいいの?
12 どの論文を読めばいいの?

第2章 論文の読み方

01 論文を読む前に心に留めてほしいこと(重要!)
02 論文の読み方に決まりはあるのか

タイトルページを読む

03 論文のタイトルを読む
04 アブストラクトを読む
05 論文の著者・共著者:誰が論文を書いたか?

イントロダクションを読む

06 イントロダクションの構造
07 研究目的を把握する
08 研究目的の具体例を知る

メソッドを読む:基本編

● メソッドの構成と研究デザイン

09 メソッドに何が書いてあるかを知る
10 メソッドを読むのは難しくて当たり前
11 研究目的と研究デザイン:study design and setting
12 ランダム化比較試験:介入研究での研究デザイン

● 観察研究で用いられるデータ

13 データベースを知ることが重要
14 観察研究で用いられるデータの種類と特徴
15 Claimsデータ
16 データベースと研究デザイン

● 研究対象集団とアウトカム

17 研究対象集団の母集団を意識する
18 研究対象集団を明確にする:組み入れ基準と疾患の定義
19 何を測定・評価したかを確認する
20 アウトカムを確認する

メソッドを読む:発展編

● 内的妥当性と一般化可能性

21 内的妥当性と一般化可能性を意識する
22 内的妥当性の検討:①選択バイアス
23 内的妥当性の検討:②情報バイアス
24 内的妥当性の検討:③交絡…を説明する前に
25 内的妥当性の検討:④交絡
26 一般化可能性の検討:研究結果を自分の臨床現場に用いてよいのか

● 統計解析の基本

27 なぜ統計解析が必要なのか
28 記述統計:研究対象集団を表す
29 2群の要約統計量に差はあるのか?
30 推測統計を知る:アウトカムとの関連性を推測する
31 推測統計の基本:①回帰分析
32 推測統計の基本:②生存分析
33 推測統計における点推定値と95%信頼区間

● 研究目的と統計解析

34 研究目的に応じた統計解析の考え方
35 〈関連と因果推論〉リスク因子の研究は2種類ある
36 〈関連と因果推論〉回帰分析と交絡の調整
37 〈関連と因果推論〉傾向スコアと交絡の調整
38 〈関連と因果推論〉ランダム化比較試験と関連性の指標

● 研究目的と統計解析(診断と予測)

39 診断・予測モデルの研究の考え方
40 〈診断・予測モデルの研究〉予測モデルの構築と検証
41 〈診断・予測モデルの研究〉具体的な予測モデルの構築
42 〈診断・予測モデルの研究〉性能の評価
43 〈診断・予測モデルの研究〉discrimination とcalibration

● サブグループ解析・感度解析

44 サブグループ解析・感度解析で評価すること

結果を読む

45 結果の全体の流れ
46 研究対象集団はどんな集団なのか:Study flowとTable 1
47 関連性の指標を知る:オッズ比などの考え方
48 記述研究の結果を読む
49 リスク因子の研究の結果を読む
50 治療・介入の研究の結果を読む:①研究対象集団
51 治療・介入の研究の結果を読む:②治療・介入の効果
52 診断・予測の研究の結果を読む

考察を読む

53 考察の全体の流れ
54 研究限界:Limitations
55 結論を読む
56 引用文献と利益相反・資金提供
57 主要誌以外の論文を読む

第3章 論文を読み終えたら

01 論文の批判的吟味と解釈
02 抄読会に向けて情報をまとめる
03 文献を管理する
04 知識をアップデートしていくために

参考文献

おわりに

索引

書評・感想
  • 率直な感想を申し上げます。

     

    まず

    この本は、「ヤバい」です。

    正直悔しいです。

    その根拠として、自分が苦労して、苦労して、独学で学んできたこと、メンターと頑張ってきたことが、誰にでもわかるレベルで簡単に要点だけ書かれています。

     

    おそろしいCuration技術です。ツイッターなどSNSで端的に勘所をつかんだ表現を駆使できる先生が書かれたのだろうと思います。

     

    また、臨床研究でメインとなるバイアスの問題や、多変量解析の考え方なども、網羅されており素晴らしい本であると思います。

     

    欠点は、この内容のすごさを理解するためには、論文を書いたことがある読者、それで躓いたことがある読者に絞られるかもしれないという点くらいですが、それこそこの本の狙いだと思います。

     

    巷にある類書とは異なるものでした。

     

    以上、率直な忖度なき感想です。

     

    和足孝之(島根大学 総合診療センター)

  • 書籍の対象である「臨床研究論文を読む初心者」向けに「適切」に論文の読み方を説明していると思いました。

    生物統計学や疫学の本では細かく説明するところをばっさり削りエッセンスを残しています。

    私は、研究デザインやデータ解析のコンサルをしていますが、そこで伝えてきたことの8割ぐらいはこの本でカバーできます!!

    佐藤俊太朗(長崎大学病院臨床研究センター)

  • 幅広い読者層に満足を与えうる良著

     

    一般に、一冊の本が幅広い層の読者を満足させることは難しい。なぜなら、読者によってもともと持っている背景知識やリテラシーには大きな差があるからだ。本のテーマによっては、初級・中級・上級といった具合に読者を層別化し、各層向けに分冊化したうえで、記述内容にバリエーションをつけることもある。初級の読者が中級者以上向けの本を読んでも満足は得られない。また、中級以上の読者が初級者向けの本を読んでも、別の意味で満足は得られない。

    その点、本書『僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。』は、幅広い層の読者に満足を与えられる可能性がある、という意味で画期的である。本書は主に研修医・専攻医向けとのことであるものの、300ページを超える大書のなかに、指導医クラスの医師にも読んでいただきたい内容を多く含んでいる。

    本書の斬新な工夫の一つとして、項目ごとに難易度を★1つから★5つまでに区分している点が挙げられる。初級者はまず★1つの項目のみを拾い読みしてもよいだろう。その後、★3つぐらいまで頑張って読み進めれば、かなりの知識が身につくと思われる。★5つの項目は、おそらく指導医クラスでも十分に理解が及んではいないであろう、レベルの高い内容を含んでいる。

    本書の最も出色の部分は、「メソッドを読む:発展編」ではなかろうか。ほとんどの項目が★3つ以上であるこの単元は、臨床研究論文を読みこなすうえで役に立つ研究デザインや統計解析の知識が盛り込まれている。

    著者は本書の随所で、読者のレベルに合わせて「とりあえずこの程度知っておけばよい」「これぐらいまで論文を理解できればよい」といった、いわば力の入れ加減を示している。忙しい日常臨床をこなしながら時間制約のなかで論文を読まなければならない臨床家にとっては、こういった「割り切り」やある意味での「妥協」も必要ということであろう。

    評者が本書のなかで一番心に響いたのは、275ページにある「論文を読むのが苦手でも、研究限界の内容を確認しておいた方がよい」というフレーズである。実際、論文の読者の多くは研究限界(Limitation)を読み飛ばし、結論(Conclusion)だけを読んで論文の内容をわかったつもりでいる。初級者も中級者以上も、肝に銘じておくべきメッセージである。

    康永秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学 教授)

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  • 【本書名】僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。〜論文をどう読んでどう考えるか
  • 【出版社名】羊土社

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