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【スマホで読める実験医学】「どのように問うか」を学ばせる―核内受容体研究を切り拓いた,メンターとしての決意
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生体の恒常性はさまざまなホルモンの働きにより維持されており,ホルモンは細胞に存在する受容体に結合することでその作用を発揮します.なかでも,糖質コルチコイドなどの脂溶性ホルモンは,細胞膜を通り抜けて細胞内,さらには核内に入ることができるため,脂溶性ホルモン受容体は細胞内や核内に存在すると考えられていましたが,その受容体は長らく未知のままでした.
Ronald M. Evans(ロナルド・エバンス)博士は,1985年に世界ではじめて糖質コルチコイドの受容体をクローニングし,「核内受容体」としての構造を明らかにしました(図1)1).以降,甲状腺ホルモン受容体2)やレチノイン酸受容体3)なども核内受容体であることを見出し,核内受容体スーパーファミリーの概念を提唱しました.さらに,核内受容体が,リガンドの結合を引き金として標的遺伝子の発現を転写レベルで制御する機構を解明しました(図2).核内受容体スーパーファミリーは,代謝,炎症,生殖,細胞の分化・増殖など多様な生理作用を司ることから多くの疾患とも関連しています(図3).これまでに開発された核内受容体をターゲットとした医薬品の数は,FDAに承認された医薬品の15%前後を占めており,博士の研究成果は創薬にも多大な貢献を果たしています.
これらの功績が称えられ,博士は2024年の「医学、薬学」分野でのJapan Prize(日本国際賞)を受賞されました.受賞業績は「核内ホルモン受容体ファミリーの発見と医薬品開発への応用」です.実験医学では,今回の受賞者発表記者会見にあわせ,博士に研究をはじめる経緯や,他の研究グループとの競争にまつわるエピソード,メンターとして心がけていることなどをお伺いしました.皆さまの研究のヒントになりましたら幸いです.
※本インタビューは2024年1月23日,他のメディアと合同のグループインタビューとして行いました.
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