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【スマホで読める実験医学】神経科学の未来に光をもたらしたオプトジェネティクスの誕生秘話 2023年Japan Prize 受賞者 Gero Miesenböck博士,Karl A. Deisseroth博士に訊く
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行動や思考といった,われわれのあらゆるふるまいは,脳のニューロンにより生み出されています.ニューロンの活動とふるまいの関連を調べるために,従来は細い電極を用いた電気刺激や薬剤投与といった方法が用いられてきました.しかし,電気刺激は特定のニューロンのみの活動を制御するのが難しいこと,薬剤投与は目的のニューロンに作用するまでに時間がかかること,といった問題点がありました.これら2つの問題を解決したのが,チャネルロドプシンとよばれる光感受性チャネルを用いて,光刺激によるニューロンの活動制御を実現したオプトジェネティクスの技術(図1)です.本技術の確立にはGero Miesenböck(ゲロ・ミーゼンベック)博士とKarl A. Deisseroth(カール・ダイセロス)博士が大きく貢献しました.
Miesenböck博士は,2002年に光感受性タンパク質「ロドプシン」を含む3つの外来性タンパク質をラットの海馬のニューロンに発現させることで,光によるニューロンの自在な活動制御を実現し,オプトジェネティクスの基盤となるコンセプトを確立しました(図2).Deisseroth博士は,緑藻類の走光性にかかわる「チャネルロドプシン」に着目することでMiesenböck博士のシステムをさらに洗練させ,単一の遺伝子の導入で光による神経活動の制御が可能であることを示しました.博士らはこれらのシステムを用いて,ショウジョウバエの逃避行動1),求愛行動を司る神経回路2)や,マウスの社会性行動3)を担う神経回路を同定しました.現在,オプトジェネティクスは,動物のふるまいと神経回路の因果関係を解明できる革命的な手法として,神経科学などの幅広い研究で用いられています.
これらの功績が称えられ,両博士は2023年の「生命科学」分野でのJapan Prize(日本国際賞)を受賞されました.受賞業績は「遺伝子操作可能な光感受性膜タンパク質を用いた神経回路の機能を解明する技術の開発」です.実験医学では,今回の受賞者発表記者会見にあわせ,両博士にアイデアをひらめいた経緯や,今後の研究の展望,若手研究者へのメッセージなどをお伺いしました.皆さまの研究のヒントになりましたら幸いです.
※本インタビューは2023年1月24日,他のメディアと合同のグループインタビューとして行いました.
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