クローズアップ実験法

2023年9月号 Vol.41 No.14 詳細ページ
RNAseqChef:遺伝子発現変動を自動的に解析するウェブツール
衛藤 貫,中尾光善
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RNAseqChef:
遺伝子発現変動を自動的に
解析するウェブツール
衛藤 貫,中尾光善

何ができるようになった?
簡便に再現性のある RNA シークエンス(RNA-seq)解析が可能となった.プログラミング知識は
不要で,直感的に操作できる.

必要な機器・試薬・テクニックは?
パソコンとインターネット環境さえあれば,パソコンのスペックを問わずに使用可能である.デー
タ駆動型研究のためのウェブツールとして無償で使用できる.

はじめに

可能となる.

原著論文で使用された RNA-seq のデータセットは
世界中の研究者が再利用できるように Gene Expression Omnibus(GEO)1)に集約されている.現在,数

原理

万以上のデータセットが再解析可能な状態にあり,一

DESeq2 3)をはじめとする計 85 種類の R package を

般的に利用される組織・細胞株のデータも豊富である

組合わせることで,RNA-seq 解析に求められる機能を

ため,分子生物学の研究を進めるうえで有益な情報が

網羅できるように設計した.また,Shiny とよばれる

得られる可能性を秘めている.しかしながら,発現変

R package を利用してアプリケーションを実装するこ

動遺伝子(D E G)解析は煩雑で時間も要するために,

とで,解析したいデータをアップロードすると,自動

短時間で再現性のあるデータ解析をするためには情報

的にサーバー上で解析・可視化されるように設計した.

科学の専門知識が求められる.そこでわれわれは,プ

さらに,複数のデータセットを組合わせた統合解析が

ログラミング知識不要で再現性のあるデータ解析が可

できるようにアプリデザインを工夫した.具体的には,

能となるウェブツールの構築を目的に,RNAseqChef

2)

RNAseqChef では,解析結果としてアウトプットされ

を新たに開発した.RNAseqChef は,RNA-seq により

る表データはそのまま再アップロード・再解析が可能

得られたカウントデータを自動的に解析・可視化する

な形式となっている(図 1).これにより,従来のウェ

ツールであり,単一のデータセットの解析のみならず,

ブツールでは対応できない複雑な解析が可能となる.

複数のデータセットの統合解析が直感的な操作のみで
RNAseqChef: a web tool for automated and systematic analysis of differentially expressed genes
Kan Etoh/Mitsuyoshi Nakao:Department of Medical Cell Biology, Institute of Molecular Embryology and Genetics, Kumamoto University(熊本大学発生医学研究所細胞医学分野)

実験医学 Vol. 41 No. 14(9 月号)2023

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