クローズアップ実験法

2023年12月号 Vol.41 No.19 詳細ページ
TSAによる高感度多重免疫染色法
城戸完介,野島 聡,森井英一
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TSAによる
高感度多重免疫染色法
城戸完介,野島 聡,森井英一

何ができるようになった?
チラミドシグナル増幅法(tyramide signal amplification:TSA)を採用したタンパク質検出シ
ステムの登場により,自家蛍光が問題となるパラフィン切片上で複数のタンパク質シグナルを明瞭に
描出できる蛍光多重免疫組織化学(免疫染色)が施行可能となった.

必要な機器・試薬・テクニックは?
通常の免疫組織化学の場合と同じく FFPE 切片に適した一次抗体が必要である .蛍光色素には
Akoya Biosciences 社の Opal という製品を用いる.Opal Multiplex Detection Kits には一連の
試薬が含まれている.設備・備品としては一般的な免疫組織化学が行える環境と共焦点レーザー顕微
鏡などの蛍光顕微鏡が必要である.

はじめに

行うが ,これには酵素標識法と蛍光標識法の 2 種類の

免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)は生

方法がある 2).酵素標識法では標識物質として主に

体より得られた組織上のタンパク質発現を評価するた

3,3 ′
-diaminobenzidine(DAB)が使用されており,反

1)

めの手法である .タンパク質検出の gold standard で

応局所で D A B が酸化されて生じる茶色の酸化物を光

ある western blotting との最も大きな違いはタンパク

学顕微鏡下に認識することが可能である.この DAB を

質の局在情報が失われないということであり,組織上

用いた免疫組織化学(chromogenic IHC:cIHC)は非

のどの部位で,どの細胞が,細胞内のどこにそのタン

常に有用で,病理組織診断の場でも汎用されているが,

パク質を発現しているのかが一目瞭然となる.IHC は

その発色が明瞭であるがゆえに他の発色基質との組み

よく確立された手法であり,基礎研究のみならず臨床

合わせによる多重染色には限界があり,同一切片上で

の病理組織診断を行ううえでもきわめて重要なツール

複数のタンパク質の発現を詳細に評価したい場合,特

となっており,今や IHC による患者組織のタンパク質

に同一の細胞の同一部位(核と核 ,細胞質と細胞質 ,

発現の評価が組織診断名の確定や治療方針の決定に欠

など)における発現を評価したい場合には不向きであ

かせないものとなっている.IHC においては一次抗体,

る 3).一方 ,蛍光標識法では,検出に蛍光顕微鏡が必

二次抗体による反応の後に標識物質を用いて可視化を

要となるものの,異なる波長の蛍光物質を組み合わせ

Highly-sensitive fluorescent multiplex immunohistochemistry with tyramide signal amplification
Kansuke Kido/Satoshi Nojima/Eiichi Morii:Department of Pathology, Osaka University Graduate School of Medicine(大
阪大学大学院医学系研究科病態病理学講座・病理診断科)
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実験医学 Vol. 41 No. 19(12 月号)2023
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