クローズアップ実験法

2024年1月号 Vol.42 No.1 詳細ページ
簡単! 3つの工夫で超時短ウエスタンブロッティング
東 小百合,片桐康博
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簡単! 3つの工夫で超時短
ウエスタンブロッティング
東 小百合,片桐康博

何ができるようになった?
タンパク質解析の手法として広く用いられているウエスタンブロッティング(WB)法は,日常的
に行うには多くの時間を要し,抗体の品質に依存したさらなる実験時間の増加にも多くの人が悩まさ
れている.抗原抗体反応のメカニズムに着目して実験工程が見直された本 WB 法は,検出感度を犠牲
にすることなく時短化に成功した.

必要な機器・試薬・テクニックは?
本 WB 法は,回転式の撹拌装置,抗原抗体反応促進剤,市販のサラダスピナーの用意は必要である
一方,専用の高価な機器や特別なテクニックを必要としない.サラダスピナーはご家庭で,他 2 つは
研究室ですでにもっているという方々も多いのではないだろうか.

はじめに

時間短縮の 3 つのポイント

医学・生命科学分野では,細胞抽出液など多種多様

一般的な WB 法(SDS-PAGE ∼ WB)の手順は,①

なタンパク質が混在する状態から目的タンパク質の発

細胞抽出液などを試料に用いて SDS-PAGE,② PVDF

現量の半定量的な測定,あるいはタンパク質の分解や

膜へのタンパク質の転写,③ PVDF 膜のブロッキング,

翻訳後修飾の同定の手法として,ウエスタンブロッティ

④一次抗体反応 ,⑤ P V D F 膜の洗浄 ,⑥二次抗体反

ング(WB)法が広く用いられている.WB 法は各研究

応,⑦ P V D F 膜の洗浄,⑧化学発光または蛍光検出,

室で独自のプロトコールを使用していると思われるが,

という流れになっている(図 1A)
.本法で改良したの

基本的にその実験には長時間を要するであろう.特に

は次の 3 点である:1)一次/二次抗体反応を回転式の

抗体の品質に依存してさらなる実験時間の増加が生じ

撹拌装置(ハイブリダイゼーション装置,またはロー

る可能性もある.今回われわれは一般的なプロトコー

ラー培養装置)内で行う,2)抗原抗体反応促進剤 Can

ルにおいて 3 つのポイントで ,高価な機器を用いるこ

Get Signal®(CGS)を用いる,3)PVDF 膜の洗浄に市

とがなく検出感度を維持したまま実験時間を大幅に短

販のサラダスピナーを用いる.以下でそれぞれのプロ

縮する方法を検討したので本稿で紹介したい 1)∼ 3).

トコール改良のポイントを解説する.

High speed western blot: Three intriguing methods
Sayuri L. Higashi 1)/Yasuhiro Katagiri 2):Institute of Advanced Study, Gifu University 1)/National Heart, Lung, and Blood
〔岐阜大学高等研究院 1)/ 米国国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)
,米国国立衛生研究
Institute, National Institutes of Health 2)
所(NIH)2)〕

実験医学 Vol. 42 No. 1(1 月号)2024

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