クローズアップ実験法

2024年11月号 Vol.42 No.18 詳細ページ
微量プロテオミクスに有効なサンプル調製法:LASP法
紺野 亮,川島祐介
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微量プロテオミクスに有効な
サンプル調製法:LASP法
紺野 亮,川島祐介

何ができるようになった?
微量サンプルのプロテオーム解析では前処理においてタンパク質,消化後のペプチドがチューブや
チップに非特異的に吸着し,十分な解析が困難であった.最近,われわれが開発した LASP 法を用い
ることで非特異的な吸着を抑え,微量サンプルでも簡便に再現性の高いプロテオーム解析を行うこと
ができるようになった.

必要な機器・試薬・テクニックは?
微量プロテオーム解析で特別に必要になる試薬はラウリルマルトースネオペンチルグリコール
(LMNG)
,デシルマルトースネオペンチルグリコール(DMNG)である.あとは汎用的なプロテオー
ム解析の前処理である SP3 法で使用する試薬や機器が必要となる.処理されたサンプルは LC-MS/MS
で分析ができる.

はじめに

は利用しにくい.そのため,特殊な装置を必要とせず,

細胞や組織に含まれるタンパク質を包括的に調べる
プロテオミクス研究では,生命現象や病因を解き明か

できるだけ汎用性の高い簡単な方法でタンパク質やペ
プチドの損失を防ぐ方法が求められていた.

す重要な情報が提供される.現在,十分なタンパク質

われわれは非イオン性界面活性剤である LMNG を用

量が回収できる細胞・組織サンプルにおいては 1 度の

いることで非特異的な吸着を防ぎ,逆相スピンカラム

LC-MS/MS 分析で 1 万以上のタンパク質を検出できる

で簡便に LMNG を除去できる LMNG-assisted sample

1)

時代になっている .しかしながら ,微量サンプルに

preparation(LASP)法を開発し,さらに汎用的なプロ

おいては前処理の過程でタンパク質や消化ペプチドが

テオーム解析の前処理法である SP3 法と組合わせるこ

チップやチューブに非特異的に吸着して大きな損失が

とで利便性が高く,簡便かつ微量サンプルに対応した

生じることが問題となっている.これまでに容器との

方法を確立した(SP3-LASP 法)3).本稿では LASP 法

接触面を減らし,非特異的吸着を抑える方法として nL

および SP3-LASP 法を中心に,われわれが培ってきた

レベルの液体体積でのサンプル調製技術が開発されて

微量プロテオーム解析のノウハウについても紹介する.

2)

いるが ,高価で特殊な装置が必要となり ,一般的に
Universal sample preparation for low-input proteomics:LASP method
Ryo Konno/Yusuke Kawashima:Laboratory of Applied Proteomics Research, Department of Applied Genomics, Kazusa
DNA Research Institute(かずさ DNA 研究所ゲノム事業推進部応用プロテオミクスグループ)
2910

実験医学 Vol. 42 No. 18(11 月号)2024
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