クローズアップ実験法

2024年12月号 Vol.42 No.19 詳細ページ
実践! ファイバーフォトメトリー―自由行動マウスの神経細胞集団の活動をリアルタイムで解析
後藤哲平,田坂元一,宮道和成
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実践! ファイバーフォトメトリー
自由行動マウスの神経細胞集団の活動を
リアルタイムで解析
後藤哲平,田坂元一,宮道和成

何ができるようになった?
ファイバーフォトメトリーは蛍光プローブを導入した生体内に光ファイバーを埋め込み,

で

2+

蛍光検出を行う技術である .主に神経細胞集団の活動を反映した Ca の動態を簡易的に調べる手段
として発達した.近年,神経調節因子などさまざまな生体分子に対するリアルタイム蛍光プローブの
発展を受け,その用途は飛躍的に拡大している.

必要な機器・試薬・テクニックは?
機器はすぐに使えるパッケージで販売されているほか,制御系やパーツを集めてカスタムメイドも
可能である.多くの生体分子センサーを搭載したアデノ随伴ウイルスも市販されている.本稿を参考
に,標的や発現系の選択を工夫してほしい.

理解して用いることが肝要である.ファイバーフォト

はじめに

メトリーは光ファイバーの直下に位置する数百の細胞

ファイバーフォトメトリーは蛍光プローブを導入し

(軸索線維等を含む)の集団的な C a2+動態を捉える手

た生体内に外科的に光ファイバーを埋め込み,

法なので,物理的な空間分解能が低いことが短所であ

で光ファイバーを介して励起光の照射と蛍光の検出を

る.時間分解能は使用する Ca2+センサーに依存するが,

行う技術であり,生体内で行動や生理機能に相関した

標準的な GCaMP を用いた場合,100 ms のオーダーで

細胞集団(主に神経細胞)の活動を解析する優れた技

ある.このシンプルなデータ構造のため,解析が容易

2+

法である.当初は神経活動を反映する Ca の動態を簡
1)

なのが長所である.

易的に調べる手段として発達した が ,近年では神経

この手法を活かすには,Ca2+センサーを発現させる

調節因子やニューロペプチドなどさまざまな生体分子

集団を極力特異的な細胞タイプに限定させた方がよい.

2)

に対する蛍光プローブイメージング の手法として活

無制限に Ca2+センサーが発現している状況では,ファ

躍の舞台が広がっている.

イバーを設置した直下のシグナルのみならず,遠方か
2+

本稿ではまず標準的な神経系における Ca イメージ

らやってくる軸索等の線維由来のシグナルが混入して

ングとしての使い方を扱う.どのような実験系でも自

しまう.また,標的の細胞が対象となる解析区間にお

身の研究の目的を踏まえて,系の短所と長所とをよく

いてバラバラに挙動していると集団的な活動として特

Fiber photometry goes to action!
Teppei Goto/Gen-ichi Tasaka/Kazunari Miyamichi:RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research(理化学研究所生命
機能科学研究センター)

実験医学 Vol. 42 No. 19(12 月号)2024

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