本コーナーでは,ライフサイエンスの未来を支えるさまざまな活動や,それにかかわる当事者の声を紹介します.
ゲノム編集,次世代シークエンサーをはじめとして日々進化する実験手法や,数々の研究成果を,私たち編集部ではいつも楽しみに拝見しております.そのようななか,「今のような状況は10年前には想像がつかなかった」 という編集部でのふとした会話をきっかけに,ぜひ読者の皆さまに“生命科学の未来予想図”を聞いてみたいと思い立ちました.
そこで,実験医学のウェブサイトで本年1月〜4月にかけて実施しておりましたアンケートにて,以下の質問をさせていただきました.
「今から10年後の2025年,あなたは生命科学でどのように活躍をしていたいと思いますか? そして社会はどうなっていると思いますか? 未来予想図をぜひお教えください.」
アンケート終了までに,読者の皆さまには多くのお声をいただきました.再生医療やパーソナルゲノムへの期待や懸念,また読者ご自身の将来への夢や目標など,勇気の出るたくさんのメッセージに,深く御礼申し上げます.そこで,本コーナーでは読者の声として,ご回答いただいた中から一部のご意見を編集部にて選ばせていただき,掲載させていただきます.どうぞご覧ください.
(実験医学編集部)
本コンテンツは,実験医学2015年6月号に掲載された同名コーナーからの転載となります
10年後の社会は今と大きな変化はないかもしれませんが,iPS細胞を用いた再生医療は発展していることでしょう.今から楽しみでなりません.(大学生)
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iPS細胞の臨床応用が進み,皮膚組織や網膜,末梢神経など比較的移植の容易な組織の再生医療はもっと一般的に市中病院でも行われるようになると思う.それに伴い,細胞培養などの技術者が臨床で必要とされると思う.また侵襲性が低く容易にがん細胞を検出するようなイメージング技術も進歩するでしょう.(大学院生)
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再生医療等の医療応用については,より,倫理面での議論がなされるようになっていると思う.遺伝子治療も進むであろうし,医療のみならず,若返りの方法も具現化され,その選択についての議論もされる時代のように思う.(企業勤務)
ヒト一人のゲノムを読むコストが,かなり安くなっており,遺伝疾患の検査として次世代シーケンサーが多くの医療現場で日常的に利用されているかもしれない.(研究者)
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パーソナルゲノムが当たり前となり,情報を活用するスキルが今よりももっと重要となっている.また,データを研究室内で秘匿せずオープンにすることで研究が加速し,それが評価される時代になっている.(研究者)
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これまでの生命科学は生命現象を明らかにすることが中心にさまざまな技術が開発されてきたが,これからは遺伝子検査キットのようにこれまで培われた知識と技術が社会に還元されることが中心になっていくのではないかと思う.(大学生)
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みんなが自分のゲノム情報を普通に保持し,自分の将来の健康について非常に関心を持っている社会.(研究者)
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次世代シークエンサーの利用が増えてゲノム情報が豊富になり,研究面でのさらなる発展や新しい実験方法が増える.(大学等勤務)
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PCRをやる程度の時間とコストで,ドラフトではなくほぼ完全なde novoゲノムシークエンシングができる.(研究者)
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ゲノム編集が一般的になり遺伝病の治療が行われる様になっている.(研究者)
数学的な手法がより生命科学において一般的なものとなっていると考えます.現状疾患についてでは感染症などに適応が限られていますが,より広い疾患に対しそういったアプローチをかけていき,疾患の予防や治療に役立つ結果が引き出せれば,と思います.(大学生)
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個人的には,新興ウイルス感染症についてもっと注視されていると思う.日和見感染でも抗生剤は汎用されるのに対して抗ウイルス薬は特定のウイルスに対してしか存在しない.一方,今年はエボラやデング,それだけでなく近年はダニ媒介性血小板減少ウイルスやH5N1など種々のウイルスの脅威にさらされている.もっとウイルスに対する創薬が注力されてきてもいい気がする.(研究者)
未来,社会には,現在とは比べ物にならないほど多量で多種多様な情報が溢れている.そこで人々は真実を模索する方法を求め,科学的な思考や方法があらためて重要視されるようになる…と思います.(大学院生)
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10年後は,現在のハイスループットも汎用実験となり,さらにデータに溢れた時代が来るはず.いかにして自分の実験モデルや病態モデルを構築していくかが重要になるのでは.研究を構築する前のアイディアがこれまで以上に重要となってくるだろうと思う.(研究者)
10年と言わず,明日にでも独立したい.まずはどんなに細く先行き不透明でも構わないので,自分で新たな道を切り開きたい.(研究者)
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自分の研究室を持って,異分野との交流を深め,新しいデバイスの開発を含めた新たな研究分野を創設したい.社会としては,科学立国を目指して欲しいが,基礎研究と臨床研究の垣根はよりひらいていそう.(研究者)
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やはりラボを持っていたい.基礎に偏った研究内容では無くて,最終的には産業化を見据えた研究を行っていきたい.(研究者)
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10年後には,海外で自分のラボを持ち,自分の研究で世界を驚かせたい.システム生物学の手法を用いてヒトなどのビッグデータを扱い,分子動態だけではなく,生理学的動態を明らかにしたい.(大学院生)
10年後は高校で教師をしているのではないかと思います.生命科学のみならずサイエンスの面白さを子どもたちに伝えていければなと考えています.(大学生)
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自分の研究が社会に役立っていると実感できるような研究をしたい.また,そのような研究を若い世代に発信し,研究の重要性が分かってもらえるような社会にしたい.(今は研究はオタクがやるもの,と勘違いされている部分もあるかと思います).(研究者)
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生命科学の魅力を分野外の人や中高生に知ってもらうために活動したい.文系と理系のかけ橋になり,枠を超えてグローバルに活動したい.遺伝子診断などももっと一般的になり,科学がもっと身近になっているはず.だからこそ科学に対する誤解や偏見をなくし,正しい知識を持ってもらえるような活動がしたい.(大学院生)
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遺伝子解析と疾患の関連性がもっと明らかになっていると思います.現場で遺伝子解析をしながら小学校や中学校の授業で遺伝子解析についての倫理授業があって,その講師をしてみたいです.(大学等勤務)
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健康科学に関する最新科学によるエビデンスを基に,昔ながらのじっくりトライすることの重要さを運動というキーワードから人々へ貢献していきたい.(研究者)
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研究者として活躍していたいが,科学が身近でない人にも科学の可能性とおもしろさを知ってもらう仕事がしたいと思っています.社会の中で,科学がもっと身近で,一人一人が自分に必要な情報をチョイスできる未来にしたいです.(研究者)
私は臨床で活躍したいと思いますが,最新の研究にも目を通して,科学的な理論に基づいた適切な診断をくだせるDr.になりたいです.(大学院生)
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少子高齢化社会,老いることへの不安が少しでも軽くなるよう,がんや老化の予防や改善に関わる研究で活躍したいです.(大学院生)
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生命科学,医学の発達によりますます人口増加が進み,感染症も爆発的に増加していくと思われる.その中で,ユビキタスに効果のある抗微生物薬の創薬に繋がる研究も行えたら,と思っている.(大学生)
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世界に認められる研究者になり,革新的な医薬品開発のため,基礎研究から臨床研究まで携わっていたい.社会においては,予想できないことが多く起こってくると考えるが,前向きに一歩ずつ進んでいきたい.(大学院生)
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これまでの知見から徐々に病気のターゲットや原因遺伝子などの情報が蓄積してきている.そのため,今後は創薬基盤としての化合物ライブラリー等を利用し,臨床に応用するという視点を大切にしたい.また,癌をはじめとして多くの治療困難な病気が根治可能となる社会を目指していきたい.(大学院生)
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2015年1月,増刊号 「再生医療2015」 の発行で実験医学は通巻550号を突破しました.これを記念し,特製パッケージのカレー(写真)を回答者プレゼントとしてご用意して,アンケートを行いました.本コーナーでは,そのなかから一部のコメントを編集部にて抜粋し,ご紹介させていただきました.回答いただきました皆さまには,激励のお言葉・将来への希望など,たくさんの貴重なご意見・ご感想をいただきましたことを,編集部一同,深く御礼を申し上げます.
当選者の皆さまには商品を発送させていただきました.皆さまのお声をもとに,これからも研究に役に立つ誌面をお届けしてまいりたいと思います.今後とも「実験医学」誌に,温かいお力添えをいただけますよう,心からお願い申し上げます.