遺伝的浮動とは,表現型をもとにした選択によるのではなく偶然により(ランダムに)集団内のアレルの頻度が変化することをいう.これにより,偶然,特定のアレルが減少し消滅したり,逆に増加し固定化されたりという現象が起きる.集団遺伝学者ライトが強調したことでライト効果とよばれることもある.木村資生は進化におけるゲノム配列やアミノ酸配列の変化のほとんどは表現型をもとにした選択ではなく,遺伝的浮動によるものとする中立性を提唱した.(実験医学増刊417より)
ポストGWAS時代の遺伝統計学
オミクス解析と機械学習でヒト疾患を俯瞰する
有限集団で,親世代から子ども世代へと遺伝子サンプリングが行われる際に生じる遺伝子頻度の偶然の変動.変動の大きさは,集団サイズに依存すると期待される.例えば,単純のために,サイズNの二倍体生物からなるライト・フィッシャー集団を考えると,2つの対立遺伝子をもつある遺伝子について,親世代から子ども世代へのその伝達の過程は二項サンプリングであると見なせる.ここで,二項分布の性質から,親集団で頻度pである対立遺伝子の子ども世代での頻度は平均的には同じくpであると期待できるが,その分散はp(1-p)/2Nであり,分母に集団サイズが入っていることから,サイズが小さければ変動は大きくなり,サイズが大きければ変動は小さくなることが理解できる.(実験医学増刊417より)
ポストGWAS時代の遺伝統計学
オミクス解析と機械学習でヒト疾患を俯瞰する
解説は発行当時の掲載内容に基づくものです
本コンテンツは,2018年まで更新されていた同名コンテンツを元に,新規追加・再編集したものです