簡潔さを磨く 2級:解説2

推敲例

なぜよくないのか?

例文は,「目的」が2カ所に書かれていて,しかもその内容がほぼ重なっている.具体的に見ていくと最初の『薬物療法が有効かどうかの評価』と次の『どの症状に対してどのような薬物療法がより有効であるか,用量反応性に関する検討を行う』が重なっている.そして『発症の原因や患者の分類を行うことによって,適切な診断を行えるようにする』と『痛み,異常感の症状ごとに分け』『発症の契機や症状を増悪させる原因の解析を行い,患者を分類』とがほぼ同じ内容である.また研究の「背景」で問題点が十分に書かれていない点もどうにかしたい.

どのように改良すればよいか?

分断された,あるいは重複した「目的」を整理する.研究目的は,裏返せば研究の問題意識である.つまり研究目的とは問題点を明らかにすることである.この研究でどのようなことがわかるのか,明らかになるのか,応用があるのかなどを書かないといけない.

例文の場合,ほぼ同じような内容の「目的」が 2カ所に書かれていた.そこで,「目的」の部分を「背景」の問題点として書き直して,全体を整理して書き直した.また申請書のキーワードにあたるものを太字にした(もちろん太字にしなくてもよい.この場合は『歯科心身症』).

改善例

推敲力養成道場:目次

児島 将康

(久留米大学客員教授,ジーラント株式会社代表取締役)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の科研費公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演し,理系・文系を問わず申請書の添削指導を行っている.令和6年4月より研究者を支援するジーラント株式会社(https://g-rant.org/)を立ち上げ,活動している.

科研費に関する書籍・ウェビナーや制度の変更点など,科研費申請に役立つ情報を発信しております.
研究生活の役に立つ書籍なども少しご紹介しています.