日本のワクチン開発・研究の新たな司令塔
SCARDAセンター長が描く総合科学としての「ワクチン学」への道

2022年3月，ワクチン開発を推進する司令塔として日本医療研究開発機構（AMED）内に先進的研究開発戦略センター（Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response：SCARDA，スカーダと呼ばれる）が新設されました（図）．SCARDAは新型コロナウイルスのパンデミックを受け閣議決定された「ワクチン開発・生産体制強化戦略」に基づき設立されたファンディング・エージェンシーで，研究費配分が約2,500億円以上とその金額にも大きな注目が集まりました．SCARDA発表の資料^※1には，SCARDAの目標は「国が定める重点感染症に対して緊急時にいち早く，安全で有効な，国際的に貢献できるワクチンを国内外に届ける」ことであり，緊急時に迅速なワクチン開発を可能とする体制づくりに加え，平時においてもワクチンの研究開発を主導するとあります．2022年6月時点で「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業」という研究支援と「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」という拠点開発の2つの事業が走り出しています．実態が明らかになるにつれ，SCARDAは今回のパンデミックというよりむしろ次の感染症を見据えた長期的な事業であることが明らかになってきました．SCARDAの初代センター長には濵口道成先生が就任されました．濵口先生はもともとウイルス学者としてご活躍され，その後は科学技術振興機構（JST）理事長として若手を長期的に支援するプログラムなどにご尽力されてこられました．本インタビューでは濵口センター長にSCARDAのめざすべきところと，濵口先生自身の目標についてお伺いしました．読者の皆さまが今後の研究の方向性をかんがえるうえで，お役に立てましたら幸いです．（編集部）