注目を浴びるウイルス研究の最新状況!受容体を介した吸着・侵入の分子機構から,鳥インフルエンザの感染経路と強毒化メカニズム,ヘルペスワクチンの開発など,興味深いトピックを幅広くご紹介いただいています.
目次
特集
ウイルス感染の新知見とワクチン開発の進展
新規受容体・感染経路の同定から、免疫応答メカニズムまで
企画/河岡義裕(東京大学医科学研究所感染免疫部門)
企画者の言葉【河岡義裕】
国境を越え,時には種の壁を越えて広がるウイルス感染症は,国際社会の大きな脅威となっている.新興・再興感染症が世界中で頻出する危機的な状況に対し,ウイルス学および感染免疫学研究は国際的に活発化し,近年,急激な進展をみせている.本特集では,疾患をひき起こす病原体としてのウイルス学研究,そして生命現象をシンプルに示す殖体としてのウイルス学研究を紹介しながら,ウイルス感染症克服に向けてのこれまでの成果と今後の課題について,それぞれの分野の第一人者の先生にまとめていただいた.
ウイルス感染に対抗する自然免疫機構【熊谷雄太郎/審良静男】
ウイルスが宿主に感染すると,Toll様受容体(TLR)とRIG-I様ヘリカーゼ(RLH)の2つの自然免疫受容体群によって認識され,抗ウイルス免疫反応を惹起する.TLR,RLHは細胞群特異的な割をもことが判明しており,個体レベルで頑健な抗ウイルス免疫応答の誘導を行っている.さらには,TLRだけでなくRLHの認識するウイルスに由来する分子パターンも明らかになりつつあり,分子レベルでも広範なウイルスを認識する基盤をもっていることがわかってきた.
H5N1鳥インフルエンザ【村本裕紀子/河岡義裕】
1997年,香港でH5N1鳥インフルエンザウイルスがニワトリからヒトに直接感染して以来,H5N1ウイルスは,家禽だけでなくくの人に染し,世界中で犠牲者を増加させ続けている.この鳥インフルエンザウイルスは,どのような変化によりパンデミックウイルスへと変貌するのか? 近年,動物モデルを用いた実験から,H5N1ウイルスが哺乳類に適応するメカニズムが少しずつ明らかにされてきている.
C型肝炎ウイルスの侵入機構【谷 英樹/松浦善治】
C型肝炎ウイルス(HCV)の感受性細胞への侵入機構の解析は,HCVの複製を許容する細胞培養系が存在しなかったため,シュータイプウイスなどの代替法を用いて進められてきた.近年,細胞培養に馴化したHCV株が確立され,感染受容体候補分子の性状やHCVの標的細胞内への侵入機構が明らかになりつつある.しかしながら,ほとんどの慢性C型肝炎患者の血清中には,これらのウイルス感染を阻止できる高い中和抗体が存在する.したがって,生体内のHCVは未同定の感染経路により持続感染しているものと推測される.
ヘルペスウイルス感染症の克服【西山幸廣】
ヒトのヘルペスウルスは8種類り多彩な疾患を起こす.その一部に対しては抗ウイルス剤が開発され治療が可能となった.しかし,水痘・帯状疱疹ウイルスを除きワクチン開発には成功していない.本稿では,単純ヘルペスウイルス(1型,2型)に対するワクチン開発研究の現状を整理し,将来の可能性について考えてみた.
麻疹ウイルスの受容体と病態【竹田 誠/橋口隆生/柳 雄介】
麻疹ウイルスは免疫系細胞に発現しているSLAMを主要な受容体として細胞に感染する.そのめ,免疫細胞指性を示し,患者に強い免疫抑制を起こす.さらに,未同定の受容体分子を用いて極性上皮細胞にも感染することができる.この性質は,麻疹ウイルスが免疫細胞で増殖後,気道に放出され,他の個体に伝播されるのに重要な意味をもつと考えられる.これらの受容体との相互作用に働いている麻疹ウイルスのHタンパク質はβプロペラ構造の二量体からなり,それぞれの受容体とは分子上の異なる領域で結合している.
HIV感染機構とワクチン開発研究【稲垣奈都子/俣野朗】
エイズを発症するHIV感染症の克服に向けて,その感染および発症機構の解明に向けた研究が進められている.ウイルスと宿主因子との相互作用の研究は,治療薬開発に結びつき,免疫反応を含めた病態の研究は,ワクチン開発に結びつく.特に,自然治癒のないHIV感染症に対するワクチン開発は,自然感染では生じ得ない免疫反応を誘導させるという新たなコンセプトを必要とする.本稿では,治療薬開発およびワクチン開発の両方において重要となるHIV感染症の基礎研究のトピックを解説する.
トピックス
カレントトピックス
PML標的による静止期白血病幹細胞の根絶【伊藤圭介/Pier Paolo Pandolfi】
標的プロモーター由来ncRNAによる転写抑制【黒川理樹】
外胚葉因子がp53の活性を阻害することにより中胚葉分化を抑制する【笹井紀明】
有糸分裂の開始を制御するBoraとオーロラAキナーゼの協調的な働き【関 亜希子】
News & Hot Paper Digest
心の傷の解毒剤
GTPの濃度変化に応答する新たな遺伝子発現制御機構
マイクロ流路を用いたタンパク質相互作用解析技術の創薬への応用
Eli Lilly社のうつ病治療薬Cymbaltaに腰痛緩和作用
連載
<新連載>モデル生物の歴史と展望【連載監修:森脇和郎】
第1回 バイオリソース・マウスの歴史と展望【森脇和郎】
クローズアップ実験法
特定部位の翻訳後修飾を特異的に認識する抗体作製法【後藤英仁/稲垣昌樹】
論文英語ライティング 第4回
主語—動詞/動詞—目的語の組合わせ【河本 健】
ラボレポート留学編
免疫学の「ラ・ホヤ」を求めて—La Jolla Institute for Allergy and Immunology【福山 聡】
製品特集
新しい幹細胞テクノロジー
<概論>幹細胞技術の現状と展望【梅澤明弘】
協賛企業記事:アルファメッドサイエンス株式会社/サイヴァクス株式会社/インビトロジェン株式会社/株式会社ジェイ・エム・エス
関連情報
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- 【本書名】実験医学:ウイルス感染の新知見とワクチン開発の進展〜新規受容体・感染経路の同定から,免疫応答メカニズムまで
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(2021年8月23日)