実験医学増刊 Vol.28 No.5

脳神経系の情報伝達と疾患

さまざまなシグナル伝達因子の異常が引き起こす精神疾患・発達障害・神経変性疾患のメカニズム

  • 伊佐 正,大隅典子,高橋良輔/編
  • 2010年03月05日発行
  • B5判
  • 212ページ
  • ISBN 978-4-7581-0305-3
  • 5,940(本体5,400円+税)
  • 在庫:なし
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精神神経疾患を引き起こす様々な要素について,情報伝達をキーワードに,分子・遺伝子,神経細胞,神経回路といったそれぞれのレベルから解説します.変性疾患はもちろん,精神疾患や発達障害も幅広く取り上げました.

目次

第1章 神経回路・システムの障害

1. パーキンソン病における認知・情動機能【小早川睦貴/河村 満】

  • パーキンソン病における認知機能障害
  • パーキンソン病における情動機能

2. モデルマウスの神経活動からジストニアの病態を考察する【知見聡美/南部 篤】

  • 筋活動
  • 大脳基底核の神経回路
  • 大脳基底核ニューロンの自発発火活動
  • 大脳皮質の電気刺激に対する応答パターン
  • 大脳基底核における体部位局在
  • ジストニアの病態

3. 眼球運動障害からみた前頭葉の役割【福島順子】

  • 前頭葉の眼球運動関連領域とその障害
  • 前頭葉機能障害患者の眼球運動
  • 眼球運動障害におけるFEF/SEF の役割

4. 薬物依存の脆弱性要因【曽良一郎】

  • 報酬系と薬物依存
  • 依存性薬物の標的分子
  • 脆弱性環境要因としてのストレス
  • 神経可塑性の変化と脆弱性の増強
  • ドーパミン以外の神経伝達系の脆弱性要因
  • 遺伝的脆弱性要因

5. 内臓感覚の異常と病態【福土 審】

  • 内臓感覚とその異常
  • IBS と脳腸相関の神経科学
  • IBS と脳腸相関の分子遺伝学

第2章 発達障害

1. 自閉症とシナプスバイオロジー─自閉症の研究と治療の試みへのマウスモデルの活用【櫻井 武】

  • 自閉症スペクトラム
  • 遺伝的要因の関与とシナプス病
  • 自閉症マウスモデル
  • 自閉症治療の試み

2. 染色体工学を用いた発達障害のヒト型モデルマウスの作製と解析【内匠 透】

  • マウス作製
  • 遺伝子発現
  • 形態学的解析
  • 行動学的解析
  • snoRNA の解析

3. 有芯小胞の分泌制御因子CAPS2 と自閉症感受性【定方哲史/篠田 陽/林 周宏/古市貞一】

  • 自閉症の遺伝素因とCAPS2 遺伝子
  • CAPS2 の有芯小胞分泌における機能と脳内発現分布
  • CAPS2 遺伝子欠損マウスが示す脳の発達と行動形質の異常
  • 自閉症におけるCAPS2 の一塩基多型とスプライシング亜型
  • CAPS2 による分泌制御と発達障害
  • PQBP1 異常による発達障害の分子機構

4. PQBP1異常による発達障害の分子機構【伊藤日加瑠/岡澤 均】

  • PQBP1 の分子機能
  • PQBP1 と精神遅滞
  • PQBP1 異常症モデルマウスの作製と解析
  • HDAC 阻害剤によるPQBP1 異常症モデルマウス治療
  • 転写異常による他の発達障害
  • 精神遅滞の病態メカニズム解明と治療をめざして

5. 社会行動の障害の脳解剖学的基盤【山末英典】

  • ASD の脳形態所見
  • 対人相互作用の障害の脳神経基盤
  • 男女差とASD

第3章 統合失調症・気分障害

1. 統合失調症リスクと神経発達障害─ DISC1 が関わる分子病態メカニズム【坪井大輔/貝淵弘三】

  • DISC1 & Ndel1
  • DISC1 & PDE4B
  • DISC1 & Kinesin-1
  • DISC1 & Girdin

2. うつ病に関するBDNF 研究─現状と課題【熊ノ郷晴子/水井利幸/高橋正身/小島正己】

  • うつ病におけるBDNF 仮説
  • BDNF の抗うつ効果:動物モデルを用いた検証
  • BDNF関連遺伝子変異マウスのうつ様行動と分子病態
  • BDNF とうつ病:新たなモデル動物と仮説の再考
  • 血中BDNF 量,脳容量とうつ病

3. 恐怖記憶を制御する生後の海馬神経新生─ヒトPTSD 治療に貢献できるか【北村貴司/井ノ口 馨】

  • 成体脳海馬における神経新生
  • 海馬神経新生と記憶の海馬依存性
  • 神経新生低下モデルマウスとPTSD

4. 統合失調症・気分障害とFABP/Fabp 遺伝子【前川素子/吉川武男】

  • 精神疾患と栄養を結び付ける疫学データ
  • 遺伝学的解析
  • FABP/Fabp の機能

第4章 神経情報伝達と疾患

1. グルタミン酸受容体と孤発性筋萎縮性側索硬化症【日出山拓人/山下雄也/郭 伸】

  • AMPA 受容体と興奮性神経細胞死
  • GluR2 Q/R 部位と孤発性ALS
  • RNA 編集

2. カルシウムチャネルのCAG リピート病─ SCA6 ノックインマウスの解析による病態解明【渡瀬 啓/海野敏紀】

  • 脊髄小脳変性症6型(SCA6)とは
  • ポリグルタミン病かチャネル病か?
  • SCA6 マウスモデルのデザインと作製に向けたチャレンジ
  • Sca6 KI マウスにおける変異遺伝子発現
  • Sca684Q マウスは年齢依存的・遺伝子量依存的に運動障害を発症する
  • KI マウスプルキンエ細胞の電気生理学的性質
  • KI マウスのプルキンエ細胞内封入体形成
  • KI マウスモデルから見えてきたこと,これからの課題

3. 視神経脊髄炎と抗アクアポリン4 抗体【中村正史/藤原一男】

  • NMO の臨床所見,MRI 所見および検査所見の特徴
  • 中枢神経系におけるAQP4
  • 抗AQP4 抗体の臨床的意義
  • NMO の病態における抗AQP4 抗体

4. Dynactin 変異とPerry 症候群─モータータンパクと神経変性【坪井義夫】

  • Perry 症候群とは?
  • DCTN1 遺伝子変異とPerry 症候群における神経変性

5. 新規シグナル物質として機能する家族性ALS 原因遺伝子VAP【津田浩史】

  • VAP はMSP と相同な領域を持つタンパク質
  • autonomous function とnon-.autonomous function を持つMSP
  • VAP MSP はVAP タンパクから切断され,細胞外に分泌されるタンパク質
  • VAP MSP は細胞外に分泌し,Eph レセプターに結合するタンパク質
  • ALS8 型VAP タンパクは細胞外に分泌されず,ER に蓄積してER ストレスを誘導
  • VAP が孤発性ALS の病態へ関与する可能性

第5章 神経疾患の細胞生物学

1. 神経変性とオートファジー【一村義信/小松雅明】

  • オートファジーの生理的役割
  • 条件付きオートファジー欠損マウス
  • 選択的オートファジー
  • オートファジー不全による神経細胞死
  • オートファジーと神経変性疾患

2. パーキンソン病とオートファジーによるミトコンドリア品質維持機構【田中 敦/Richard J. Youle】

  • パーキンソン病とミトコンドリア
  • ミトコンドリアとオートファジー
  • Parkin が損傷ミトコンドリアを駆除する
  • これからの展望

3. タンパク質分解系活性化による神経変性疾患治療【伊野部智由/貫名信行】

  • オートファジー誘導
  • ユビキチン-プロテアソーム系の活性化戦略
  • 異常タンパク質分解誘導剤

4. GOSPEL によるGAPDH 細胞死誘導の抑制と神経保護効果【原 誠/澤 明】

  • GAPDH 結合タンパク質,GOSPEL の同定
  • GOSPEL とSiah によるGAPDH との競合的な結合と核移行の調節
  • GOSPEL とGAPDH の結合がもたらす神経保護効果

5. 家族性ALS マウスモデルのワクチン療法【漆谷 真】

  • 免疫療法の研究背景
  • 変異SOD1 トランスジェニックマウスに対する免疫療法
  • 今後の展開

6. 遺伝性パーキンソン病原因遺伝子研究の新展開【今居 譲】

  • 遺伝性PD とタンパク質分解経路の異常
  • 遺伝性PD とミトコンドリアの異常
  • モデル生物による遺伝性PD 研究

第6章 疾患研究の基礎

1. 神経新生からグリア新生へのスイッチ【仲・金田勇人/島崎琢也/岡野栄之】

  • 外因的なグリア分化誘導シグナル
  • グリア分化誘導に必要な内因的なエピジェネティクスの変化
  • COUP-TF Ⅰ / Ⅱによる神経幹細胞の時間特異性の変化
  • これまでに報告された神経幹細胞の時間特異性関連遺伝子との比較
  • 神経発生メカニズムの予想モデル

2. 成体脳ニューロン新生の分子メカニズムと機能的意義【今吉 格/坂本雅行/影山龍一郎】

  • 成体脳神経幹細胞によるニューロン新生
  • ニューロン新生の解析手法
  • 成体脳神経幹細胞の増殖・分化制御の分子メカニズム
  • 新生ニューロンの神経回路への組み込み様式と,高次脳機能との関係

3. 白質の可塑性と疾患との関わり【田中謙二/池中一裕】

  • 白質と灰白質
  • 精神疾患におけるオリゴデンドロサイト関連遺伝子異常の報告を受けて
  • 白質の発達
  • オリゴデンドロサイトの発生
  • OPC/neuron interaction
  • NG2細胞,ポリデンドロサイト( polydendrocyte)
  • オリゴデンドロサイトの新しい機能
  • オリゴデンドロサイトの機能低下と表現型
  • 伝導速度が半分になったマウスの行動解析

4. 脳におけるエネルギー感受機構とAMPK【箕越靖彦】

  • AMPK の活性調節機構と代謝調節
  • 摂食調節に関わる視床下部神経回路
  • 視床下部AMPK による摂食調節作用
  • AMPK の下流シグナルとしての脂肪酸代謝とmTOR

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  • 【本書名】実験医学増刊:脳神経系の情報伝達と疾患〜さまざまなシグナル伝達因子の異常が引き起こす精神疾患・発達障害・神経変性疾患のメカニズム
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