がんはなぜ再発する?治療抵抗性のメカニズムは?がん組織の不均一性とは?28篇の総説から浮かび上がる“がん幹細胞”の起源と分子実態をもとにがん根治のストラテジーを考察する,分野の最前線に迫る一冊!
目次
序にかえて─がん幹細胞研究の流れ【須田年生】
第Ⅰ部 がん幹細胞性
第1章 白血病幹細胞
1.白血病幹細胞とはなにか【竹中克斗/赤司浩一】
- ヒト造血幹細胞・白血病幹細胞のアッセイ系
- AMLにおけるLSCの同定と細胞起源の多様性
- ALLにおけるLSCの同定と細胞起源の多様性
- 白血病幹細胞を標的とした新規治療法の開発
2.白血病発症機構とがん幹細胞―正常幹細胞との差異から見出す新たな治療戦略【熊野恵城/黒川峰夫】
- 白血病幹細胞とは
- 白血病幹細胞の起源
- 白血病幹細胞と治療戦略
3.白血病の発生と進展の制御機構―増殖と分化,そしてエピゲノムの制御の破綻【小川原陽子/北林一生】
- AMLの原因遺伝子
- 白血病発症とエピゲノム
- 正常な核型をもつAMLで新たに見つかった遺伝子変異
4.多発性骨髄腫幹細胞攻略のストラテジー【保仙直毅】
- 造血器悪性腫瘍における腫瘍幹細胞研究の方法概論
- 多発性骨髄腫の起源はgerminal center(胚中心)B細胞以降に存在する
- 異種移植実験系を用いた多発性骨髄腫幹細胞同定の試み
- 異種移植アッセイを用いた腫瘍幹細胞研究の限界
- 多発性骨髄腫形質細胞のなかに骨髄腫クローンを維持するのに十分な細胞が存在する
第2章 固形腫瘍幹細胞
1.ヒト乳がん幹細胞―特性と幹細胞制御機構【南 晶洋/下野洋平】
- ヒト乳がん幹細胞の同定
- ヒト乳がん幹細胞の性質
- 乳腺幹細胞と乳がん幹細胞の幹細胞性に関連する分子機構
2.膵がんにおけるがん幹細胞の特性解析【谷口英樹/小池博之】
- 膵がんにおけるがん幹細胞の同定
- 膵がん幹細胞の由来は?
- 膵管上皮中に存在する膵幹/前駆細胞の特性解析
- 膵がん幹細胞の治療抵抗性
3.正常腸上皮細胞の発生およびがん化過程におけるclonality解析【上野博夫】
- 正常腸幹細胞に関する2つのモデル─CBC vs+4細胞(LRC)モデル
- キメラを用いたクローナリティ解析
- 発生時のモノクローナリティの獲得
- 成体腸幹細胞のクローナリティ解析
- 家族性ポリポーシスと大腸腺腫・大腸がんのクローナリティ解析
4.がん幹細胞と細胞周期の生体イメージング【賀川義規/森 正樹/石井 優】
- 幹細胞と細胞周期
- がん幹細胞と細胞周期
- 細胞周期の可視化
- がん細胞のイメージング
第3章 エピジェネティクス/老化
1.幹細胞性を支えるエピジェネティクス【竹島秀幸/牛島俊和】
- DNAメチル化
- ヒストン修飾
- DNAメチル化とヒストン修飾の相互関係
- リプログラミングにおけるエピジェネティック修飾阻害の役割
2.白血病幹細胞の維持機構―シグナル伝達・エピジェネティック制御を中心に【小沼貴晶/岩間厚志】
3.がん幹細胞とエピジェネティクス―環境の変化がいざなう細胞運命のリプログラミング【鈴木淳史】
- がん幹細胞の発生とエピジェネティクス
- 肝臓におけるがん幹細胞の発生モデル
4.細胞老化:老化とがん化の接点【山越貴水/高橋暁子/原 英二】
- 分裂寿命による細胞老化の誘導
- がん遺伝子による細胞老化の誘導
- 生体内での細胞老化
- 細胞老化に伴うp16INK4a遺伝子発現のエピジェネティックな制御機構
- 細胞老化による発がん促進
第4章 がん幹細胞のシグナル
1.幹細胞および腫瘍の代謝制御【伊藤圭介】
- 腫瘍と代謝
- 各組織での腫瘍幹細胞
- 代謝経路を標的とした治療法の開発
2.RNA結合タンパクによるがん幹細胞維持機構【伊藤貴浩】
- CMLの急性転化とRNA結合タンパクMusashiによるNumbの発現制御
- RNA結合タンパクhnRNP E2による転写因子C/EBPαの翻訳制御
3.幹細胞シグナルのバイオインフォマティクス【清田 純】
- 網羅的解析とバイオインフォマティクス
- ES細胞
- 組織幹細胞
- がん幹細胞
- メタ解析というもう1つのアプローチ
4.遺伝子ネットワークのスイッチが細胞運命を決定する【岡田眞里子】
- 細胞のスイッチ
- 乳がんの細胞分化ネットワークに埋め込まれたANDゲート
第Ⅱ部 がん幹細胞の環境(ニッチ)
第5章 低酸素
1.低酸素応答系による幹細胞の維持メカニズム【田久保圭誉】
- 造血幹細胞は細胞周期が静止期である
- 造血幹細胞の低酸素環境への適応
- 造血幹細胞維持における低酸素応答系の役割
- 造血幹細胞とミトコンドリア
2.がんにおける低酸素応答シグナル伝達―PHD-HIF経路の働き【中山 恒】
- HIF(hypoxia-inducible factor)による低酸素応答制御
- PHD-HIF経路
- がんにおけるHIFの高発現
- HIF経路・HIF非依存的経路とがん
- がんにおいてHIFと協調して働く転写因子
- PHDとがん
3.低酸素誘導因子HIFの機能と低酸素-幹細胞様形質-治療抵抗性のリンク【近藤科江】
- 幹細胞様形質と悪性度
- 低酸素誘導因子HIFsの役割
- 腫瘍内低酸素領域と治療抵抗性
4.急性骨髄性白血病の幹細胞ニッチと治療抵抗性【石川文彦】
- 急性骨髄性白血病を再現するヒト化モデルマウス
- 白血病幹細胞のニッチでの治療抵抗性
- 白血病幹細胞の細胞周期を修飾する治療の可能性
- 白血病幹細胞の細胞表面抗原を標的とした治療の可能性
第6章 血管・リンパ管
1.がん幹細胞の血管ニッチ【高倉伸幸】
- 正常幹細胞の血管ニッチ
- がん幹細胞のニッチ
- 現行の血管新生抑制法とがん幹細胞ニッチ
2.がん転移とリンパ管ニッチ【平川聡史】
- リンパ管の構造と機能
- リンパ管特異的マーカーの確立と機能解析
- 腫瘍リンパ管新生:リンパ行性転移の促進因子
- リンパ節の形成:リンパ管が果たす役割とニッチの形成
腫瘍血管新生のメカニズムから見出す新規治療標的【久保田義顕】
- 腫瘍血管新生とVEGF
- 腫瘍血管新生とDll4(Delta-like 4)
- 腫瘍随伴性マクロファージ
- その他の抗血管新生療法の新規標的
- がん幹細胞と抗血管新生療法
4.血管内皮細胞とがん微小環境構成細胞との可塑的な関係【渡部徹郎】
- 血管内皮間葉移行によるがん間質細胞の生成
- 腫瘍血管内皮細胞の特異性と多分化能
- 腫瘍血管内皮細胞の一部はがん幹細胞から形成される
第Ⅲ部 がん幹細胞治療
第7章 治療・創薬
1.がん幹細胞の治療抵抗性メカニズム【吉田 剛/佐谷秀行】
- がん幹細胞におけるDNA損傷応答機構の亢進と治療抵抗性
- ABCトランスポーターによる薬剤排出亢進が原因の耐性機構
- がん幹細胞の酸化ストレス回避機構
- ニッチによるがん幹細胞の保護作用
2.がん分子標的療法時代のがん幹細胞研究─慢性骨髄性白血病幹細胞をめぐる問題と その解決に向けたアプローチを例に【平尾 敦】
- 慢性骨髄性白血病に対するチロシンキナーゼ阻害剤の登場
- チロシンキナーゼ阻害剤は夢の薬か?
- 問題の根本は幹細胞にあった!?
- なぜ慢性骨髄性白血病幹細胞はチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性を示すのか?
- チロシンキナーゼ阻害剤抵抗性克服のストラテジー
3.テロメレースを標的としたがん幹細胞標的治療の可能性【岡本奈緒子/増富健吉】
- テロメレース研究の歴史
- テロメレースの新規機能
- テロメレースの新規機能とがん幹細胞
4.インビトロがん幹細胞モデル【北嶋俊輔/高橋智聡】
- がん幹細胞をどう理解するか
- がん幹細胞のさらなる理解と治療法開発へ
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(2021年8月23日)
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