CT読影レポートの実例満載の入門書.解剖をふまえた読影のポイントや,具体的なレポート記載方法を,ベスト指導医賞を受賞した著者がわかりやすく教えます!放射線科研修で初めに知りたい知識がつまった1冊です.
CT読影に関する研修医への教育は非常に大事であるが,しばしば,なおざりにされている.放射線科の読影担当医師が日常業務に忙殺されていることが原因の1つであろう.評者が勤務し,本書著者である小黒先生が執筆当時勤めていた国立病院機構東京医療センターは研修医に人気の病院で,教育には力を入れているが,教える時間が長くなってしまい業務との両立が難しい.そこで,研修医はさまざまな教科書を読んでレポートを書こうとするわけだが,なかなか適切な文章を書くことができない.なぜなら,従来の教科書では疾患と画像の解説はあっても,レポート記載までの丁寧な解説をしていないからである.単語のみ知っていても英語を話すことができないように,疾患概念のみ知っていてもレポートを書くことはできない.その点本書は,全身の臓器に関して解剖と異常所見を結びつけたレポートという形でまとまっており,所見を記載する際に大いに参考になるであろう.
本書は研修医に向けて書かれた本で,画像に関してカルテなどに記載する際に本書がとても参考になる.CTの基礎知識に始まり,頭部,胸腹骨盤部の臓器,リンパ節,血管について,CTレポートで頻繁に使用するものに絞って解剖や異常所見を具体的な画像やシェーマを用いてわかりやすく解説している.さらに,よく見る疾患の画像とレポート記載例が一緒に提示されてよくまとまっている.すべての章において知っておくべき基本的な内容が網羅されており,研修医のみならず放射線診断科以外の臨床医,放射線技師,医学生などにも有効なツールである.基本的ではあるがかなり細かい内容まで記載されており,放射線科医も一度は読んでおいて損はないだろう.また,多数の共著者による教科書と異なり,本書は単著であることから全体に均一で良質な内容となっている点が非常に良い.A5サイズのため白衣のポケットに収まり,サッと取り出してメモを書き込むと最良のMy教科書となるだろう.本書を読んで基本的で重要な部分が理解できてしまえば,さらに詳しい専門書を抵抗なく読み進むことができ,CT診断学を今までよりも楽に勉強できるようになるばずだ.CT初学者の最初の一歩に好適であり,画像診断をしたい!と思っているすべての人にお勧めな本である.
なお付録の静脈路確保の章は,駆血帯の巻き方,サーフロー針の進め方,接続方法に至るまで事細かに記載されており,この章だけでも一見の価値がある.当院ではこの内容を看護師,研修医に教育しており,以前よりもトラブルなく遂行されている.患者さんは静脈路確保がスムーズでないだけで病院に対して不満を感じてしまう.静脈路確保を行うすべての医療従事者に本章を一読しておくことをお勧めする.
『レジデントノート2020年4月号』より転載
樋口順也(国立病院機構東京医療センター放射線科医長)
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(2021年8月23日)
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