基礎から学ぶ遺伝子工学

  • 田村隆明/著
  • 2012年10月01日発行
  • B5判
  • 253ページ
  • ISBN 978-4-7581-2035-7
  • 3,740(本体3,400円+税)
  • 在庫:なし
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豊富なカラーイラストで遺伝子工学のしくみを基礎から丁寧に解説.組換え実験に入る前に押さえておきたい知識が無理なく身につきます.章末問題を収録し,教科書として最適です.執筆豊富な著者による書き下ろし.

目次

概説 遺伝子工学 ―誕生から今日まで,そして未来へ

1.遺伝子工学とは
2.最初の遺伝子工学実験とその意義
3.遺伝子工学を発展させたエポック
4.遺伝子工学の現状と将来

第Ⅰ部 遺伝子・DNA の基礎

1章 遺伝子工学で使われる生物

1.遺伝子工学で生物を用いる目的
2.原核生物と真核生物
  • 原核生物
  • 真核生物
3.ゲノムと遺伝子
  • 遺伝子
  • ゲノム
  • ゲノムサイズと遺伝子数
4.大腸菌
  • 特徴
  • 遺伝子型
  • 培養
  • 滅菌
5.遺伝子工学に登場する真核生物
  • 酵母
  • 培養動物細胞
  • 多細胞動物個体
  • 植物
章末問題

2章 DNA の構造と複製

1.DNA の構造
  • 遺伝子の実体はDNA
  • DNA はヌクレオチドが連結した分子
  • 細胞のDNA は二本鎖として存在する
2.DNA の構造変化
  • 一本鎖と二本鎖の間の変換
  • 切断,剪断
  • 修飾によるDNA 損傷
3.DNA の複製
  • DNA 合成反応の原則
  • 細胞で起こるDNA 複製:レプリコンの複製
  • DNA ポリメラーゼ
  • 試験管内DNA 合成
4.DNA のメチル化
  • メチル化部位
  • 原核生物でのメチル化
  • 真核生物でのメチル化
章末問題

3章 遺伝子の発現

1.RNA
  • RNA とは
  • 種類と機能
2.転写機構
  • RNA 合成:RNA ポリメラーゼ
  • 転写開始
  • 転写終結まで
  • 新生RNA の修飾
3.原核生物の転写制御
  • ポリシストロニック転写とオペロン
  • ラクトースオペロンの構造と制御機構
  • 遺伝子工学で汎用される大腸菌の転写制御因子
4.真核生物の転写制御
  • エンハンサーと転写制御因子
  • 制御のメカニズム
  • クロマチンによる転写制御
  • mRNA の加工・成熟
  • 核外輸送
5.アミノ酸,ペプチド,タンパク質
  • アミノ酸
  • ペプチド結合
  • タンパク質
6.翻訳
  • コドンとtRNA
  • 翻訳機構
7.真核細胞で翻訳されたポリペプチドの運命
  • 翻訳後のタンパク質の移動
  • タンパク質の分解
章末問題

第Ⅱ部 基本の酵素からクローニングまで

4章 制限酵素,メチラーゼ,リガーゼ

1.細菌がもつ自己防衛手段:制限と修飾
  • 現象の発見
  • 制限と修飾の実体
2.遺伝子工学における制限酵素発見の意義
3.制限酵素の種類
  • Ⅰ~Ⅲ型酵素
  • 制限酵素の分布
4.Ⅱ型制限酵素のDNA 認識配列と切断末端
  • 認識配列と切断部位
  • 粘着末端と平滑末端
  • 切断地図
  • 制限酵素の反応性とスター活性
5.DNA メチラーゼと制限酵素の切断特性
  • 制限修飾系でのメチル化
  • 大腸菌で増やしたDNA の制限酵素処理での注意
6.ホーミングエンドヌクレアーゼ
7.粘着末端を利用したDNA の連結
  • DNAの付着と連結
  • DNAリガーゼ反応の実際
  • 同一粘着末端をもたないDNA末端の連結方法
章末問題

5章 核酸の合成,分解,修飾酵素 68

1.DNA 合成酵素
  • 通常のDNA合成用DNAポリメラーゼ
  • クレノー断片
  • 特殊な用途で使われるDNA合成酵素
2.核酸分解酵素
  • 多様な核酸分解酵素
  • DNA に働くエンドヌクレアーゼ
  • DNA に働くエキソヌクレアーゼ
  • 一本鎖を特異的/ 優先的に分解するヌクレアーゼ
  • RNA を分解する酵素:リボヌクレアーゼ(RNase)
3.DNA の平滑末端化
4.末端リン酸基の脱着
  • リン酸基の脱着
  • リン酸基脱着反応を遺伝子操作の中で応用する
5.組換えDNA からのRNA 調製
章末問題

6章 プラスミド,ファージ,トランスポゾン

A.プラスミド
1.プラスミドの基本的な特徴
  • プラスミドの複製とコピー数
  • 不和合性
2.大腸菌のプラスミド
  • ColE1
  • R 因子
  • F 因子
3.その他のプラスミド
  • Ti プラスミド
  • 他の細菌プラスミド
  • 出芽酵母のプラスミド
B.大腸菌のファージ
4.ファージの種類と増殖
  • ファージとは
  • ファージに特徴的な性質
  • ファージの検出,定量:プラークアッセイ
5.λファージ
  • 増殖:溶菌サイクル
  • 溶原化サイクル
6.一本鎖ファージ:M13
  • 概要と増殖
  • 利便性
C.トランスポゾン
7.概要
8.DNA トランスポゾン
9.レトロトランスポゾン
章末問題

7章 ベクター ― DNA の導入,増幅,発現,組込みのツール

A.ベクターの基本
1.遺伝子組換え実験におけるベクター
  • ベクターとは
  • ベクターの種類と条件
  • クローニング
2.選択マーカー
  • マーカーの意義
  • 検出方法によるマーカーの分類
  • 汎用性の高いマーカー:GFP
3.ベクターの能力にかかわる機能性配列
  • マルチクローニング部位
  • 制御配列
B.原核生物のベクター
4.主な選択マーカー
  • 抗生物質に対する耐性遺伝子:薬剤耐性遺伝子
  • lacZ 遺伝子と青白選択
  • 致死マーカー
5.DNA 導入・増幅用の大腸菌プラスミドベクター
  • プラスミドベクターかファージベクターか?
  • プラスミドベクター用菌株
  • 古典的サブクローニング用ベクター
  • 多用途汎用ベクター
  • 特定の目的で使用されるベクター
6.遺伝子発現用の大腸菌プラスミドベクター
  • 遺伝子発現の基本戦略
  • 大腸菌内での発現の方策
7.大腸菌以外の細菌用プラスミドベクター
8.大腸菌用ファージベクター
  • λファージ系クローニングベクター
  • 発現可能なλファージクローニングベクター
  • M13 ファージベクター
9.混成プラスミドベクター
10.巨大DNA クローニング用ベクター
C.真核生物のベクターとマーカー
11.真核細胞中での発現制御系
  • 真核細胞内で働くプロモーター
  • 転写後シグナルと翻訳シグナル
12.真核細胞で利用されるマーカー
  • 薬剤耐性遺伝子
  • 代謝欠陥を補う遺伝子
  • 致死遺伝子
  • レポーター遺伝子
13.酵母・真菌のベクター
  • ベクターのタイプ
  • マーカー遺伝子
14.動物細胞用ウイルスベクター
  • レトロウイルスベクター
  • アデノウイルスベクター
  • その他の動物ウイルス
章末問題

8章 タンパク質産生制御系

1.発現ベクター
2.大腸菌でタンパク質をつくる場合のポイント
  • コドンの使用頻度に注意する
  • 不溶化防止策を執る
  • 発現させるタイミングを工夫する
3.融合タンパク質の作製
  • β - ガラクトシダーゼ(β -gal)融合タンパク質
  • タグ付きタンパク質とその精製
  • ファージディスプレイ
4.T7 RNA ポリメラーゼによる発現系
  • pET ベクター
  • 発現制御系:pET システム
5.真核生物でのタンパク質発現
  • ピキア発現系
  • バキュロウイルス発現系
  • テトラサイクリンによる発現制御系(Tetシステム)
6.遺伝子工学で使われるタンパク質分解酵素
章末問題

9章 組換えDNA の作製と細胞への導入

A.組換えDNA の作製
1.伝統的なサブクローニング
  • サブクローニングとは
  • DNA リガーゼによるベクターとDNA 断片の連結
2.新しい組換えDNA 構築法
  • TOPO クローニング
  • LIC 法
  • ゲートウェイクローニング
B.DNA 構築に関連する技術
3.オリゴヌクレオチド
4.部位特異的変異DNA の作製
  • トランスフォーマー法
  • 制限酵素Dpn Ⅰを使う方法
5.cDNA の合成
  • 真核生物mRNA の調製
  • cDNA の合成
C.細胞へのDNA 導入
6.DNA 導入の一般的方法
7.原核生物(大腸菌)へのDNA 導入
  • 形質転換とコンピテント細胞
  • ファージ感染
  • 目的クローンの決定
8.動物細胞へのDNA 導入
  • トランスフェクション
  • その他の物理的方法
  • ウイルスベクターを用いる方法
  • 細胞に入ったDNA の運命
9.植物細胞:Ti プラスミドDNA に基づく方法
章末問題

10章 DNA クローニング ―ライブラリーの作製とクローンの単離

A.伝統的なクローニング法
1.伝統的なDNA クローニングの概要
2.DNA ライブラリー:クローニングの材料
  • ファージベクターを使うか,プラスミドベクターを使うか
  • λファージを使ったDNA ライブラリーの作製
  • プラスミドを使ったDNA ライブラリーの作製
3.ゲノミックライブラリーの作製
  • ライブラリー作製の要点:DNAサイズを揃える
  • ハイブリダイゼーションによるクローンの選択
B.cDNA クローニング
4.cDNA ライブラリーの作製
  • ライブラリー作製の要点
  • 特異的クローン濃縮のためのサブトラクション
  • ディファレンシャルディスプレイ
5.cDNA クローンの選択
  • 結合性に基づく発現クローニング
  • 機能性クローニング
C.現在のクローニング事情
6.ゲノム情報とPCR を活用したクローニング
章末問題

第Ⅲ部 核酸の抽出・増幅・シークエンシング

11章 核酸の取り扱いと分離

1.核酸の物理化学的性質
  • DNA の性質
  • RNA の性質
2.DNA の調製
  • 細胞からのゲノムDNA の抽出
  • 細菌からのプラスミド抽出
  • DNA の精製
  • 核酸の濃度測定
3.RNA の扱い
4.核酸の濃縮
  • 核酸のエタノール沈殿
  • その他の濃縮法
5.ゲル電気泳動による核酸の分離
  • 通常ゲル(中性ゲル)による電気泳動
  • 変性ゲルによる電気泳動
  • ゲルの素材と形状
  • 特別な目的のための電気泳動
6.超遠心分離機による核酸の分離
  • ゾーン遠心分離法
  • 塩化セシウム平衡遠心分離法
  • 塩化セシウム-EtBr 平衡遠心法:形態によるDNA の分離
章末問題

12章 塩基配列の検出と解読

1.核酸のハイブリダイゼーション
  • ハイブリダイゼーションとは
  • Tm に影響を与える要因
  • ハイブリダイゼーションの実施条件
2.プローブの作製:DNA の標識
  • 放射性同位体(RI)とは
  • DNA をRI 標識する方法(A):DNA 合成による方法
  • DNA をRI 標識する方法(B):末端のリン酸標識による方法
  • RI を画像として検出する:オートラジオグラフィー
3.ハイブリダイゼーションによる核酸の検出法
  • サザンブロッティング
  • ノーザンブロッティング
  • in situ ハイブリダイゼーションとFISH
4.ジデオキシ法によるシークエンシング
  • 原理
  • 一本鎖DNA 鋳型の準備
  • 反応,電気泳動,検出
  • 現在までに改良された点(昔のものから順に)
5.DNA シークエンサー
  • ジデオキシ法に基づくシークエンサー
  • 次世代シークエンサー
6.バイオインフォマティクスを用いた塩基配列情報解析
  • バイオインフォマティクスとは
  • 必要な要素
章末問題

13章 PCR とその応用

1.PCR の原理
2.材料と反応条件
  • プライマーの設計
  • 耐熱性酵素の選択
  • 反応液とサイクルプログラム
  • ホットスタートPCR
  • 修飾温度サイクル
3.遺伝子工学におけるPCR の目的
  • DNA の検出,増幅,シークエンシング
  • RNA の検出
  • PCR 産物のサブクローニングへの使用
  • 塩基配列の付加や改変のための利用
  • DNA の多型解析,変異解析への応用
4.定量PCR
  • 定量PCR とは
  • リアルタイムPCR の原理
  • 発光系
章末問題

14章 遺伝子発現と遺伝子産物の解析

1.遺伝子の発現状態の解析
  • 検索の戦略:個々か全体か? 新規か既知か?
  • 特定のRNA の検出・解析・同定
  • タンパク質の検出・同定
2.細胞を使った遺伝子の機能解析
  • 導入遺伝子の一過的発現と安定的発現 
  • レポーターアッセイとその応用:転写系を利用した解析
  • 遺伝子ノックダウン法
3.試験管内反応による遺伝情報の発現
  • in vitro 転写
  • in vitro 翻訳
4.情報高分子間の相互作用解析
【A】タンパク質と核酸の相互作用の解析方法
  • 細胞を使う方法
  • in vitro 反応による方法
【B】タンパク質間相互作用の解析方法
  • 細胞を使う方法
  • 細胞抽出液を使う方法
  • タグ付きタンパク質を使う方法
  • ファーウエスタン法 
  • 結合タンパク質を網羅的に検索するさまざまな方法
  • それ以外の方法
章末問題

第Ⅳ部 遺伝子工学の応用

15章 遺伝子工学関連技術と医療における利用

1.タンパク質工学
  • タンパク質工学とは
  • タンパク質工学の利点
2.RNA 工学
  • RNA 工学とその利点
  • RNA による遺伝子機能の抑制
  • RNA の結合性の利用
  • RNA の触媒能の利用
3.細胞,組織,個体発生を操作する技術
  • 細胞工学
  • 発生工学
  • クローン動物
  • 組織工学とES 細胞,iPS 細胞
  • 再生医療
4.ゲノム工学
  • 遺伝子ターゲティング
  • トランスジェニック動物
  • 植物の遺伝子操作と遺伝子組換え食品
5.遺伝子治療
  • 遺伝子治療という選択肢
  • 対象となる疾患,遺伝子
  • 伝統的アプローチ
  • RNA を発現させる方策
6.ゲノム解析とテーラーメード医療
  • 遺伝子多型解析と遺伝子診断
  • テーラーメード医療
7.遺伝子工学と創薬
章末問題

16章 遺伝子操作の安全性と倫理

A.遺伝子組換え実験での安全確保
1.遺伝子組換え実験の自己規制
2.カルタヘナ法の成立
  • その後の経過
  • カルタヘナ議定書
3.遺伝子組換え生物の使用と実験の種類
  • 遺伝子組換え生物等(LMO)の使用形態と実験の申請
  • 機関承認実験と大臣確認実験
  • 実験分類
4.実験の種類と拡散防止措置
  • 実験の種類
  • 拡散防止措置
5.留意すること
B.遺伝子工学関連領域に関する倫理と安全性
6.遺伝子組換え食品の安全性
7.遺伝子情報や個人試料の管理と利用
8.ヒトを対象にする操作
  • 操作における倫理
  • 遺伝子治療の問題点
章末問題

Column

  • リンの代わりにヒ素を用いる細菌
  • RNA ワールド仮説
  • 制限修飾系は日本でも発見されていた
  • 逆転写酵素:その発見から普遍性へ
  • 抗生物質とペニシリン
  • 遺伝子工学の黎明期:日本では
  • 南西クローニング?
  • ヒトゲノム解読レースのもたらしたもの
  • 社会の中で使われているPCR
  • クローンヒツジ「ドリー」誕生の興奮とその顛末
書評・感想
  • 図表がカラーで判りやすく、スライド化されているので、講義の際に便利だった。基礎から応用まで幅広く解説されてあり、講義だけでは無く、卒業論文実験の参考書としても役立つ内容だった。章末に問題があるのが良かった。(公立大学講師)
  • 基本的な遺伝子工学について、イラスト付で書かれており非常にわかりやすいと思います。絵がgood。入門書として最適だと思います。索引も充実しており、楽に調べることができます。(私立大学助教)
  • 「実験書的な教科書」で非常にすばらしいと思いました。実験書はプロトコールが主体で、原理はあまり書いていないことが多く、本書はそれを補う意味で非常に役に立つと思います。研究室に配属されたばかりの学部4年生や修士1年生に最適と思います。また解説が丁寧でイラストが簡潔なのも気軽に開いて調べるのにいいと思います。(国立研究機関教授)
  • 図がとてもわかりやすく、また多く配置されており、初心者にもわかりやすい良書と思います。早速学生にも勧めました。(私立大学教授)
  • 歴史的なことも交え、興味深くまたわかりやすく書かれた優れた教科書である。一方で新しい内容・深い内容も含んでおりよい。また各章末問題はより深い理解を助ける役割も果たしうる。(国立大学教授)
  • 遺伝子操作の基礎技術と原理を網羅し、わかりやすく図解も交えて解説している好著。実際に研究室で遺伝子操作を行うには欠かせない遺伝子組換え実験の安全性ガイドラインについても図解で言及されている。遺伝子操作上で汎用する資料が付録されているところも好ましい。(県立大学教授)
  • 遺伝子工学は分子生物学、細胞生物学を履修する上で基礎となる知識だが、講義ではなかなかまとまった時間を割いて話すことができない。本書は、基礎的知識をまとめるのによい本だと思います。(私立大学教授)
  • 図や表、コラムが豊富に掲載されており、理解の助けになっている。また実際の研究における基礎的内容から発展的内容まで触れられている点も良く、入門書に適していると思う。(私立大学学部生)

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