実験医学 2005年2月号 Vol.23 No.3

疾患発症のシグナル伝達!

  • 秋山 徹/企画
  • 2005年01月20日発行
  • B5判
  • 119ページ
  • ISBN 978-4-89706-833-6
  • 1,980(本体1,800円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》細胞の増殖,分化,死などを制御するシグナル伝達経路の解明は驚異的なスピードで進んできた.さらに最近では,基礎的な生命現象の解明だけでなく,各臓器レベルでの解析や,癌をはじめとしたさまざまな疾病の発症メカニズムの解明も目を瞠る進歩を遂げている.本特集では,その中から,癌,骨代謝疾患,アルツハイマー病,自己免疫疾患,生活習慣病に関するシグナル伝達研究の話題を取り上げて紹介している.疾病発症にかかわるシグナル伝達研究の最前線の一端にふれてみていただきたい.

近年の急速な解析技術の進展によって、環境の変化に的確に応答し、生体の安定性を保つシグナル伝達機構が明らかになってきました。最近ではこのシグナル伝達機構の破綻から起こる、さまざまな疾患発症のメカニズム解明にも大きな注目が集まっています。そこで本特集では、癌,アルツハイマー病,生活習慣病,自己免疫疾患,骨形成疾患などの疾患発症にかかわるシグナル伝達に焦点を当て、そのメカニズムから、さらには創薬開発へとつながる新たな可能性に迫ります。

目次

特集

疾患発症のシグナル伝達!
癌,アルツハイマー病,生活習慣病,骨代謝疾患,自己免疫疾患の解明へのアプローチ
企画/秋山 徹
企画者の言葉【秋山 徹】
細胞の増殖,分化,死などを制御するシグナル伝達経路の解明は驚異的なスピードで進んできた.さらに最近では,基礎的な生命現象の解明だけでなく,各臓器レベルでの解析や,癌をはじめとしたさまざまな疾病の発症メカニズムの解明も目を瞠る進歩を遂げている.本特集では,その中から,癌,骨代謝疾患,アルツハイマー病,自己免疫疾患,生活習慣病に関するシグナル伝達研究の話題を取り上げて紹介している.疾病発症にかかわるシグナル伝達研究の最前線の一端にふれてみていただきたい.
癌と細胞周期を制御するシグナル伝達【鉄 治】
たった1つの遺伝子の発現を抑えたら癌が完全になくなってしまった.こんなことが現実に起きたらどんなに素晴らしいことだろう.仮にそのような遺伝子があるとすれば薬剤でその遺伝子産物の発現を抑えたり機能を欠失させることで癌を根治できるはずである.最近の研究でサイクリンD1にそんな夢物語を実現できる可能性があることがわかってきた.本稿では,癌で起こる遺伝子変異とそれによって引き起こされる増幅したシグナル伝達,そしてその結果過剰になって発現するサイクリンD1と発癌の関係について,大腸癌と乳癌を例に述べていく.
p53ファミリーシグナル伝達経路が司る細胞応答制御機構【井川俊太郎】
癌抑制遺伝子p53変異は,ヒト腫瘍の約半分で検出され,癌発生にかかわる数ある遺伝子のなかで最も注目される遺伝子である.このp53の癌抑制能は,ゲノム損傷性ストレスに応答して,転写活性を発揮し細胞の増殖停止,ゲノムの修復を誘導する.修復不能の場合には,セネッセンス,アポトーシスを誘導することで前癌細胞の拡大再生産を防ぐ.また,その類似遺伝子としてp73,p51/p63/p40/p73Lが相次いで報告され,p53ファミリーを形成することが判明してきた.さらに,最近の筆者の研究から,従来NF-κBを制御していると考えられていたIKKシグナルソームによるp53ファミリーシグナル経路の制御とp53シグナル経路の制御がカップルすることで,細胞応答(増殖停止,セネッセンス,アポトーシス)を決定していることが判明しつつある.このシグナルソームは,自然免疫,獲得免疫とも密接にかかわっていることが,従来から判明しており,p53ファミリーシグナル経路は,いわば,高等動物特有の幹細胞システム成立をも含む生体防御系の中心を担っているといっても過言ではない.
新規血小板凝集因子Aggrusと癌転移【藤田直也/加藤幸成/鶴尾 隆】
一般に高転移性癌細胞は高い血小板凝集活性をもつ.こうした血小板凝集は血行性転移における腫瘍塊の形成・腫瘍塞栓の形成に関与する.マウス高転移細胞株より同定されたAggrusは,細胞膜表面に発現している約44 kDの糖タンパク質である.機能部位解析により,血小板凝集には付加されている糖鎖が重要であること,また血小板凝集活性にかかわる糖鎖付加部位(PLAG domain)も同定されている.大腸癌や精巣腫瘍のセミノーマなどのヒト腫瘍でも,Aggrus発現が亢進していることが明らかになってきており,今後の癌転移治療法開発の際の分子標的として有望な分子であると考えられる.
高脂肪食による代謝変動とアディポネクチン【本田律子/門脇 孝】
病的な肥満では,脂肪細胞から分泌され全身の代謝に影響を及ぼす生理活性物質の分泌パターンが変化し,加えて脂肪細胞に蓄えられるべき過剰な脂質が,血中を経て諸臓器に取り込まれるため全身に種々の障害がおこる.過剰に摂取した栄養を体に害なく異化,あるいは害なく貯蔵することにより,欧米型生活習慣による健康被害を回避することが可能であろうか?脂肪細胞から分泌される生理活性物質の1つであるアディポネクチンの作用を活性化するとそれが可能となるかもしれない.
染色体構造調節因子複合体病としてのWilliams症候群【加藤茂明/藤木亮次/吉村公宏/北川浩史】
ビタミンDはカルシウム代謝調節主要因子であるが,その生理作用発現は核内ビタミンD受容体(VDR)を介した遺伝子発現調節により,発揮される.そのため,VDR欠損マウスではヒト家族性くる病II型同様に,成長障害を伴う骨形成不全と脱毛が観察される.われわれは,VDR機能を担う核内複合体群を同定する過程で,Williams症候群の責任遺伝子と考えられてきたWSTFを含む複合体を見出した.この複合体は,染色体構造調節因子複合体であったことから,この優性遺伝病は染色体構造調節因子複合体病のはじめて見出された例と思われる.
プレセニリンとシグナル伝達【林 幾雄/橋本唯史/岩坪 威】
家族性アルツハイマー病の病因遺伝子産物として同定された膜タンパク質・プレセニリンは,アルツハイマー病の病因タンパク質アミロイドβペプチドの切り出しを担うプロテアーゼ・γセクレターゼの触媒サブユニットとして作用する.プレセニリンの主な正常機能は,発生・分化にかかわるNotchシグナル伝達系活性化の最終段階を担う,細胞質ドメインの切り出し作用にある.これに加えて,Wntシグナル系におけるスキャフォルドタンパク質機能や細胞接着装置への関与などの非プロテアーゼ作用が見出され,プレセニリンの多機能性膜タンパク質としての側面が明らかになりつつある.
自己免疫疾患とシグナル伝達【吉村昭彦/白石裕二/高木宏美/小林隆志】
自己免疫疾患の多くは免疫寛容の破綻によって引き起こされる.また病態の進展には炎症性サイトカインの関与が大きい.自己免疫疾患は多因子病であり樹状細胞,T細胞,B細胞,マクロファージなどの個々の局面で多数のシグナル伝達経路の異常が関与する.例えばT細胞受容体やB細胞受容体シグナルの活性化異常,サイトカインの過剰産生,サイトカインシグナル制御因子の異常などが知られている.本稿ではよく研究されている3つの例をあげながらシグナルの異常と自己免疫疾患について解説する.

トピックス

カレントトピックス
匂い受容体の機能発現を制御する新規分子【斉藤治美】
ホヤにおける神経堤細胞に類似した細胞の同定【山本嘉幸/William R. Jeffery】
シロイヌナズナの根における幹細胞ニッチのパターン形成【相田光宏】
RNAiを介したヘテロクロマチン形成におけるRITS複合体の役割【野間健一】
News & Hot Paper Digest
mRNA合成を終わらせるメカニズムの発見【田村隆明】
ニューロンへの分化とエピジェネティクス【木青(あべ)松 昌彦】
ポリADPリボシル化酵素PARPによるクロマチン構造と転写活性の新規制御機構【神崎 展】
食塩の血圧に対する直接作用【西谷真人】

連載

クローズアップ実験法
段階的サブトラクション法【野島 博/恩田弘明】
私が名付けた遺伝子
第2回 macho-1【西田宏記】
アカンやないか! 失敗に強いバイオ研究者になるために
第6回 先生,そんなことしたらアカン!【野村慎太郎】
疾患解明Overview
第10回 関節リウマチの病因と病態の解析から新たな治療法の急展開【山本一彦】
ラボレポート−留学編−
カンガルー in オーストリア〜Research Institute of Molecular Pathology(IMP)/Institute of Molecular Biotechnology(IMBA),Austrian Academy of Sciences【鈴木-羽毛田 聡子】
学会・シンポジウム見聞録
12th International p53 workshop Dunedin, New Zealand【岩熊智雄】

関連情報

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  • 【本書名】実験医学:疾患発症のシグナル伝達!
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