クローズアップ実験法

2022年9月号 Vol.40 No.14 詳細ページ
ミクロとマクロを同時に観る! トランススケールスコープAMATERASの構築方法
市村垂生，垣塚太志，永井健治
350 ミクロとマクロを同時に観る! トランススケールスコープ AMATERASの構築方法 市村垂生,垣塚太志,永井健治 何ができるようになった? 従来の顕微鏡では不可能であった 1 cm を超える視野を有する細胞イメージングをμm オーダーの 空間分解能で実現した.105 ∼ 106 細胞を同時に観察し,その集団内に存在する稀少かつ重要な細胞 を発見できるようになった. 必要な機器・試薬・テクニックは? マシンビジョン用の超多画素 CMOS カメラとレンズ,LED 光源,フィルタ,電動ステージなどの 光学素子・機器.装置系の構築に高度な光学の専門性を必要としない. はじめに クロスケールの現象を同時に捉えることができる.わ 光学顕微鏡は,生命科学の基礎から応用まで幅広い れわれはこのようなイメージング装置を「トランスス 領域において,重要な研究ツールの一つである.特に, ケールスコープ」という新たなカテゴリーに分類した. 細胞や細胞集団の機能解明をめざす研究においては , 特に本稿で紹介するトランススケールスコープは「AMA- 蛍光顕微鏡による特定の分子のライブ観察はほぼ必須 TERAS1.0(A Multiscale/Multimodal Analytical な工程と言っても過言ではない.「より精細に」「より Tool for Every Rare Activity in Singularity Version 高速に」 「より深く」細胞を観たいといった要望に対し 1.0) 」と称している .その光学性能を生かして ,胚発 て,さまざまな蛍光イメージング技術が提案,開発さ 生,オルガノイド形成,病態の伝播などの基礎研究へ れ,課題解決に貢献してきた.その一方で, 「より広く の応用を進めている 2).その特異な光学性能と並んで, 観たい」という要望に対しては,現実的なよい選択肢 この装置の重要な特徴は ,他の先端広視野イメージン がなかった. グ装置 3)4)と比べて ,低コストで構築できることであ われわれはこのような状況を解消すべく,超広視野 1) る .構築に必要な光学素子やデバイスのほとんどが市 細胞イメージング法を開発してきた .1 cm を超える 販品であり ,しかも光学系がきわめてシンプルである 観察視野を得つつ 1 μm 程度の空間分解能で細胞ごと ため,金銭的コストと人的コストの両方を抑えられる. の動きを記録できるので,ミクロスケールの現象とマ 本稿では,この装置が生命科学分野の多くの研究室 How to build a trans-scale scope AMATERAS Taro Ichimura1)/Taishi Kakizuka 2)/Takeharu Nagai 1)2):Transdimensional Life Imaging Division, Institute for Open and , Transdisciplinary Research Initiatives, Osaka University1)/SANKEN(The Institute of Scientific and Industrial Research) (大阪大学先導的学際研究機構超次元ライフイメージング研究部門 1)/ 大阪大学産業科学研究所 2)) Osaka University 2) 2302 実験医学 Vol. 40 No. 14(9 月号)2022
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