「速報」では常に変更している科研費の制度に関して,本書の内容から更新された情報を児島先生に随時紹介していただきます.
すでにご存じの方も多いと思うが,本年度の科研費は,極めて異例なことに分割払いになった.また,東日本大震災の復興財源確保のために,場合によっては当初の交付額が減額される可能性もある.
6月30日付けの基盤研究(A・B),若手研究(A)の新規・継続課題及び特別推進研究,基盤研究(S・C),挑戦的萌芽研究,若手研究(S・B),研究活動スタート支援の継続課題,ならびに7月29日付けの基盤研究(C),挑戦的萌芽研究,若手研究(B)の新規採択課題(これらは基金化されたものである)について,次のように発表された.
『国の財政事情に鑑み,本年度は,全ての研究課題について分割払いを行うこととなります.まずは,各研究課題の交付決定額の一部(交付決定額の7割に相当する額)を支出する予定ですので,各研究機関におかれては,「平成23年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)の受領金額の送金請求について」を作成の上,提出願います.(学術振興会の発表より)』
このようにまずは科研費交付決定額の7割に相当する額が支出され,残りの3割分の支給日は未定である.これは国債発行のための「赤字国債法案」が成立しておらず,平成23年度の財源確保ができていないためである.従ってこの法案が成立すると残りの3割分も支給されると思われるが,東日本大震災の復興財源に国家予算をまわすため,場合によっては減額される可能性が示唆されている.
『また,平成23年3月11日に発生した東日本大震災により甚大な被害が生じたことから,今後の状況によっては財源確保の必要上,交付額の減額変更を行う可能性があります.この場合,各研究課題の交付する助成金の額は,今回の交付決定額にかかわらず減額されることとなりますので,当面,助成金の慎重な執行に留意してください.(学術振興会の発表より)』
このため研究者によっては,予定していた機器購入を延期したり,科研費で雇っている研究員の給与をどうするかなどの対応が必要となっている.
一昨年度の若手研究(S)と学術創成研究の突然の応募停止(実際には廃止),また基盤研究での最短研究期間の変更(2年から3年へ)など,事前の議論や予告もなく,突然に制度変更される例がこのところ続いている.研究者サイドの事情など全く考慮されないこれらの変更は,国にとって研究者の存在とはなんなのかなと思ってしまう.
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行