「速報」では常に変更している科研費の制度に関して,本書の内容から更新された情報を児島先生に随時紹介していただきます.
平成24年度の予算案が発表され,科研費においては新たに「基盤研究(B)」と「若手研究(A)」について,基金化が導入されることになった.この2種目においては新規採択課題分についてのみ基金化されるが,その内容は変則的である.
「基盤研究(B)」と「若手研究(A)」の基金化は,研究費総額のうち500万円相当を基金から,残りを補助金から助成することになる.つまり1つの採択課題に,基金分と補助金分の両方があるということである.基金分の500万円については,研究期間内で手続きなく自由に繰越できるし,また翌年度以降の研究費分を前倒しして使用することが可能になる.補助金分は従来と同じく,簡単な手続きで繰り越しが可能になる(図).ただし,現在のところ,どのように事務処理されるのかは不明である.
このように平成23年度に基金化された「基盤研究(C)」「挑戦的萌芽研究」「若手研究(B)」に比べて,完全な基金化ではないが,年度ごとの研究費の制約が大幅に減ったことは間違いない.これにより,基金対象種目は5種目に拡大し,新規採択の9割近くを占めることになった.
一方,科研費の総額は256,610百万円と,平成23年度予算に比べると総額では減少しているが,これは「基盤研究(C)」「挑戦的萌芽研究」「若手研究(B)」の基金化によって,すでに昨年度に研究期間全体での研究費が,一括して基金に組み入れられていたためである.つまり昨年採択されたこれらの研究種目の今年度(と来年度以降の)分がすでに昨年度の予算に組み入れられているので,今年度は新規採択の基金化分しか必要でなく,そのため総額が減ったのだ.しかし研究者に配分される研究費は対前年度比約103億円(約5%)増になる.
このように平成24年度の科研費は,厳しい財政状況のなかでも,少なくとも配分額は昨年度よりも増加する.採択率がどのようになるのか,4月の発表が楽しみである.
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行