「速報」では常に変更している科研費の制度に関して,本書の内容から更新された情報を児島先生に随時紹介していただきます.
若手研究者にとって科研費で機器を購入するのは大変だ.近年,非常に高額な実験装置が販売され,その機器の購入が研究の成否をわけることもある.次世代(次次世代?)シークエンサーなどはその最たる例だろう.しかし現実問題として,科研費では特別推進研究などの一部の種目を除いて,基盤研究(B), (C)や若手研究では高額な実験装置を購入することなど不可能だった.昨年,若手研究(B)や基盤研究(C)などは基金化されて研究費を年度を超えて使用できるため,これまでよりも高価な機器を購入しやすくなった.それでも研究費の総額は300万円足らずであるため,購入できる機器には限度があった.
それが平成24年度から複数の科研費を合算して共用設備を購入することが可能になったことで,もっと高額の機器をも購入することが可能となった.「共用設備」とは実験装置や研究機材などである.
これは画期的な改革である!
2つ以上の科研費や,科研費と運営交付金,あるいは科研費と寄付金などを合算して,共用設備を購入することができるのだ.2つ以上の科研費とは,同一研究者の科研費だけでなく,同じ研究機関に属する別の研究者の科研費とも合算して購入可能である.しかし購入できるものはあくまでも,科研費の研究目的に沿った必要な設備の購入に限られるのは言うまでもない.
合算使用に関しては日本学術振興会の科研費ホームページ「科研費FAQ」の「4.科研費の使用について」のところに詳しく説明されてある.
このように科研費の繰り越し手続きの簡素化や,科研費の基金化,そしてこの合算使用による共用設備の購入など,ここ数年で急激に科研費は使いやすいように変化している.
科研費のまだ実現されていない大きな改革には,このあとなにがあるだろう.個人的には現在の1年に1回の応募でなく,1年間に2~3回の複数回の応募ができないものだろうかと思う.
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行