「速報」では常に変更している科研費の制度に関して,本書の内容から更新された情報を児島先生に随時紹介していただきます.
例年のように9月1日から平成28年度の科研費(科学研究費助成事業)応募がはじまった.今年度は制度上で大きな変更はないが,主な変更点は次の5つである.
「特設分野研究」は「最新の学術動向等を踏まえて,新しい学術の芽を出そうとする試み」のために,「現行の細目では審査が困難と思われる研究課題で,特設分野に関連する幅広い視点から審査される」ものである.平成26年度に設定された「ネオ・ジェロントロジー」「連携探索型数理科学」「食料循環研究」,平成27年度に設定された「紛争研究」「遷移状態制御」「構成的システム生物学」に加え,平成28年度には「グローバル・スタディーズ」「人工物システムの強化」「複雑系疾病論」の3分野が新たに設定された.分野の設定は5年間で,募集は分野設定年度から3年間に限られる.採択予定課題数は分野ごとに30件程度である.
「特設分野研究」は基盤研究(S, A, B, C),若手研究(A, B),挑戦的萌芽研究と重複して応募できるので,この「特設分野研究」に関連した研究を行っている方は,ぜひトライして欲しい.
細目「社会システム工学・安全システム」と細目「言語学」のキーワードの一部が見直された.
理工系に「環境学A」,生物系に「環境学B」が新たに設けられ,また「人文学D」と「工学B」について,その応募内容が明確化された.
先日の速報で紹介したように,「国際共同研究加速基金」が開始され,そのなかで「国際活動支援班」が設置されたが,新規の研究領域の構成に「国際活動支援班」を含めて応募することが可能となった.
すでに多くの大学や研究機関で,研究倫理教育の講習会やe-ラーニングなどでの受講が行われているだろうが,公募要領をよく読んで適切に対応して欲しい.
拙著を参考にして申請書作成に十分に時間をかけ,ぜひ来年の春に採択されるように期待しています.
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行