「速報」では常に変更している科研費の制度に関して,本書の内容から更新された情報を児島先生に随時紹介していただきます.
平成29年8月7日に来年度からの新しい研究計画調書(申請書)が公開された.ただし「暫定版」とのことなので,このあと変更があるのかもしれない.
その概略をみていこう.
6月の科研費説明会で公表されていたように,罫線と枠線がなくなった.罫線は概要部分の区切りのところに,枠線は各ページの記入する部分にあったものが削除された.これによって文章を記入できる部分が拡大したが,上下左右にはある程度の余白を設けるなど審査委員の読みやすさを考慮した書き方をすることが望ましい.
トップページはこれまでのものと同じである.ただし応募分野の細目の代わりに「小区分〜大区分」となっている.次に研究組織を記入するページがある.この表紙と研究組織がWeb入力であるのは,従来と同じである.
従来の申請書と比べると,この部分と次の「2 本研究の着想に至った経緯など」の部分の変更が大きい.
来年度からの研究計画調書において「1 研究目的、研究方法など」が基盤研究(B, C)と若手研究では3ページ,基盤研究(A)では4ページ,基盤研究(S)では5ページとなっている.基盤研究(C)と若手研究ではこれまでの申請書より1ページ減ったことになる.
「冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し」とこれまでと同様に「概要」を書くが,従来の申請書の概要部分のスペース(そのままだと約8行書ける)よりも少し広がって,「10行程度で記述してください」となっている.
そのあとは本文だが,ここには「(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」を,「具体的かつ明確に記述」するように求められている.
また研究代表者と研究分担者の役割についても記述する.
この欄には「(1)本研究の着想に至った経緯、(2)関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ、(3)これまでの研究活動、(4)準備状況と実行可能性」について記述する.基盤研究(C)と若手研究ではここが1ページ以内,基盤研究(S, A, B)では2ページ以内となっている.従来の申請書では(1)〜(4)は別々の部分にあったが,これらをまとめて書くように変更になった.
ただし,書く側の立場としては,「(1)本研究の着想に至った経緯、(2)関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」はこの研究計画の「背景」として重要な部分なので,「1 研究目的、研究方法など」のなかでも少し書いておくべきだ.少々重複することになるが,「本研究の着想に至った経緯」が書いてあったほうが「研究目的」が理解しやすくなる.
これまでの申請書と同じく「論文、著書、産業財産権、招待講演のうち重要なもの」を選んで記載するようになっているが,異なっているのは,
最も大きな変更点は①である.最近の論文発表までの時間スパンが長くなっていることを配慮しての変更なのだろうか?
これまでの申請書とほぼ同じ.
今回から,この部分はWebで入力できるようになった.
以上が新しい研究計画調書の概要である.
実際に作成していくうえで難しいのは「1 研究目的、研究方法など」の記入内容のバランスだろう.枠線のない今回の書式の場合,フォントを11ポイントにして,行間を15ポイントで記入していくと,1ページに約45〜48行入る.これは従来のものとほとんど変わらない行数だ.研究方法「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」については少なくとも1ページ半のスペースが必要であり(もう少し必要か?),研究体制については5〜8行くらいで記入する.最初の「研究の概要」を10行で書くとすると,残りは約1ページで,このスペースに「(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性」を書いていくことになる.
いずれにしても枠線・罫線がなくても,書くべき内容をきちんと書いていくなら恐れることはない.独自にいろいろと工夫して,最高の申請書を作成して欲しい.