【速報】平成30年度公募用の新しい研究計画調書(申請書)<sub>(2017.08.09掲載)

「速報」では常に変更している科研費の制度に関して,本書の内容から更新された情報を児島先生に随時紹介していただきます.

【速報】
平成30年度公募用の新しい研究計画調書(申請書)(2017.08.09掲載)

平成29年8月7日に来年度からの新しい研究計画調書(申請書)が公開された.ただし「暫定版」とのことなので,このあと変更があるのかもしれない.

その概略をみていこう.

1.罫線と枠線の削除

6月の科研費説明会で公表されていたように,罫線と枠線がなくなった.罫線は概要部分の区切りのところに,枠線は各ページの記入する部分にあったものが削除された.これによって文章を記入できる部分が拡大したが,上下左右にはある程度の余白を設けるなど審査委員の読みやすさを考慮した書き方をすることが望ましい.

2.トップページと研究組織

トップページはこれまでのものと同じである.ただし応募分野の細目の代わりに「小区分〜大区分」となっている.次に研究組織を記入するページがある.この表紙と研究組織がWeb入力であるのは,従来と同じである.

3.「1 研究目的、研究方法など」

従来の申請書と比べると,この部分と次の「2 本研究の着想に至った経緯など」の部分の変更が大きい.

来年度からの研究計画調書において「1 研究目的、研究方法など」が基盤研究(B, C)と若手研究では3ページ,基盤研究(A)では4ページ,基盤研究(S)では5ページとなっている.基盤研究(C)と若手研究ではこれまでの申請書より1ページ減ったことになる.

「冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し」とこれまでと同様に「概要」を書くが,従来の申請書の概要部分のスペース(そのままだと約8行書ける)よりも少し広がって,「10行程度で記述してください」となっている.

そのあとは本文だが,ここには「(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」を,「具体的かつ明確に記述」するように求められている.

また研究代表者と研究分担者の役割についても記述する.

4.「2 本研究の着想に至った経緯など」

この欄には「(1)本研究の着想に至った経緯、(2)関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ、(3)これまでの研究活動、(4)準備状況と実行可能性」について記述する.基盤研究(C)と若手研究ではここが1ページ以内,基盤研究(S, A, B)では2ページ以内となっている.従来の申請書では(1)〜(4)は別々の部分にあったが,これらをまとめて書くように変更になった.

ただし,書く側の立場としては,「(1)本研究の着想に至った経緯、(2)関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」はこの研究計画の「背景」として重要な部分なので,「1 研究目的、研究方法など」のなかでも少し書いておくべきだ.少々重複することになるが,「本研究の着想に至った経緯」が書いてあったほうが「研究目的」が理解しやすくなる.

5.「3 研究代表者および研究分担者の研究業績」

これまでの申請書と同じく「論文、著書、産業財産権、招待講演のうち重要なもの」を選んで記載するようになっているが,異なっているのは,

  1. これまでは過去5年間の業績を中心に,それ以前のものを10件まで記載できていたが,新しい申請書では制限がなくなって,申請者がこれまでに発表してきた業績を自由に記載できるようになった.
  2. 記載するのは研究代表者と研究分担者の業績だけで,連携研究者のものは記載しない.
  3. 現在もしくは過去から発表年次の順に,通し番号を付けて2ページ以内で記入する〔基盤研究(A, B, C)と若手研究.基盤研究(S)では研究代表者と研究分担者それぞれが2ページ以内〕.

最も大きな変更点は①である.最近の論文発表までの時間スパンが長くなっていることを配慮しての変更なのだろうか?

6.「4 人権の保護及び法令等の遵守への対応」および「5 研究計画最終年度前年度応募を行う場合の記述事項」

これまでの申請書とほぼ同じ.

7.「研究経費とその必要性」「研究費の応募・受入等の状況」

今回から,この部分はWebで入力できるようになった.

以上が新しい研究計画調書の概要である.

実際に作成していくうえで難しいのは「1 研究目的、研究方法など」の記入内容のバランスだろう.枠線のない今回の書式の場合,フォントを11ポイントにして,行間を15ポイントで記入していくと,1ページに約45〜48行入る.これは従来のものとほとんど変わらない行数だ.研究方法「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」については少なくとも1ページ半のスペースが必要であり(もう少し必要か?),研究体制については5〜8行くらいで記入する.最初の「研究の概要」を10行で書くとすると,残りは約1ページで,このスペースに「(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性」を書いていくことになる.

いずれにしても枠線・罫線がなくても,書くべき内容をきちんと書いていくなら恐れることはない.独自にいろいろと工夫して,最高の申請書を作成して欲しい.

参考情報

本書関連項目

  • 3章-1.申請書を書く前の注意点「平成30年度の公募から使用される新しい申請書フォーマット」(P91)
「科研費審査システム改革2018」に対応した最新版!
科研費獲得の方法とコツ 改訂第5版

科研費獲得の方法とコツ 改訂第5版
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2017年8月発行

プロフィール

児島 将康先生 写真
児島 将康(Masayasu Kojima)
’88年,宮崎医科大学大学院博士課程修了(医学博士).日本学術振興会特別研究員を経て,’93年,国立循環器病センター研究所生化学部室員,’95年より同室長.’01年より久留米大学分子生命科学研究所遺伝情報研究部門教授.研究テーマと抱負:研究テーマは生理活性ペプチドの探索と機能解明.グレリンを中心とした摂食・代謝調節の研究.残り少なくなった未知の生理活性ペプチドを1つでも発見して,グレリンのときのような興奮を味わいたい.
趣味:クラシック音楽.最近のお気に入りはHugo Wolf の歌曲.
座右の銘:師匠の松尾先生から受け継いだ言葉“Hitch your wagon to a Star!”高い望みを抱き,理想に燃えよ!
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