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細胞死

さいぼうし

細胞死とは,細胞がその生理機能を失い生命としての活動を停止している状態のことである.細胞死は,細胞生物学的および分子機構的特性に基づいて,内的/外的アポトーシス,ミトコンドリア透過性転移(MPT),誘導性ネクローシス,ネクローシス,フェロトーシス,ピロトーシス,パータナトス,エントーシス細胞死,NETotic cell death(NET:neutrophil extracellular traps),リソソーム依存性細胞死,オートファジー依存性細胞死,免疫原性細胞死など,多様なカテゴリに分類される.これらの細胞死は,通常の発生や器官の維持だけでなく,病態時にも起こる.結果として産生される死んだ細胞の残存物は,機能を消失したミトコンドリアやDNAの断片など強力な炎症起因物質を含むものであり,個体にとっては不必要な産物である.そのため,アポトーシスなどの過程では,マクロファージや近接する細胞によって,エフェロサイトーシスとよばれる貪食メカニズムにより迅速に除去される.逆に,この除去メカニズムが機能しない場合,死んだ細胞から漏れ出したさまざまな細胞内成分によって,組織の炎症が引き起こされるリスクがある.このように,通常,細胞死は,細胞死後は機能を終え,残存する細胞破片は生物個体にとって不要である.しかし,表皮の顆粒層細胞における細胞死は,死んだ細胞が角層細胞となり,機能的な生体バリアーの役割を果たす特異な例である.(実験医学2023年9月号より)

哺乳類の皮膚表皮バリア形成にかかわったEVEの外適応実験医学2023年9月号

解説は発行当時の掲載内容に基づくものです

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