「実験医学」2020年5月号(4月20日発行)では,京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸先生,東海大学医学部分子生命科学の中川 草先生に,新型コロナウイルスSARS-CoV-2の最新の科学的知見につき特別記事をご執筆いただきました.日々新たな論文(プレプリントを含む)が発表されるなか,私たち編集部も一刻も早く情報をお届けすべきと考え,このたび掲載号発行に先んじてWebにて記事を先行公開いたします.
(編集部)
今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,2020年3月11日にWHOによりパンデミック(国際的大流行)として認定された.これまでに,インフルエンザ,AIDS,結核,マラリア,コレラなどがパンデミックを引き起こしているが,今回のCOVID-19による社会的インパクトは非常に大きい.近年では,エボラウイルス,ラッサウイルス,SARSウイルス,MERSウイルス,ジカウイルスなどによるアウトブレイクが発生し,パンデミックの危機が生じた.これらのウイルスに共通する特徴は,本来の宿主を動物とする人獣共通感染症であること,RNAウイルスであることである.しかし,同じ動物由来のRNAウイルスだとしても,それぞれのウイルスの性質は大きく異なる.本総説では,比較ウイルス学的見地からのコロナウイルスの基礎知識,ならびに本稿脱稿時点(2020年3月16日)のデータ・出版物(プレプリント論文やプレスリリースを含む)に基づき,シークエンスデータから分かることを中心に,研究成果を概括する.