本インタビューは2015年2月に行われ,実験医学2015年4月号に掲載されたものです.
2013年より “日本版NIH”の仮称のもとで検討が進められていた新たな独立行政法人「日本医療研究開発機構(AMED)」が,本年4月に設立となります.政府が掲げる「日本再興戦略」の柱として,同機構が担う創薬や医療機器開発における司令塔機能が期待されています.構想段階では,その仮称のため「米国NIHをモデルにした新機構」と表現されることもありましたが,政府発表資料によると,AMEDはむしろ日本独自のシステムを目指す機構だということが次第にわかってきました.
一方で,まだまだAMEDに関する情報は少なく,「そもそもAMEDとは何なのか?」「誰がどのように運営してゆくのか?」「研究費システムが変わってしまうのか?」といった疑問をお持ちの方も多いことと思います.そこで本インタビューでは,AMEDの初代理事長に就任予定の末松誠先生(現・慶應義塾大学医学部長)に,その全体像を語っていただきました.設立直前ということもあり現時点でお話しいただける範囲ではございますが,末松先生が描く新しい研究システムを,読者の皆さまと共有できましたら幸いです.(編集部)
―この4月からAMEDの初代理事長に就任予定と伺いました.AMEDは今どのような状況なのでしょうか.
現在(2015年2月時点)はまだAMEDという組織実体はなく,私を含めた48 人の職員からなる「AMED設立準備室」が発足準備にあたっています.正式な設立はこの4月を予定しています.
そのため私はまだ“理事長予定者”という立場ではあるのですが,本日はAMEDの概要と,4月以降,私が実現したいと思っていることを話させていただければと思います.
—ありがとうございます.早速ですが,そもそもAMEDとはどのような組織なのでしょうか?
もしかすると“日本版NIH”という名称でご存知の方が多いかと思いますが,2013年4月に政府主導で検討がスタートした独立行政法人です.正式名称は日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development)といい,英名の頭文字をとってAMEDと呼ばれています.わが国における医療研究開発,つまり薬や医療機器の開発を支援するファンディング・エージェンシー※1として設立されます.その一番のミッションは,「患者さんへ一刻も早く,薬や医療機器をお届けする」というものです.
―AMEDは,具体的にどのような組織体制で運営されるのでしょうか.
AMEDは内閣に設置された健康・医療戦略推進本部の意を受けて,文科省・厚労省・経産省からの補助金をもとに研究予算の管理・配分を行います.それらの実働を担うAMEDの事業部門は大きく6つのセクションに分かれていて,それぞれ「戦略推進部」,「産学連携部」,「国際事業部」,「バイオバンク事業部」,「臨床研究・治験基盤事業部」,「創薬支援戦略部」という名称がつけられています(図1).
この中で,AMEDが支援する研究の方向性を決定するのが7つの基幹プロジェクトを有する戦略推進部です.現在「医薬品」「再生医療」「がん」「脳と心」「難病」「感染症」「研究企画」がAMEDの基幹プロジェクトとして決定し,すでに政府による中長期目標なども審議されています.それぞれのプロジェクトでは,基礎研究から実用化までのシームレスな支援を目指します.
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