実験医学 2012年10月号 Vol.30 No.16

神経科学新章!

脳疾患のバイオマーカーとオプトジェネティクス

  • 岡澤 均/企画
  • 2012年09月20日発行
  • B5判
  • 131ページ
  • ISBN 978-4-7581-0088-5
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

神経変性疾患の病態は大筋が解明され治療研究(トランスレーショナルリサーチ)の段階に入ったと言われている.しかし,モデル動物を用いた研究で築いてきたさまざまな仮説がヒトにおいて真に正しいかどうかは今後明らかになることであり,確認された病態に立脚した方法のみが有効な治療につながるだろう.この意味で,近年の種々の解析技術の進歩で注目されているバイオマーカーは,治療有効性のメルクマールであるとともに病態理解のうえでもきわめて重要である.一方,オプトジェネティクスは時空間的に極小な場での神経細胞刺激をin vivoで可能にする技術であり,脳機能の解析のみならず治療応用への可能性も含んでいる.脳の基礎・疾患研究は技術革新によって新たな局面を迎えている.

脳神経のブラックボックスを照らしだし,先制医療を目指すフロントラインをご紹介! バイオマーカーから明かされる神経変性疾患の発症機構と,光で特異的にニューロンを操作するオプトジェネティクスの技術.

目次

特集

神経科学新章!
脳疾患のバイオマーカーとオプトジェネティクス
企画/岡澤 均
技術革新による神経科学の新潮流【岡澤 均】
神経変性疾患の病態は大筋が解明され治療研究(トランスレーショナルリサーチ)の段階に入ったと言われている.しかし,モデル動物を用いた研究で築いてきたさまざまな仮説がヒトにおいて真に正しいかどうかは今後明らかになることであり,確認された病態に立脚した方法のみが有効な治療につながるだろう.この意味で,近年の種々の解析技術の進歩で注目されているバイオマーカーは,治療有効性のメルクマールであるとともに病態理解のうえでもきわめて重要である.一方,オプトジェネティクスは時空間的に極小な場での神経細胞刺激をin vivoで可能にする技術であり,脳機能の解析のみならず治療応用への可能性も含んでいる.脳の基礎・疾患研究は技術革新によって新たな局面を迎えている.
■第1部
アルツハイマー病バイオマーカーとしてのAβ【角田伸人/井原康夫】
アルツハイマー病は,認知症の60~70%以上を占めており,長寿国であるわが国をはじめ,世界各国で早急な対応が求められている.早期発見および適切な治療を早期に行うため,統一した診断基準の作成プロジェクトであるADNI(アルツハイマー病脳画像診断先導的研究)が世界各地で開始された.日本でもJ-ADNIプロジェクトが進められ,その成果とりまとめの時期となった.そのなかで髄液のアミロイドβタンパク質(Aβ)を再解析して,新たにわかった,孤発性アルツハイマー病患者におけるAβ産生の変化およびバイオマーカーについて紹介する.
アルツハイマー病Aβ42産生の異常を捉えるバイオマーカー【大河内正康/田上真次/柳田寛太/武田雅俊】
もの忘れや失見当識といったアルツハイマー病の初期症状が出現したときには脳内の病理変化は相当進んでしまっている.患者の脳内にはAβ42の沈着,次いでリン酸化タウなどの蓄積,さらに進んで神経細胞脱落が認められる.近年,臨床症状が出現する前にAβ42やリン酸化タウなどの蓄積を検出し,早期治療介入を目指す試みがなされている.しかし早期治療介入の多くはAβ42産生抑制を標的としているため,Aβ42が沈着しはじめる前に投与開始することが理想的である.われわれはAβ42産生の異常を予測できる可能性がある新規バイオマーカー候補を脳内に発見し,現在その開発を進めている.
α-シヌクレインを中心としたパーキンソン病研究の現状と課題【西岡健弥/服部信孝】
α-シヌクレインとレビー小体はパーキンソン病の主要なバイオマーカーである.これらの物質の分子生物学的な病態解明が,疾患の病態理解ならびに新たな治療法開発への一助となっている.本稿では最近の知見について包括的に記載する.
筋萎縮性側索硬化症のバイオマーカー研究【井口洋平/祖父江 元】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の約90%は孤発性でありその原因は特定できていない.現在ALS診断は神経学的診察や電気生理学的検査によって行われているが,発症初期には診断が困難なことも多く病態を客観的に反映したバイオマーカーの開発が待たれている.近年のALSの病態研究の進歩とともに,疾患関連分子をバイオマーカーとして活用する試みや網羅的な解析から有力なバイオマーカーの候補も登場してきている.
ハンチントン病のバイオマーカー研究【田川一彦/岡澤 均】
ハンチントン病におけるバイオマーカー研究を概説した.以下に述べるように,そのほとんどは発表後の追試で十分な信頼性を得ていない.このなかで,2011年に報告されたH2AFYはヒトにおいて期待をもてるマーカーである.その機能はDNA高次構造の変換と転写制御であり,ハンチントン病のDNA損傷修復仮説および転写障害仮説とよく対応している.
脆弱X症候群と脆弱X関連疾患におけるバイオマーカー【Randi Hagerman/Paul Hagerman/Flora Tassone】
FXS(脆弱X症候群)は,遺伝性知的障害ならびに遺伝性の自閉症のなかで最も多く,FMR1遺伝子の完全変異(>200 GCCくり返し)によって発症する.FXSの臨床症状は非常に幅が広く,FMRP(脆弱X精神遅滞タンパク質)がバイオマーカーとなり,認知障害や身体症状の重症度と関連する.FXSでは,S6KなどmTOR経路の下流のタンパク質が過剰に産生される.これらのタンパク質は,FXSの治療法であるmGluR5拮抗薬で変化し,治療のバイオマーカーとなる.MMP9もFXSで上昇しており,別の治療法であるミノサイクリンで低下させることができる.前変異(55~200 CGGくり返し)はFMR1mRNAを上昇させ,神経細胞や神経膠細胞に障害をもたらし,FXTASやFXPOIの病型をひき起こす.
■第2部
オプトジェネティクスのための多点並列光刺激システム【八尾 寛/酒井誠一郎/上野賢一/石塚 徹】
光と温度によるショウジョウバエ神経の分子遺伝学的操作【伊藤 啓】
オプトジェネティックツールを用いたゼブラフィッシュ運動系神経回路の解析【東島眞一/木村有希子】
線虫を用いたオプトジェネティクス研究【塚田祐基/森 郁恵】
オプトジェネティクスを用いた病態解明【橋本唯史/岩坪 威】

トピックス

カレントトピックス
AKT経路の情報多重化によるインスリン作用の時間情報コード【久保田浩行/黒田真也】
肝細胞の肥大と特殊な細胞分裂が肝臓の再生を担う【宮岡佑一郎/宮島 篤】
非コードRNAが相同染色体の相互認識を担う【丁 大橋/平岡 泰】
新しい核―細胞質間運搬体分子 “Hikeshi” の同定【小瀬真吾/今本尚子】
Nanogのアレリック発現による多能性の制御【宮成悠介】
News & Hot Paper Digest
アストロサイト由来のglypicansと中枢神経ネットワークの構築【神崎 展】
食道上皮幹細胞:温故知新で解き明かす「眠らぬ森の美女」【妹尾 誠】
インフルエンザウイルスの未知ORF の発見【富井健太郎】
古代人類ゲノム塩基配列決定ラッシュ【太田博樹】
医薬品特許の存続期間延長に関する動き【阿部誠二/早乙女周子】

連載

クローズアップ実験法
RNaseの豊富な組織からのRNA抽出のコツ【三田村圭祐/田川陽一】
【最終回】誌上留学! ―ラボ英会話のKEY POINTS >>> Web留学編へ
ジョブ・インタビュー-―夢を語る【浦野文彦/Christine Oslowski/Marjorie Whittaker】
【最終回】ヒトの病気に潜む進化の記憶を探る 進化医学
急ぎすぎた脳の進化? ~社会脳と心の病【井村裕夫】
私のメンター ~受け継がれる研究の心~
Junying Yuan ―柔らかな発想で細胞死研究を牽引するリーダー【三浦正幸】
ラボレポート ―留学編―
ドイツで研究ってどんな感じ!? ―Zentrum fuer Molekulare Biologie der Universitaet Heidelberg【小口友樹】
Opinion ―研究の現場から
若手研究者が新しい研究を立ち上げるとき 【三浦恭子】

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