Neuroimmunology(神経免疫学)の最新知見をご紹介.感覚刺激により免疫細胞がBBBを越えて中枢神経系に作用する機構,脳内炎症を抑制する新しいグリア細胞の発見など,最注目されるトピックを網羅
目次
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特集
「病は気から」の謎に迫る Neuroimmunology
ストレス・痛み・神経疾患と炎症・免疫反応のクロストーク
企画/井上 誠
神経免疫やNeuroimmunologyという言葉を最近よく耳にする,目にするという人もおられるのではないだろうか? 神経免疫は神経系と免疫系の密接な相互作用を紐解く分野であるが,近年,この両者の相互作用解析により,神経変性疾患や免疫性疾患の病態形成機構が明らかとなりつつある.また,私たちが経験的に感じていた「病は気から」の科学的根拠も明らかになってきた.近年,急速に発展している神経免疫分野は,さらに他の分野と融合することでますます発展しうる.本特集が神経免疫分野を広く浸透させ,他の分野との融合のきっかけとなってくれればありがたい.
中枢神経系(CNS)の血管には特別な構造,血液脳関門が存在し,免疫細胞や高分子の侵入を制限してCNSの恒常性を維持している.しかし,CNSでも免疫細胞が少数であるが存在している.これら免疫細胞が特異的な侵入口(ゲート)を介してCNSに侵入するのか否かは最近まで明らかではなかった.われわれは,多発性硬化症のマウスモデルを用いて,血液脳関門に特異的ゲートがあることを証明し,その形成機構を「ゲートウェイ反射」として報告している.またその分子基盤として血管内皮細胞におけるケモカイン大量発現機構「炎症回路」を明らかにした.本稿では,主にゲートウェイ反射の観点から神経-免疫相互作用とCNS病態に関して議論する.
脳や脊髄が障害されると,感染症のリスクが高まる.その要因の1つとして,免疫機能の低下が指摘されている.神経系による免疫の制御機構が明らかになるにつれ,脳や脊髄の障害により神経–免疫システムに異常が起こり,免疫機能の抑制や感染症の増大につながることがわかってきた.本稿では,臨床と基礎研究の両面から,これらの事象とメカニズムについて概説する.神経系を制御して免疫機能を改善できれば,脳脊髄の障害によって起こる感染症の新たな治療標的となるかもしれない.
脳や脊髄が障害されると,感染症のリスクが高まる.その要因の1つとして,免疫機能の低下が指摘されている.神経系による免疫の制御機構が明らかになるにつれ,脳や脊髄の障害により神経–免疫システムに異常が起こり,免疫機能の抑制や感染症の増大につながることがわかってきた.本稿では,臨床と基礎研究の両面から,これらの事象とメカニズムについて概説する.神経系を制御して免疫機能を改善できれば,脳脊髄の障害によって起こる感染症の新たな治療標的となるかもしれない.
免疫システムはさまざまな病態時に末梢ならびに中枢神経機能を制御する.そしてこの神経機能制御にかかわる免疫システムは状況に応じて変化する.この“状況”としてはさまざまあるが,病原体感染,身体的・精神的ストレス,老化,および性差を生み出す性ステロイドホルモンのバランス変化などがあげられる.ヒトでは常にこれらの状況因子がかかわることから,これらの状況因子が加わることで,免疫依存的な神経変性病態が大きく影響を受け,病気の性質や持続性,および薬物感受性が変化しうる.近年,状況変化に伴う免疫システム変調を考慮することが,病態形成機構の解明と,適切な治療方針の樹立に当たり重要視されてきている.本稿では状況に応じた免疫システム変調による神経機能制御について解説する.
自閉スペクトラム症(ASD)は先天的な小児発達障害である.ASD患者では,神経回路の機能不全がもたらす高次脳機能障害とともに,免疫系の異常もみられることが多い.近年,妊娠期のウイルス感染などで母体の免疫機能が活性化することによる炎症性サイトカインの発現亢進が,胎児の脳形成に影響を及ぼし,生後の自閉的行動を惹起することが明らかになってきた.また,免疫関連分子であるケモカインの発現異常と自閉的行動の相関性もわかってきた.本稿では,ASDが示す高次脳機能障害と免疫系異常の関連性,さらには,免疫関連分子からみた創薬研究へのアプローチについて,最新の知見を紹介する.
種々の神経変性疾患や精神疾患の発症および進展には,脳内炎症の慢性化が関係する.これまで神経細胞の支持細胞と考えられてきたグリア細胞が神経機能を調節するだけでなく,神経炎症のプロセスにも深くかかわることが明らかとなってきた.グリア細胞には,アストログリア,オリゴデンドログリア,ミクログリア,NG2グリアの4種類があり,それぞれが異なる役割を担っている.これらのなかでも,ミクログリアやアストログリアは神経炎症の増悪に伴う神経変性疾患の進行に関与することが知られている.最近,神経炎症制御にかかわる新たなグリア細胞が見出され,注目されている.本稿では,これらの知見について紹介する.
連載
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定量的微生物叢プロファイリングでみる腸内細菌数の変動【富井健太郎】
タンパク質凝集の検出とプリオン形質の制御を可能にする遺伝的手法の開発【黒川理樹】
糖尿病治療は肥満治療にシフトする?ー体重減少効果を併せもつ糖尿病治療薬の躍進【田蒔基行】
タンパク質脱リン酸化酵素の“えこ贔屓”ー2A型ホスファターゼPP2A-B55はセリンよりスレオニンがお好き【登田 隆,湯川格史】
クラウドファンディングで集まる研究費は?【島田祥輔】
カレントトピックス
私の実験動物、やっぱり個性派です!
ニホンウズラを日本へ逆輸入?ー陸生脊椎動物の生体イメージングモデル,ウズラ【佐藤有紀】
クローズアップ実験法
ヒトフローラ化マウスを用いた腸内細菌―宿主免疫の相互作用の解析【中本伸宏,金井隆典】
Update Review
新たな上皮完全性維持機構ー細胞膜結合型セリンプロテアーゼとインヒビター【片岡寛章】
創薬に懸ける~日本発シーズ、咲くや?咲かざるや?
革新的な血液凝固調節バイオ医薬品 トロンボモジュリン製剤【青木喜和】
予言するシミュレーション
予言を生むために:まとめと薬剤ターゲット同定への活用例【市川一寿】
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40にして惑わず!不惑で魅惑のスプライシング研究ー“40 years of mRNA splicing:From Discovery to Therapeutics” in CSHL【片岡直行】
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- 【本書名】実験医学:「病は気から」の謎に迫る Neuroimmunology〜ストレス・痛み・神経疾患と炎症・免疫反応のクロストーク
- 【出版社名】羊土社
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(2021年8月23日)