癌研究はここまで進んだ!癌の発症に関与するシグナル伝達分子の研究内容が,基本から最新のトピックスまでよくわかる!イレッサ(R)やグリベック(R)などの分子標的薬の研究や,CGHアレイ法による染色体解析なども解説.
目次
概 論
シグナル伝達研究から癌を知る−基礎研究の進歩と治療への展望
山本 雅 仙波 憲太郎
1.乳癌—予後を決めるerbB2
2.大腸癌—新たにわかったAPCの機能
3.胃癌—細菌による発癌
4.肺癌—ゲフィチニブの明と暗
5.TGF-βシグナル—諸刃の剣
6.慢性骨髄性白血病,GIST(消化管間質細胞腫)とチロシンキナーゼ阻害剤
7.RET—変異の違いによる多様な病態
8.ウイルス発癌—ウイルスの巧妙な戦略
9.さらなるシーズの発掘と動物モデルによる解析
おわりに
基本編
第1章 erbBファミリーと癌トランスレーショナルリサーチ
山本 雅
1.受容体型チロシンキナーゼは癌の発症の進展に関与している
2.erbBファミリー
1)erbB1/EGF受容体
2)erbB2
3)erbB3
4)erbB4
3.今後の展望
第2章 大腸癌とAPC,Wntシグナル
秋山 徹
1.
APC遺伝子の大腸癌における異常
2.
APC遺伝子産物の構造と機能
3.Wntシグナル伝達経路
4.APCによるWntシグナル伝達経路の抑制
5.APCの細胞質—核移行とβ-カテニンの蓄積
6.大腸癌で発現している変異APC断片の機能
7.APC結合タンパク質Asef
8.APCによるAsefを介した細胞接着と細胞運動の制御
9.APCタンパク質と微小管・キネシンファミリー
第3章 胃癌発症におけるピロリ菌CagAタンパク質の役割
大西 なおみ 畠山 昌則
1.ピロリ菌感染が引き起こす細胞障害
2.
cag PAIと
cagA遺伝子
3.CagAの細胞内生物活性
1)CagAの細胞内侵入とチロシンリン酸化
2)CagAの細胞内標的分子:SHP-2チロシン脱リン酸化酵素
3)CagAのその他の細胞内標的分子
4)CagAと胃MALTリンパ腫
4.CagAの分子多型
5.今後の展開
第4章 消化器癌とTGF-βシグナル
三嶋 弘一 渡部 徹郎 宮園 浩平
1.TGF-βのシグナル伝達機構
2.TGF-β不応性と癌とのかかわり
1)大腸癌とTGF-βII型受容体
2)膵臓癌とSmad4
3)胃癌とRunx3
3.TGF-βシグナルによる癌化の促進
1)スキルス胃癌とTGF-β
2)肝臓癌
4.今後の展望
1)上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition:EMT)
2)TGF-βシグナルの抑制による癌転移の抑制
第5章 白血病/リンパ腫の染色体転座
丸 義朗
1.染色体の基本と転座
2.二本鎖DNAの切断とDNA修復
3.転座で生じる分子生物学的事象の基本
1)遺伝子(タンパク質)発現量の調節障害:14q32転座型腫瘍の例
2)物理的融合遺伝子(タンパク質)の形成と発現:BCR-ABLの例
3)複合転座:masked Ph1〔t(9;12;22)(q34;q21;q11)〕の例
4.血液腫瘍とよく知られた転座
第6章 GDNF/RETシグナル伝達系と腫瘍発生−甲状腺腫瘍を中心に
時々輪 真由美 高橋 雅英
1.RETタンパク質の構造と活性化機序
2.RETの生理的機能
3.MEN 2型における
RET遺伝子変異と病態発現機構
1)MEN2A型変異によるRETの活性化機序
2)MEN2B型変異によるRETの活性化機序
3)FMTCにおける
RET遺伝子変異
4)MEN 2AとHSCRの合併家系におけるRETの活性化機序
4.甲状腺乳頭癌における
RET遺伝子変異
5.GDNF/RETシグナル伝達系
6.変異RETに起因する甲状腺癌に対する治療戦略—チロシンキナーゼ阻害剤による抗腫瘍療法
7.今後の研究の展開
第7章 Hedgehogシグナル経路の腫瘍発生おける役割−基底癌を例に
柳沼 克幸 野田 哲生
1.母斑様基底細胞腫症候群
2.基底細胞癌
3.Hedgehogシグナル経路
4.腫瘍発生モデルマウス
1)Patched1ノックアウトマウス
2)Shh,Smo,Gli1の過剰発現
3)シグナル経路阻害剤の効果
5.今後の展開
第8章 成人T細胞性白血病とHTLV-1
渡邉 俊樹
1.HTLV-1転写制御因子Taxの機能
1)Taxによる転写の制御
2)Taxによるシグナル伝達の制御
3)Taxと細胞周期
4)Taxとアポトーシス
2.Taxの腫瘍化における役割
1)ATL細胞におけるHTLV-1プロウイルスの状態=「ウイルスは死んでいる」
2)腫瘍化における初期過程以後のTaxの関与=「Taxの腫瘍化活性」
まとめ
第9章 EBウイルスの遺伝子産物による癌化のシグナル伝達
高田 賢蔵
1.EBVの潜伏感染維持と潜伏感染膜タンパク質LMP2A
2.EBVによるBリンパ球不死化とEBV遺伝子産物
1)EBNA1
2)EBNA2
3)EBNA3A,EBNA3B,EBNA3C
4)EBNA-LP
5)LMP1
3.EBV関連癌とEBV発現
4.EBVがコードする小RNA分子と発癌
トピックス編
1.p53研究の最新動向
田矢 洋一
1.p53の基本的性質
2.ミトコンドリアで直接アポトーシスを誘導するp53
3.72番目アミノ酸のポリモルフィズムはp73/p63への結合・不活化を左右する
4.72番目アミノ酸のポリモルフィズムと子宮頚癌
5.p53のリン酸化の生理的意義
2.非小細胞肺癌の分子標的治療研究
−EGFR遺伝子異常とGefitinib感受性
藤井 義敬
1.Gefitinib(イレッサ
®)の働き
2.Gefitinibの副作用
3.肺非小細胞癌における
EGFR遺伝子変異の同定
4.変異EGFRの機能とGefitinibに対する感受性
5.将来の研究の方向性
6.Gefitinib投与に際しての患者の選択
おわりに
3.消化管間質細胞腫とチロシンキナーゼ阻害剤
北村 幸彦 廣田 誠一
1.GIST(gastrointestinal stromal tumor, 消化管間質細胞腫)
2.KIT遺伝子と
W/Wvマウス
3.マスト細胞腫瘍とKIT遺伝子の機能獲得性突然変異
4.消化管間質細胞腫とKIT
5.家族性GIST
6.PDGFRαの機能獲得性突然変異
7.メチル酸イマチニブ
8.今後の展望
4.CGHアレイ法による染色体解析
−癌化に関与する遺伝子異常を探す
井上 純 井本 逸勢 稲澤 譲治
1.CGH法とCGHアレイ法
2.CGHアレイ法による微細な遺伝子異常の探索
3.CGHアレイ法による不均衡染色体転座切断点の検出
4.CGHアレイ法による染色体コピー数の多型(LCV)の検出
おわりに
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(2021年8月23日)
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