クローズアップ実験法

2022年1月号 Vol.40 No.1 詳細ページ
無限シームレスクローニング法―長鎖DNAを“正確に”ベクターに組み込む!
真木竜斗,新田陽平,杉江 淳,鈴木崇之
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無限シームレスクローニング法
―長鎖 DNAを“正確に”

ベクターに組み込む!
真木竜斗,新田陽平,杉江 淳,鈴木崇之

何ができるようになった?
プラスミド構築において,挿入する DNA 断片が長くなるほど組み込まれる確率が下がる.この問
題を解決するために,短い断片に分けて,段階的に痕跡を残すことなくベクターに組み込んでいくク
ローニング方法を開発した.

必要な機器・試薬・テクニックは?
クローニング実験を行うための一般的な機器や試薬(恒温槽,ヒートブロック,コンピテントセル
など)に加えて,やや値は張るがシームレスクローニング試薬(NEBuilder や In-Fusion など)が必
要になる.

はじめに

苦労しているという話が漏れ聞こえてくる.ここでは,

分子生物学実験において,目的遺伝子をベクターに

シームレスクローニング試薬を用いて“長い”遺伝子

組み込み,クローニングすることは世界中の多くの実

断片を短い断片に分けて「段階的に」
「確実に」組み込

験室で行われており ,とりわけ長断片 DNA をクロー

む方法を紹介する(図 1).

ニングするニーズはますます高まっている.シームレ

シームレスクローニングでは,一般的に「挿入され

スクローニング法の開発によって相同配列を利用した

る側(ベクター)は制限酵素で切断し,挿入する断片

DNA 組換えが可能になり,目的遺伝子を「つなぎ目な

(インサート)は PCR で作成」という方法をとる .多

しに」
「狙った方向で」プラスミドに挿入することがで

段階で挿入をくり返すとき ,最初の挿入で次に挿入す

きるようになった.効率も格段に上がったため,長断

るための新たな制限酵素サイトを挿入断片端に設計し

片や複数の断片を挿入することが原理的には可能に

ておき ,次の断片を挿入するときにこの制限酵素サイ

なった.にもかかわらず実際の実験室では,10 k b 以

トで切断して断片を挿入する .これをくり返すと ,普

上の長鎖断片を一気にベクターに組み込む場合や ,

通は制限酵素サイトの「痕跡」が残ってしまう.しか

3 つ以上の複数断片を同時に組み込む場合 ,効率が極

し,注意深くプライマーを設計すれば,
「痕跡を残さず」

端に下がり,ほとんどの場合うまくいかず,いまだに

「無限に」このステップをくり返すことができる.これ

Endless seamless cloning method: The method for incorporating the long DNA fragment using seamless cloning and assembly

Ryuto Maki 1)/Yohei Nitta2)/Atsushi Sugie2)/Takashi Suzuki 1):School of Life Science and Technology, Tokyo Institute of
(東京工業大学生命理工学院 1)/ 新潟大学脳研究所 2))
Technology1)/Brain Research Institute, Niigata University2)

実験医学 Vol. 40 No. 1(1 月号)2022

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