クローズアップ実験法

2023年1月号 Vol.41 No.1 詳細ページ
任意のヒト遺伝子に関わる生命科学実験の検索・提案ウェブツール「LEXAS」
伊藤 慶,鶴岡慶雅,北川大樹
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任意のヒト遺伝子に関わる
生命科学実験の検索・提案
ウェブツール「LEXAS」
伊藤 慶,鶴岡慶雅,北川大樹

何ができるようになった?
大量の論文やデータベースに機械学習を組合わせて開発したウェブツール LEXAS(Life science
EXperiment seArch and Suggestion)では,ヒトの任意の遺伝子に関する生命科学実験を高速検
索し,また次に実験すべき関連遺伝子の提案を得ることができる.

必要な機器・試薬・テクニックは?
インターネットに接続したコンピュータやスマートフォンなどから,非営利の目的で自由に利用で
きる.遺伝子名の入力と手法の選択のみの簡単な操作を実現している.

はじめに

表 示 する . 既 存 の関 連 遺 伝 子 の予 測 ツー ルである

生命科学の研究者は日々の実験計画の中で論文や

STRING 3)や FunCoup 4)よりも高性能である.LEXAS

データベースを確認するが,膨大な情報のすべてを把

の検索・提案という 2 つのシステムを用いることで,埋

握することは難しい.そこでわれわれは,こうした大

もれていたかもしれない重要な情報を最大限活用する

量の情報を有効に活用するツールとして,生命科学実

ことができる.

験の検索・提案システム LEXAS を開発した

1)2)

.検索

システムでは,興味のあるヒトの遺伝子名と用いられ
た実験手法を入力すると,公開された論文に記載され
た約 2,500 万件の実験の中から,条件に合致するものが

原理
生命科学分野の研究では,機能が関連する(複数の)

即座に一覧表示される.所要時間は平均 0.2 秒であり,

遺伝子に着目して実験を行い,特定の生命現象を解き

論文を 1 報読むのに最低 10 分はかかることを考えれば,

明かす戦略をとることが多い.実験で解析する遺伝子

圧倒的な速さであるといえる .また提案システムは ,

を決定するために,研究者は大量の論文やデータベー

論文中の実験の前後関係と,遺伝子の既知の機能や組

スを考慮して関連遺伝子を推定する.これまでに,論

織ごとの発現量,転写産物の相互作用などの情報をも

文からの情報を効率的に把握するための複数のツール

とに,次の実験で検討するべき関連遺伝子を予測して

が開発されている.例えば,FACTA+ 5)はある遺伝子

LEXAS, a web tool for searching and proposing life science experiments on genes
Kei K Ito 1)/Yoshimasa Tsuruoka 2)/Daiju Kitagawa 1):Graduate School of Pharmaceutical Sciences, The University of
(東京大学大学院薬学系研究
Tokyo 1)/Graduate School of Information Science and Technology, The University of Tokyo 2)
科 1)/ 東京大学大学院情報理工学系研究科 2))
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実験医学 Vol. 41 No. 1(1 月号)2023
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