節には,名詞節,形容詞節,副詞節がある.名詞節は名詞相当語として,他動詞の目的語などに用いられる.形容詞節は関係詞を使って作られ,後ろから名詞を修飾する.副詞節は複文の従属節として用いられる.連載第1回目に述べたイントロを作る(例文2)のも副詞節だ.副詞節はよく使われるものだが作り方はそれほど難しくないので,ここでは形容詞節を作る関係詞および名詞節となるthat節の使い方について取り上げる.
関係詞には,関係代名詞と関係副詞とがある.これらは,名詞を後ろから修飾する形容詞節を作るために使われ,最も多いのが関係代名詞主格の用例である.
よく使われる関係代名詞にはwhichとthatがあるが,論文ではwhichは前にカンマが来る非制限用法(例文41),thatはカンマのない制限用法(例文42)に用いるという明確な使い分けがあるので注意しよう.
The vitamin D receptor, which is a member of the nuclear hormone receptor superfamily, is believed to mediate this activity.
(ビタミンD受容体 ?? それは核内ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーである ?? は,この活性を仲介すると信じられている)
The mechanisms that cause these translocations are not fully understood.
(これらの転位置を引き起こす機構は完全には理解されていない)
上述の主格の用法以外に,前置詞+whichもしばしば用いられる.難しく感じるかもしれないが,これを使いこなせると書ける文章の幅が広がるので,是非,マスターしよう.論文でよく使われるのは,model in which(例文43)やmechanisms by which(例文44)などである.
These data support a model in which macrophage phagocytosis is coordinately regulated by both phospholipases.
(これらのデータは,マクロファージ貪食が両方のホスホリパーゼによって協調的に調節されるモデルを支持する)
Investigations of leprosy provide new insights into the mechanisms by which the innate immune system contributes to host defense against infection.
(らい病の研究は,自然免疫系が感染に対する宿主防御に寄与する機構に対する新しい洞察を提供する)
一方,of whichの使い方は,in whichやby whichとは違うので注意しよう.both of which, all of which(例文45), one of whichなどがよく使われるが,それぞれの前にカンマが入ることに気を付けよう.
Treatment with TNF decreased the expression of cyclin D1, c-myc, Bcl-2, Bcl-xL, IAP1, IAP2, COX-2, and MMP-9, all of which are known to be regulated by NF-κB.
(TNFによる処理は,サイクリンD1,c-myc,Bcl-2,Bcl-xL,IAP1,IAP2,COX-2,MMP-9 ?? それらのすべてがNF-κBによって制御されていることが知られている ?? の発現を低下させた)
関係代名詞以外に,関係副詞というものがある.whereやwherebyなどが使われるが,頻度は前置詞+whichに比べるとかなり低い.whereはin whichに置き換え,wherebyはby whichに置き換えて考えればいいであろう.cells where, conditions where, model where(例文46), mechanism whereby(例文47), model wherebyなどがよく用いられる.
These data support a model where macrophage phagocytosis is coordinately regulated by both phospholipases.
(これらのデータは,マクロファージ貪食が両方のホスホリパーゼによって協調的に調節されるモデルを支持する)
Investigations of leprosy provide new insights into the mechanisms whereby the innate immune system contributes to host defense against infection.
(らい病の研究は,自然免疫系が感染に対する宿主防御に寄与する機構に対する新しい洞察を提供する)
<ここがポイント>
プロフィール