「超解像蛍光顕微鏡の開発」に関してノーベル化学賞が授与されたのは記憶に新しいが(2014年),電子顕微鏡(電顕)の世界では何十年も前から超解像蛍光顕微鏡(20 nm程度)を圧倒的に上回る1 nm以下の分解能での観察が可能であった.にもかかわらず,生体観察の用途では蛍光法に比べて大きく遅れをとっている.その理由の1つは,蛍光顕微鏡では蛍光指示薬により容易に標的分子を可視化でき,その種類が多岐にわたるのに対し,電顕ではそういった有用な試薬・手法がきわめて限られていることに起因する.特に,脂質,糖鎖,核酸といったタンパク質以外の生体分子については適した抗体を作成するのも難しく,電顕による標的分子の検出・解析といった分野はかなり立ち遅れていた.これに対して最近,Ngo,Tsienらのグループにより,小分子のみを用いて非タンパク質性生体分子を選択的にマーキングし,電顕観察する画期的な技術が報告された(Ngo JT, et al:Nat Chem Biol, 12:459–465, 2016)ので紹介したい.
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