DNA複製ストレスが引き起こすゲノム不安定化の影響は細胞レベルでは比較的よく研究されているが,胎仔発生時における影響はそれほど研究されていない.長年,コーネル大学Schimentiらのグループは複製ヘリカーゼMCM2–7に変異をもつマウスの表現型を解析してきた.彼らが同定したMCM4Chaos3変異(MCM4C3)をもつマウスはMCM2–7の発現低下が起き,休眠複製開始点(通常のDNA複製では使われない複製開始点)の数が低下,複製ストレスに脆弱になり微小核形成を伴うゲノム不安定化を誘発することで高頻度発がんに至る1)2).同グループは,他のMCM遺伝子の片アリルが欠損したマウスも作成しており,MCM4C3と他MCM遺伝子片アリル欠損の組合せは,胎仔のすべてあるいは一部が致死になることを報告している3).今回紹介する論文では,これらの胎仔では,DNA複製ストレスによるゲノム不安定化が微小核(細胞核とは別の小型の核)形成を促進し,その結果炎症反応が起きて,特にメス胎仔マウスの致死率が上昇していることを報告している4).
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