News & Hot Paper Digest
UJAだより
最終回

UJA第二章―時空を越えつながる未来へ

UJA 足立剛也(国際HFSP推進機構/CNRS・ストラスブール大学),赤木紀之(福岡工業大学),佐々木敦朗(シンシナティ大学/慶應義塾大学)
*2020年8月現在

2019年1月号より隔月ではじまった本コーナー「UJAだより」は,著者の一人である赤木紀之(福岡工業大学)が中心となり編集作業を進めていたが,いよいよ最終回を迎えた.振り返ると,どの回も臨場感と熱い思いが溢れる寄稿.これも執筆いただいた皆様,ご支援ご協力をいただいた多くの方々,そして本企画を楽しみに読んでくださった読者の皆様の御蔭である.心から感謝申し上げる.UJAだよりの締めくくりとして,これまでのUJA活動を簡単にご紹介しわれわれが未来へめざすものを紹介したい.

図6

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UJAは,2012年に産声を上げてから8年あまり,「研究者とサポーターの皆様がキャリアとサイエンスを向上し,より豊かに暮らす未来」を合言葉に,世界各地から現役研究者有志が集まり運営されている.発足当時は,ビデオ会議通信システムも,SNSを使ったコミュニケーションもなく,e-mailで世話人が連絡をとり合い,運営をしていた.「もって2年」「離れ離れでの運営は困難をきわめる」などの声もあった.運営の難しさについては本当にそのとおりだったと思う.困難を伴う組織体制のなか,われわれが揺るぎなく,より明るい未来を拓くことを信じ進んで来られたのは,活動を通じて知り合った仲間との魂を揺さぶるような日本の未来への熱い思い,そしてさまざまなイベントでの温かい応援の声とご支援であった.あらためて感謝申し上げるしだいである.

UJA運営の根底に流れるのは,年齢も職位も越えたフラットな関係,やってみようの精神,そしてどんなことも“楽しく”やっていくことである.海外の研究者コミュニティーの幹事が集まりUJAを 立ち上げた際,著者の一人である佐々木はUJA会長でなくUJA“快調”であればという条件で会長の任を引き受け,それ以来,内部では佐々木は「UJA快調」と呼ばれている.読者の方には,カタイイメージをもたれているかもしれないが,このように楽しくウィットに富んだ組織であり,皆が場所を越えてつながり運営してきた原動力の一つである.

UJA発足後,さまざまな活動を立ち上げてきた(図6).2013年にはじまった分子生物学会での“留学のすゝめ!”イベントは,今は定番となり,たくさんの方と出会い,現在留学中もしくは留学から帰国したばかりの研究者の生の声を伝える場となった.留学についての大規模アンケートでは,留学体験と意見を集約し,500名を超える方からの貴重な資料として,政府の方に留学の現状とニーズを届けた.現在,2度目のアンケートを実施し,研究者の方々への参考資料としてだけではなく,国の政策へお役立ていただくべく取り組んでいる.2015年には実験医学とのコラボにより,留学体験記リレーを行い,山中伸弥先生をはじめ100名を超える方から,留学体験を綴っていただいた.当初は3回の連載企画であったが,留学を3回で語るのは不可能とし,全8回の連載となった.実験医学編集部の心意気とご支援に感謝している.執筆された方の“体験・学びを伝えたい”思いが,どの寄稿からもにじみ出てたいへんな好評をいただいた.この留学体験記がもととなり,留学のすべてのステップをまとめた『研究留学のすゝめ!』が2016年に刊行された.この本を読んで留学を決意したという声や,役に立ったとの声が寄せられ,すべての労が吹き飛んだ記憶がある.

一方,UJAの活動を進めるなか,非認可団体としての壁がでてきた.一年半にわたる準備期間を経て,2016年,UJAが日本で一般社団法人,米国でNPO法人となった.法人化では,たくさんの困難,そして学びがあった.これを突破し法人化を成しえたのは,北原秀治(東京女子医科大学),早野元詞(慶應義塾大学),本間耕平(慶應義塾大学)のリーダーシップと粘りによるものである.これにより,UJAは公認団体として,活動のレベルを大きく引き上げ,本UJAだよりでご紹介してきたさまざまな活動が新たに生まれた.

2020年秋,任期満了にともない初代UJA“快調”である佐々木敦朗(シンシナティ大学・慶應義塾大学)から,足立剛也(国際HFSP推進機構/CNRS・ストラスブール大学)が第二代会長としてその意志を引き継ぐことになった.UJA組織の組閣も見直され,現在7つのワーキンググループから構成されている.UJAのアウトリーチ活動は,継続的に世界各国からの閲覧があり,これから海外をめざす研究者への支援情報や,現在海外で活躍するPIなどからポジション募集などの情報を発信している.一連のCOVID-19問題に関連して,研究者の声を集めた「COVID-19 研究者がおかれている状況とは?」は大きな注目を集め,今後,新たな留学像として何らかの形でとりまとめたいと考えている.ぜひ期待していただきたい.

研究者と家族そして研究者をサポートする方々が,場所と時間を越えてつながる世界.100年前はもとより30年,10年前にも想像すらできなかった時代が,今到来している.COVID-19での大きな制約のなか,世界で一丸となり解決への研究と政策が猛烈な早さで動いている.さまざまな困難から学び発展してきた人類の強さは,一丸となることで解き放たれる.一人ひとりの豊かな未来,時も場所も越え,世界でつながり生まれる明るい明日へと,UJAは一丸となりこれからも歩んでいく.この年齢も職位もこえた活動に興味のあるあらゆる立場の方のご参加,また新たな提案を歓迎する.最後に今一度,本連載そしてUJAを応援いただき,心から感謝を申し上げる.われわれもまた読者の皆様の輝かしい未来を祈念し,お会いできる日を楽しみにしている.

2020年11月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2020年11月号 Vol.38 No.18
腸内細菌叢生態学
数理科学にもとづく腸内デザインで層別化医療・ヘルスケアに挑む

福田真嗣/企画
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