がんは近年40年間,日本において死亡原因の第一位である.一部の細胞が暴徒化することで発生すると考えられている がんの重要なメカニズムの一つとして,遺伝子変異があげられる.しかし,遺伝子変異だけでは説明のつかないがんも数多く存在し,「がん戦争」に勝ち抜くためには,敵の手中をより的確に,かつ網羅的に理解することが求められている.
2019年にHaigisらは,遺伝子変異や発がんシグナルの増強に加え,個々の細胞における後天的な変化が協調しあうことでがんが発生する可能性を示した(Haigis KM, et al:Science, 363:1150-1151, 2019).しかし,これもまたがんが発生するうえでの戦術の一つに過ぎず,これまでにない新たながん発生メカニズムを解き明かすことが,急務の課題であった.
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DOI:10.18958/6977-00004-0000045-00