「百聞は一見に如かず」ということわざのとおり,生体内で働く分子の構造を観ることは,生命現象の分子機序を理解する決定的な情報を与えてくれる.3年前の2020年12月,タンパク質立体構造予測国際コンテスト(CASP14)においてAlphaFold(AF)(Jumper J, et al:Nature, 596:583-589, 2021)が圧倒的な予測精度を叩き出し,それからおよそ半年後の2021年7月にAFの予測用のソースコードと学習済みのパラメーターファイルが公開されたことで,生命科学の研究の進め方は一変した.AF登場前は,タンパク質のアミノ酸配列から何か情報を得たいと思えば,とりあえずBLASTで検索して,配列相同性や配列アライメントから注目するタンパク質の重要なアミノ酸に当たりをつけ,働きを推測したものだが,AF登場後は,同じくアミノ酸配列を入力することには変わりはないが,タンパク質分子の立体構造まで予測できるようになった.アミノ酸の文字列として見るだけでは具体的な働きがよくわからなかったアミノ酸残基も,空間的に配置された構造として観ることで,何をしているアミノ酸残基か一目瞭然となった.
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DOI:10.18958/7407-00004-0001154-00