本コーナーでは，実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します．研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在，若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について，現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします．（編集部）

第159回　新たな世界を共に拓こう！～生物物理若手の会への誘い

「実験医学2023年9月号掲載」

自らの手で道を切り開いたものが勝利を手にする．これは研究に限らず常日頃私が思っていることである．競争や移り変わりの激しい世の中に生きる皆さんが「新しいことを恐れぬ勇気」を磨けば，目の前に今よりさらに高く，広い世界が拓けると確信している．

自己紹介が遅れてしまったが，私は名古屋工業大学に所属する博士課程学生である．私のバックグラウンドについて知りたい方は，生物物理誌の若手の会だよりをご覧いただきたい^1）．

2023年現在，私は生物物理若手の会という学生が主体で運営する研究会の会長を務めている．2022年夏には，弊会が最も力を注いでいる“生物物理若手の会夏の学校”という研究会を校長として主催した^2）．これらの経験を通して感じた一番の驚きは，現在の学生のポテンシャルの高さである．

夏の学校の運営には，校長（私）・教頭・会計・予稿集・講演・広報・会場・Twitter・HP・Slackというさまざまな役職があり，合計で22名の現役学生が運営に参加した．ただし，私を含めた全員が，大規模な研究会の運営経験が一切なかったため，主催者として研究会を無事に開催しなければならないという大きな重圧を感じていた．ところが，運営の学生さんに対し，助成金の獲得に向けた戦略やホームページの開設，予稿集の印刷製本，コロナ禍における開催方法などについて「こうしたいのだけど，何かいい方法はないか？」と尋ねると，そのすべてに答えが返ってきたのである．皆の能力の高さに驚かされた瞬間であった．

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そんな彼らの頑張りによって，コロナ禍明けにもかかわらず，生物物理若手の会が始まって以来62年で最大となる100人を超える現地参加者を集めることに成功し，参加者の参加後満足度は95％以上を達成した^3）4）．この研究会の成功を経験することによって，運営に携わった学生さんは自らに自信を付け，就職活動においても堂々とプレゼンをすることができたようである．

ここまで来て感じたことは，今の日本の学生さんが自身の能力を過小評価せず，常に新しいことに挑戦することを心掛けるだけで，新たな世界が拓けるのではないか，ということである．実際，私は他人がやらないような難しい課題や高い壁に挑戦してきたことで，これまでの研究や夏の学校を成功に導くことができたと自負している．

日本がこれからも科学技術立国として世界と戦っていくためには，この文章を読んでいる学生・若手研究者が必要である．皆さんの潜在能力をもってすれば，今後の日本はこれまで以上に世界において存在感を示すことができるだろう．

最後に前校長・現会長としての職務を果たしておこう．生物物理若手の会は，生物物理学を専攻している，あるいは興味をもっている全国の大学生・大学院生・若手研究者が集う研究会であり，1960年から脈々と続く長い歴史をもっている．現在第一線で活躍されている著名な先生方を多数輩出しており，本若手の会では今後も日々切磋琢磨し，日本を牽引する若手研究者を生み出していくだろう．

この記事で弊会に少しでも興味をもったなら，手始めに「新しいことを恐れぬ勇気」をもって，我々にコンタクトしてきてくれ^5）．君の新たな挑戦と吉報を待っている．