[Opinion―研究の現場から]

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本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第160回 知らなきゃ損!文章生成AIの活用術と注意点

「実験医学2023年10月号掲載」

この1,2年の間に,ChatGPTをはじめとする文章生成AIが急速に普及している.文章生成AIは,Web上の膨大な情報を学習し,利用者の指示に対してまるで人間が作成したかのような文章を出力できる人工知能である.これを上手に活用することで,研究者が抱える悩みを解決できるかもしれない.本稿では,文章生成AIが研究に役立つ3つの場面と注意点を紹介したい.

英文作成および推敲

文章生成AIの活用先としてまず思いつくのは,英語の原稿やメール文面の作成であろう.文章生成AIは,文語体および口語体の両方に対応でき,口頭発表の原稿も生成することが可能だ.原稿の翻訳に加え体裁を整えることも得意で,基本的な校正や要約,適切な表現への修正ができる.実際に使ってみると,既存の翻訳ツールよりも状況を的確に踏まえた自然な英文が生成され,われわれも驚いた.これは非英語圏の研究者にとって非常に役立つ.

プログラミングコードの作成

多くの実験系科学者にとって,データ解析や作図用のプログラミングコードを書くことは骨が折れる作業だ.文章生成AIを利用することで,コメントアウトを入れながら目的のコードを自動生成できる.実際に筆者はRやPythonの解析および作図コードを短時間で読みやすく作ることができた.また,画像解析ツールImageJのマクロなど,特定のツール上で使用するコードの作成にも有用である.

アイデアの創出

例えば,文章生成AIに講義名を入れることで講義の計画を作ることができる.また,自身が開発した研究手法などに略称をつけたい場合,その手法の特徴をベースに魅力的な略称の案を出力させることも可能だ.さらに,学振の申請書にある「目指す研究者像に必要な資質」などを,自身がもつ強みをベースに提案してもらうこともできる.これらの例のように,文章生成AIにキーワードを入力すれば,考えもしなかったような多角的な着想を得ることができる.筆者は思考が行き詰まったときに,文章生成AIにアイデアを提案してもらい,新たな視点を得ている.一発で解決策が得られなくても,新たな視点から研究を考えるうえで役立っている.

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文章生成AIの注意点

前述の例のように,文章生成AIは非常に強力なツールだが,いくつかの注意点がある.まず,目的の出力を得るには,「〇〇分野の研究者に向けた文章」などの明確な状況の指示が重要である.また,文章生成AIは学習データを取得した時点での情報(現行のChat GPTは2021年9月時点)をもとに結果を出力するため,それ以降の事柄に関しては正しく回答できない.それに加えて,文章生成AIは学習データをもとに架空の論文や動作しないプログラムコードを出力することも多い.そのため利用者には生成された内容が適切か判断する能力が求められる.

さらに,現行の文章生成AIは入力した情報の取り扱いが明確ではないため,セキュリティの観点から,未発表の研究データ等をそのまま使用することは控えるべきである.また,Science誌など,文章生成AIが生成した文章を投稿論文に利用することを禁止している場合もあるので気をつけたい1)

本稿では研究活動における文章生成AIの用途を紹介したが,画像や動画の生成系AIも数多く存在し,今後もますます用途が拡大すると期待される.生成された情報と正しく向き合い,上手に活用することで,研究活動を円滑に進めることができるだろう.

文献・URL

  1. Science:ChatGPT is fun, but not an author.

落合佳樹,小金丸利隆(生化学若い研究者の会 キュベット委員会)

※実験医学2023年10月号より転載

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本記事の掲載号

実験医学  2023年10月号 Vol.41 No.16
AlphaFoldの可能性と挑戦
すぐ始められる構造・機能予測から、複合体予測やタンパク質デザインへの応用まで

富井健太郎/企画
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