実験医学増刊 Vol.29 No.10

慢性炎症ー多様な疾患の基盤病態

生活習慣病,がん,免疫・神経疾患に至る分子メカニズムと診断・治療への応用

  • 小川佳宏,真鍋一郎,大島正伸,竹田 潔/編
  • 2011年06月06日発行
  • B5判
  • 222ページ
  • ISBN 978-4-7581-0315-2
  • 5,940(本体5,400円+税)
  • 在庫:なし
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慢性炎症は,癌や生活習慣病,免疫・神経疾患など多くの疾患の病態に関与することが明らかになってきています.本書では,これらの疾患との関連を解明する基礎研究から医療への応用まで,最新の知見を紹介します.

目次

概論 座談会:「慢性炎症」から生命の根幹を解き明かす──異分野融合が鍵となる疾患解明と先進医療の新たなパラダイム【小川佳宏/真鍋一郎/大島正伸/竹田 潔】

Overview 慢性炎症研究の歴史【永井良三】

  • 体液病理学と炎症論
  • パラケルススの炎症論と局所病理学
  • マクロ病理学時代の慢性炎症
  • 病気の機能論と実体論
  • 炎症と瀉血
  • ロキタンスキーのブラステーマ(胚種質)説とウィルヒョウの細胞病理学
  • 免疫・炎症における食細胞と液性因子
  • 遅延過敏反応と慢性炎症
  • 心血管病と慢性炎症
  • これからの慢性炎症研究

第1章 炎症の収束機構の破綻と慢性化機構

1.Foxp3+制御性T細胞による炎症制御【濱口真英/坂口志文】

  • 制御性T細胞の特徴
  • Foxp3+CD4+制御性T細胞による免疫抑制機能
  • ヒトFOXP3+CD4+制御性T細胞
  • ヒトの慢性炎症性疾患と制御性T細胞

2.炎症の収束における脂質メディエーター代謝系のダイナミックな変化とその機能的役割【有田 誠】

  • 脂質メディエーターと炎症の制御
  • 炎症の発生と収束について
  • 炎症の収束に関わる脂肪酸代謝系のメタボローム解析

3.組織リモデリングにおけるEMTの役割【三平 元/渡部徹郎/宮園浩平】

  • 慢性炎症における組織リモデリング・線維化
  • 上皮間葉転換(EMT)
  • 血管内皮間葉転換(EndMT)
  • EMTとEndMTの制御を用いた治療法の開発

4.マクロファージ機能のエピジェネティクス制御【竹内 理】

  • 遺伝子発現と正に相関するヒストン修飾
  • M2マクロファージ分化とJmjd3によるH3K27脱メチル化

5.自然炎症の概念【三宅健介】

  • 病原体センサーと内因性リガンド
  • TLRにおける自己と病原体との識別機構
  • 細胞表面TLRと内因性リガンドとの相互作用
  • 核酸特異的TLRと自己由来核酸との相互作用
  • TLRの局在と活性
  • 自然炎症と慢性炎症疾患

第2章 慢性炎症と生活習慣病

1.肥満と慢性炎症【菅波孝祥/小川佳宏】

  • 脂肪組織リモデリング
  • 脂肪組織へのマクロファージ浸潤
  • 脂肪細胞とマクロファージによる脂肪組織炎症のパラクリン調節系
  • 脂肪組織炎症と異所性脂肪蓄積
  • 脂肪組織マクロファージの質的変化
  • 自然炎症としての脂肪組織炎症

2.2型糖尿病【植木浩二郎/門脇 孝】

  • 肥満脂肪組織における慢性炎症
  • アディポカインによるインスリン作用の阻害
  • 急性炎症経路によるインスリン感受性の増強
  • 慢性炎症とインスリン分泌反応

3.糖尿病性腎症の成因としての慢性炎症【廣田大昌/四方賢一/槇野博史】

  • 血管障害との関連
  • マクロファージ浸潤とそのメカニズム
  • 糖尿病性腎症の成因
  • 心腎連関
  • 治療に向けて
  • インクレチンとの関連

4.心疾患と慢性炎症【赤澤 宏/小室一成】

  • 心不全と慢性炎症
  • 心房細動と慢性炎症

5.COPDと肺線維症における慢性炎症【小賀 徹】

  • COPD
  • 肺線維症

6.心血管代謝疾患に共通する慢性炎症プロセス【真鍋一郎】

  • 動脈硬化における慢性炎症プロセス
  • 肥満は内臓脂肪における慢性炎症プロセスを惹起する
  • 心不全と慢性炎症
  • 長期にわたる炎症メカニズムの活性化と臓器機能異常
  • 慢性炎症における実質細胞-間質細胞相互作用
  • 生活習慣病の背景にある臓器間連関と炎症の波及

7.血管新生関連因子による慢性炎症制御【門松 毅/浦上将太/尾池雄一】

  • 肥満の脂肪組織と血管・リンパ管
  • 内臓脂肪組織内炎症とAngptl2
  • 飽和脂肪酸による炎症とAngptl4

第3章 慢性炎症とがん

1.炎症によりもたらされる遺伝子異常と発がん【清水孝洋/丸澤宏之/千葉 勉】

  • 慢性炎症による遺伝子異常の生成機構
  • AIDとは
  • AIDの発がんへの関与

2.COX-2/PGE2経路と発がん【大島正伸】

  • アラキドン酸カスケードと発がん
  • COX-2/PGE2経路と腸管腫瘍
  • COX-2/PGE2経路と胃腫瘍

3.NF-κB/STAT3と発がん【前田 愼】

  • NF-κB活性化経路と発がん
  • STAT3と発がん

4.発がん過程における腫瘍壊死因子の逆説的役割【向田直史】

  • TNF-αのシグナル伝達機構と生物活性
  • TNF-αとがん化関連分子との関連
  • 発がん・転移モデルでのTNF-αの役割

5.炎症に起因する悪性化と転移予防【武藤 誠】

  • 創傷治癒の炎症相とがんの悪性化
  • CCR1+Gr-1-未分化骨髄球と転移
  • 大腸がんのリンパ節転移とケモカイン受容体CXCR3
  • Notchシグナル伝達と浸潤・転移の連鎖

第4章 慢性炎症と免疫疾患

1.関節リウマチの原因と病態【山本一彦】

  • 関節リウマチの病態
  • RA罹患患者の状況
  • 疫学,遺伝要因
  • 環境因子と遺伝要因との相互作用
  • 滑膜病変とそれに関わる細胞
  • サイトカイン
  • RAに見られる自己抗体
  • RAの病態形成への仮説

2.慢性アレルギーと好塩基球【小畑一茂/石川亮介/烏山 一】

  • 液性免疫のメモリー反応における好塩基球の役割
  • SLEのモデルマウスにおける好塩基球の役割
  • Th2細胞分化誘導における好塩基球の役割
  • 新しいタイプの慢性アレルギー性炎症,IgE-CAI

3.皮膚バリア機構とアトピー性皮膚炎【久保亮治/天谷雅行】

  • フィラグリン変異の発見
  • 皮膚バリア構造
  • Netherton症候群における角質バリア異常とアトピー性皮膚炎様症状
  • フィラグリン変異とアトピー性皮膚炎
  • 表皮TJバリアとアトピー性皮膚炎
  • 表皮TJバリアとランゲルハンス細胞

4.自然免疫系による炎症性腸疾患制御の分子メカニズム【香山尚子/竹田 潔】

  • IBD感受性遺伝子
  • 腸管上皮細胞における炎症応答制御機構
  • 腸管内マクロファージによる腸管免疫制御機構
  • 腸管におけるT細胞応答の制御機構

第5章 慢性炎症と神経疾患

1.アルツハイマー病における慢性炎症の役割と創薬【水島 徹/星野竜也】

  • ADと慢性炎症
  • COXおよびPGE2のADに対する効果と創薬
  • 熱ショックタンパク質(HSP)70のADに対する効果と創薬

2.プリオン感染のリスクファクターとしての慢性炎症【八谷如美/金子清俊】

  • プリオンタンパク質
  • プリオン病
  • 経口からのプリオン感染と免疫系の反応
  • 慢性炎症とプリオン沈着

3.多発性硬化症【三宅幸子/山村 隆】

  • MSの病因
  • MSの臨床像とその背景にある病態
  • B細胞と抗体の関与
  • 治療の現状

第6章 慢性炎症を標的とした先進的診断法・治療法の開発

1.脳梗塞と慢性炎症―Now and Then【黒田 敏/宝金清博】

  • 脳梗塞と慢性炎症-疫学的な検討から
  • 動脈硬化病変における炎症の役割
  • 脳梗塞発症における感染症の役割
  • 自己免疫疾患・血管炎と脳梗塞

2.慢性肝疾患に対する自己骨髄細胞投与療法の開発と今後の課題【寺井崇二/坂井田 功】

  • 肝臓病の進行
  • 肝臓においての慢性炎症とリモデリング
  • 骨髄細胞投与による肝線維化の改善

3.炎症細胞が作り出すニッチと筋肉再生【湯浅慎介/福田恵一】

  • G-CSF受容体のマウス胎仔における発現
  • G-CSFは筋芽細胞の増殖因子である
  • G-CSF受容体は成体骨格筋再生時の筋芽細胞に発現している
  • G-CSFは骨格筋傷害後の再生を強く促す
  • 炎症細胞が作り出すニッチと筋肉再生

4.動脈硬化における慢性炎症と分子イメージング【福田大受/相川眞範】

  • 血管の炎症と動脈硬化
  • 分子イメージングとは

5.がんのイメージング【今村健志/疋田温彦/羽生亜紀】

  • in vivo蛍光イメージングの侵襲性
  • in vivo蛍光イメージングの感度と選択性・特異性
  • in vivo蛍光イメージングの空間分解能
  • in vivo蛍光イメージングの簡便性・安全性
  • in vivo蛍光イメージングを用いた多元的解析と機能解析

特別企画 座談会:「慢性炎症」から生命の根幹を解き明かす

本コンテンツでは増刊号の編者4名に,今なぜ「慢性炎症」が生活習慣病,がん,免疫をはじめとした多分野からの注目を集めているのか,疾患への関与から医療応用の可能性までをふまえて議論していただいております.

【参加者(敬称略)】小川佳宏(東京医科歯科大学難治疾患研究所),真鍋一郎(東京大学大学院医学系研究科),大島正伸(金沢大学がん進展制御研究所),竹田 潔(大阪大学大学院医学系研究科)

  • [digest] 「慢性炎症」から生命の根幹を解き明かす
  • 3分34秒 2011年5月31日公開
  • DIGEST 「慢性炎症」から生命の根幹を解き明かす

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書評・感想
  • 現状や課題がまとめられていてよかった。(大学研究職員)
  • 慢性炎症の発症機構が多岐にわたるのみならず、各疾患領域での研究の進歩が早いため、体系的に理解するのが非常に困難と思っていましたが、本書によって関連情報の理解ができるようになりました。(企業研究職)

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  • 【本書名】実験医学増刊:慢性炎症ー多様な疾患の基盤病態〜生活習慣病,がん,免疫・神経疾患に至る分子メカニズムと診断・治療への応用
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